グリン・ジョンズ アルバム「LET IT BE」を「ゴミの寄せ集め」と評す

ビートルズによる1969年1月の通称「ゲット・バック・セッション」で現場監督を務め、そこから未発表のアルバム「Get Back」を作り上げたグリン・ジョンズは2014年11月に回顧録「Sound Man」を上梓しました(追記:日本語版「サウンド・マン 大物プロデューサーが明かしたロック名盤の誕生秘話 」が2016年2月22日発売)。これがきっかけになっているのでしょう、先月ニューヨーク・タイムズの取材に応じました。
ポール・マッカートニー、グリン・ジョンズ、ミック・ジャガー
 What He Saw From the Control Room Glyn Johns on Recording Rock Greats
 

この中で、 Get Backについては以下のようなことを語っています。
  • ジョージ・マーティンの下でエンジニアとして働くのだと思っていたら彼はビートルズに嫌気が差してプロジェクトを放り出していたので自分がプロデューサー的な役割を担うことになった。
  • 自分は既に業界では一定の成功を収めていたがビートルズに会って舞い上がってしまった。
  • 生身のビートルズは至ってふつうの人だった。大衆はそれを知らないので彼らの素晴らしい演奏をありのままに記録したいと考えた。
  • 自分の立場やビートルズの扱いに困惑していたところ、ジョージ・マーティンは自分をランチに連れ出して励ましてくれた 。
  • ジョージ・マーティンは自己の能力に自信を持っていたので自分のように困惑することはなかった。
  • ジョン・レノンがセッションの成果物をフィル・スペクターに渡したことにはがっかりした。それ以上にがっかりしたのはフィル・スペクターが行ったことだ。あれはビートルズとは何の関係もない。アルバム「Let It Be」はゴミの寄せ集めに過ぎない。一度も全体を通して聴いたことは無い。ばかげているしうんざりするほど甘ったるい。

苦労してアルバム「Get Back」を作り上げたのにボツにされ、フィル・スペクターにリメイクされたことがよほど悔しかったのでしょう。40年以上経ってもこの口ぶりです。

ビートルズ以外にはLed Zeppelin、The Rolling Stones、Eric Claptonについても語っています。

2015年1月11日追記
自著のプロモーション期間中ということなのか他のインタビュー記事も掲載されました。

Soundman: A Chat with Legendary Producer Glyn Johns  (Rock Cellar Magazine)
ゲット・バック・セッションについてより多くのことを語っています。同セッションが当初チュニジアでのライブとそれに至る過程を収めたテレビ用ドキュメンタリーとして始まった等、よく知られているエピソードを裏付ける発言があります。
アップル社の屋上で行われた通称「ルーフトップ・コンサート」がグリン・ジョンズの発案だとは知りませんでした。リンゴ・スターがグリン・ジョンズに屋上を案内したことがきっかけだそうです。
ビートルズが当初提示していた「ゲット・バック」というコンセプトに忠実に仕事を進めてきたのに、それを反故にされたことが相当無念な様子でした。後年発売された「Let It Be... Naked」には溜飲を下げたそうですが、同アルバムを聴いたことは無いそうです。
印象的だった発言は当時の現場の雰囲気はそれほど悪くなかった、というものです。映画「Let It Be」が暗い仕上がりなのは当時のマネージャー、アラン・クレインのせいであると評していました。
「ゲット・バック・セッションの現場の雰囲気は悪くなかった」と証言する人は多いので、映画が再リリースされるときは陽気に編集したバージョンが収録されると良いなと思います。 

追記:まさしくそのコンセプトで再構成された映画『ザ・ビートルズ:Get Back』(邦題)が2021年に公開されることが発表されました。

The Beatles: Get Back』についての甲虫楽団ブログの記事まとめはこちら↓
https://blog.kouchu.info/search/label/GETBACK

 

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3 コメント

  1. グリンジョンズ版と言われているブートレッグを持ってるが、フィルスペクター版を酷評できる程ではないと思うが...
    グリンジョンズ版は、よく言えば「ありのまま」、悪く言えばプロデューサーの「色」なし。
    とどちらの版をリリースしても売れたのだろうが...
    ※グリンジョンズ版も正規リリースして欲しい...複雑なファン心理...

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    1. 私も[GET BACK」のブートを持っています。(ジャケットまでその様に再現していますが、それじゃ「青盤」と変わりない)
      私的には、演奏の音はこちらの方が好きなのですが、余計なおしゃべりや演奏の間違いなどまでもそのままは言っている部分は、あまり好きではありません。
      同じような企画「レットイットビーネイキッド」というのもありましたが、これは作られすぎの感があり、これなればフィルスペクターのヤツの方がいいように感じます。どうせやるならば「GET BACK」をあの時点で出してほしかったです。

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  2. 私的には、演奏テイクはグリンジョンズミックスの方が好きです。
    スペクター版収録で良いと思うのは「LET IT BE」だけです。
    1970年に「Let IT BE」発売後、「グリーンジョンズミックス」のブートが様々な形で発売されましたが、ブートの音源が当時DJ用に配布されたアセテート版からなので当然音質は正規版に比べ悪いです。
    音の厚さ、透明感、柔らかさ等が違います。
    アンソロージー収録の「THE LONG & WINDING ROAD」を聴き比べるとはっきりわかります。
    2002年に「LET IT BE NAKED」が発売されると聞いて、やっと「グリーンジョンズミックス」の音質のよいものが発売かと思いましたが、「LET IT BE NAKED」は別テイクバージョンをつなぎあわせたような感じで、自分が30年追い求めていたものと違い複雑な
    気持ちでした。
    「スペクター版」「グリンジョンズ版」、「LET IT BE NAKED版」のどれが好きかは
    各個人の好みになると思いますが、歴史的観点から言っても「グリーンジョンズミックス」をマザー、マスターテープから掘り起こした「グリーンジョンズミックス」の正規版は発売されてもよいのではないかと思います。

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