ジョージ・マーティン著『ザ・ビートルズ・サウンドを創った男』復刊

『「5人目のビートル」が唯一残した本』がうたい文句の書籍『ザ・ビートルズ・サウンドを創った男:耳こそはすべて』が2016年12月下旬に復刊されました。

原著は1979年に発売されたものです。日本語版は絶版と復刊を繰り返して来ました。今年ジョージ・マーティンが亡くなったということで再度新装丁で復刊されました。巻末には生誕から死去までの年表が追記されています。
1992年版
2002年版
 原題は「All You Need Is Ears」ですので邦題から想像されるようなビートルズべったりの内容ではありません。ジョージ・マーティンの自叙伝&エッセイ集といった趣です。もちろんそこかしこにビートルズの名前や曲名が出てきますが、ビートルズとのやり取りが本格的に登場しだすのは全体の半分くらい読み進めようという頃です。それもデビュー前後と、アルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」以外についてはあまり詳しく書いていません。ビートルズが解散してから10年も経たない頃に執筆されたので記憶の鮮明さには期待できるのですが、当時ビートルズのメンバーは全員存命で現役ミュージシャンだったのであまり暴露じみた内容にはできなかった事情もあるのかもしれません。
読んでみると後世に伝わっているビートルズ関連のジョージ・マーティンのエピソードはほとんどがこの本を出典としていることに気づきます。というわけで詳しい方にとって新事実は無いかもしれませんが、僕自身はジョージ・マーティンとブライアン・エプスタインの親交が厚かったことをこの本で初めて知りました。
 ビートルズ情報を求めて読むには物足りない本書ですが、それ以外の内容が素晴らしいです。様々な知識や技術を理路整然に赴くままに語っています。クラシック音楽論、アレンジ理論、プロデューサー論、ミュージシャン評、レコーディング機材、レコーディング技術、音楽制作業界事情、契約の話など多岐にわたり、どれもリアリティのある興味深い内容です。
難しい話もビートルズのプロデューサーが語っていると想像できればすんなり頭に入ってきます。
1979年時点の情報ですので今となっては古いのですが、当時あっての今ですので学ぶことは多いです。プロデューサーという仕事に興味がある方には必読の本です。

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