ビートルズのポール・マッカートニーっぽいベースの音を出す方法

管弦楽隊とビートルズ!2024年11月4日(月祝)東京・蒲田で開催。トランペット、トロンボーン、チェロとビートルズの曲を原曲アレンジで演奏しますくわしくは→こちら

海外のこんなページをご紹介いただきました。

How to Play Bass Guitar like Paul McCartney (Beginner Guitar HQ) 

「ポール・マッカートニーみたくベースをプレイする方法」という内容で、ギター初心者向けアフィリエイトブログの1記事です。

これに日本代表として(?)「甲虫楽団」のベース担当が対抗して「上手い!」「天才!」との呼び声が高いビートルズのベーシスト、ポールマッカートニー奏法を論じてみようと思います。ビートルズコピーバンドのポール役のみなさまからのご意見ご感想お待ちしております。

甲虫楽団による研究の成果はYouTube甲虫楽団チャンネルでご覧ください!

※当ブログにおける「コピーバンド」の定義は→こちら

ポールマッカートニー ベース ピック で弾く

まず何といってもピックで弾くことが大事です。少なくともビートルズ時代は9割以上ピックで弾いています。レコーディングではピックで弾いている曲も何故かミュージックビデオでは指弾きであてぶりすることが多いポールです。指弾きの方が難しい・かっこいいと思っている気がします(単に当てぶりでは照れ隠しで手を抜いているだけかも)。ギターからベースに移行していったので生粋のベーシストのようには上手に指で弾けなかったのかもしれません。

「Help!」のMVで指弾きするポール

そのせいか、音数が少ないバラードではライブでも指で弾くことがあります。この場合はネックの最下部に親指を当てて安定させて弾きます(上掲の写真参照)。

ピックで弦をはじく位置

あえてピック弾きをするベーシストはより硬い音を出すために弦の端っこ、ブリッジ付近で弾くことが多いですが、ポールはこれまたギターの癖なのかけっこう中央付近で弾いています

1961年。そもそも抱える位置が高い

1963年。これ以降ピッキング位置が少し後ろの方に下がる

デビュー当時はHofner(ヘフナー)のバイオリンベースをフロントピックアップの近くで弾いていますが、その後ピッキングする位置が少し下がりました。 しかし、1965年に手に入れたRickenbacker(リッケンバッカー)のベースはリアピックアップの上にフェンス(カバー)があってその上では弾けないので、かなり前の方で弾くことになります。

なお、ビートルズ解散後はこのフェンスを外してその上で弾くようになったのでピッキング位置は下がりました。  

いずれにせよ、ポールっぽく弾くためには弦をしっかりはじいて振幅を味わう感覚が必要だと思います。そのためにもピックは固く厚いものを使用することをお勧めします。

ピッキングの仕方

ビートルズ初期はかなり速い曲でもダウンピッキング(下方向に振り下ろす)一辺倒で弾いています。この方が粒が揃って疾走感が増すのであえてダウンピッキングに固執する人は現代にもいます。ポールはこの方が簡単だからやっていたのだと思います。

ポールは1965年ごろからオルタネイトピッキング(弦の上の一往復で2回弾く)を積極導入したので、単にできなかったのを練習して修得したということなのかもしれません。以降、ピッキングに余裕ができたのかフレーズがメロディアスになっていきます。オルタネイトピッキングの醍醐味の一つであるゴーストノート(指板側の指を浮かす等して音程感の無い音を出す)を1967年頃から多用しだします。
この辺の年代による変化を意識するとよりポールっぽくなると思います。

指板側の指の使い方

ポールが弦をしっかりはじいていることは前述しましたが、同じ発想でポールは指板側の指を次の音ギリギリまで押さえて充分に音の長さをねちっこく取ることを好むようです。この際長い音には癖のようにビブラートをかけます(『Rubber Soul』以降)。ポールのビブラートはクラシックギターでよく行われるように弦と並行に指を動かすタイプです。弦を道連れにして引っ張るのでかなり力が要ります。そのため周期はゆっくり目になります。そこもポイントです。エレキギターで一般的な弦と垂直に動かすチョーキングビブラートはより音程変化を強くしたい場合やブルージーな味付けを行う場合に飛び道具的に使うようです。

次の音ギリギリまで押さえる弊害として音と音との切れ目があいまいになってしまい躍動感が無くなるので、Hofnerの場合はピッキング時に手のひらを当て(スポンジを挟むこともあり)、Rickenbackerの場合はピックアップフェンスが邪魔で手のひらを当てられないので備え付けのミュート機能を使って音を急激に減衰させて弾いています。なお、ポールが指板を押さえる際には握るように親指が反対側から飛び出す「ロックフォーム」であるのも特徴的です。これもミュートに加担していると思います。
また、もう一つの弊害として次の音まで指の移動が間に合わないこともしばしばなので結果的にスライド(ピッキングした後指を滑らせてフレットを変更)が多く発生します。意図せずスライドしてしまったということも多そうです。

なお、上掲の映像では52秒ごろに、同じ音を連続で弾く際にその先の展開に備えて押さえる指を入れ替える、という典型的な行動が見られます。

フラットワウンド弦

ベース弦について現代はラウンドワウンド弦が主流ですが、当時はフラットワウンド弦しかなかったようです。ポールの音を出したければ使用弦はフラットワウンド弦一択です。

現代のポールはバイオリンベースにLa Bella(ラベラ)製の弦を使用していると聞きましたが、ビートルズ時代にどのような弦を使用していたかは知りません(ご存知の方教えてください!)。Hofner純正の弦や、PYRAMID Strings(ピラミッド)の弦(実は両者は同じ??)が有力候補になります。すみません、あまりビートルズ初期の弦について詳しくありません。

というのも僕は普段Hofnerのバイオリンベースでゲット・バック・セッション期の曲を弾くことが多いので、ROTOSOUND(ロトサウンド)のRS-88Mというブラックナイロン弦を使用しています。これはまさしくルーフトップ・コンサートの音で文句なくおすすめできます。ショートスケール用のRS-88Sはバイオリンベースには短すぎるのでミディアムスケール用のRS-88Mを使用してください。

Rickenbackerにどのベース弦を使用していたかも不明ですが、純正の弦があったようなのでそれを使っていた可能性が高いと思います。既にRickenbacker製の弦は販売されていませんが、僕は海外の方から当時の弦に似ているからとすすめられたThomastik-Infeld ( トマスティック・インフェルト ) のJF344を使用しています。

使用ベース本体(ヘフナー/リッケンバッカー/ジャズベース)

フラットワウンド弦をピックで弾きほどよくミュートを効かせればそれだけでかなりポールの音に近づきますが、ポールと言えば使用ベースが特徴的なので、やはりドイツのメーカー、Hofner 500/1(ヘフナー)かアメリカのメーカー、Rickenbacker 4001S(リッケンバッカー)が欲しいところです。ポールは両者ともネック間近にあるフロントピックアップを使用し、音色も両者で大きく変えることはしていない印象なので、結局どちらを買っても満足できると思います。なお、後世のRickenbackerの代名詞になっているいわゆるゴリゴリサウンドは他のアーティストがリアピックアップを使って出したものであって、ビートルズ時代のポールはRickenbackerのリアピックアップを使用していない気がします。少なくともビートルズ時代のゴリゴリサウンドはRickenbackerではなくFender Jazz Bass(ジャズベース)によるものと思います。ここはよく勘違いされるポイントです。

Hofner 500/1やRickenbacker 4001Sに手が出なければ他のフロントピックアップがあるベースにフラットワウンド弦を張れば充分そうですが、そういったベースはなかなか無いので結局HofnerのIgnition Bassが最もコストパフォーマンスが高いと思います。

追記:2021年にさらに安価な選択肢が登場しました↓

ほぼネックだけのバイオリンベース Hofner Shorty Violin Bass をドイツから取り寄せた

まとめ:ビートルズ ベース 最後は気持ち

ここまで述べたことを実践すればかなりビートルズ時代のポールに近い音が出せるはずです。そこからさらに上を目指す場合はポールになりきって取り組むしかありません。自分が見聞きしたポールの言動や仕草の記憶を総動員して「ポールだったらどう考えただろう」、「ポールだったらどうしただろう」と想像すると見えてくるものがあると思います。

 楽器の準備ができたら次は楽譜ということで、ベースのTAB譜入手方法については別記事をご覧ください。↓
ビートルズのベースTAB譜入手方法(無料/有料)を現役コピーバンドが解説


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

Hofner/Shorty Violin Bass SB【在庫あり】
価格:44,000円(税込、送料別) (2024/5/1時点)




[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

Hofner Premium Series Violin Bass Mersey '62 H500/1-62-0【町田店】
価格:437,800円(税込、送料無料) (2024/5/1時点)



コメントを投稿

6 コメント

  1. 読みごたえがあってとても面白く読ませていただきました。勉強になりました。これからもこの手の記事をたくさん書いてくださいませ。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。自分だったらこういう記事が読みたいと思って書きました。今後ともよろしくお願いします!

      削除
  2. https://youtu.be/ljdP1uLDHcE?si=e50T_2clj9BLC4_x
    このようなボンボンとした音を出す方法を教えてください。
    どんなアンプを使っているか。アンプのセッティング。ミュートはしているか。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。まず、弦の影響が大きいと思います。この映像ではRS88M | TRU BASS 88 NYLON TAPEWOUND MEDIUMを使用していいます。ベースアンプは多分どれでもよく、中音域を強調して少し歪ませ、ピッキングする方の手で少しミュートすればこのような感じになるはずです。

      削除
  3. はじめまして。YouTubeでベースの動画を拝見させていただいています。音作りもプレイも素晴らしく、私はリッケン4003を所有しているのですが大変参考にさせていただいています。
    質問させていただきます。リッケンにJF344の弦を張られているということですが、プレイしていてメリットやデメリットを感じる点があれば教えて頂きたいです。
    よろしくお願いします。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。JF344を一度買ってそれを張ったまま10年以上使い続けている状態なので、他の弦との比較はあまりできません。それより前はLa Bella 760FXを使っていましたが、760FXの方が音に丸みがあってよかったかな、とJF344に変更した当時感じた記憶があります。今新たにフラット弦を選ぶとすれば手触りが実際フラットになっていて、巻き線の幅が広めのものを好みます。

      削除