ポール・マッカートニーが、テイラー・スウィフトとトラヴィス・ケルシーの結婚式で、ビートルズの「I Want to Hold Your Hand(抱きしめたい)」を披露しました。1964年以来、62年ぶりの演奏となったこの曲。ポールは10月2日放送の米テレビ番組『Jimmy Kimmel Live!』で、この結婚式での演奏について初めて公に語り、テイラー本人からのリクエストだったことを明かしました。
結婚式での心温まるエピソードですが、ビートルズ・ファンとしては、長年コンサートで聴けなかった代表曲が復活したことにも注目です。今回の発言と二人の交流を紹介しながら、1990年以降のポールのコンサートのオープニング曲、そして未だポールのコンサートで未披露のビートルズのシングル曲を振り返ります。
「新郎に向かって歌って」――ポールが明かした結婚式でのやり取り
Peopleなどによると、結婚式は7月3日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われました。演奏した事実は7月の時点ですでに報じられていましたが、Rolling Stoneは、今回の番組出演を、ポール本人が結婚式での演奏について初めて語った機会と伝えています。約3か月を経て、本人の言葉で選曲の経緯が明らかになったわけです。
番組でジミー・キンメルに、あらかじめ歌うことは決まっていたのかと尋ねられると、ポールはテイラーに頼まれていたと説明。「抱きしめたい」という選曲も彼女の希望でした。そして、ステージにいたテイラーにこんな言葉をかけたそうです。
「君も一緒に歌ったらいい。君の彼に向かって歌うんだよ」
ポール・マッカートニーの発言より
CinemaBlendの番組紹介でも、このやり取りが取り上げられています。実際に二人のデュエットになったのかまでは明らかにされていません。
ポールが結婚式について語った番組映像。YouTubeで見る
1964年以来、62年ぶりに歌われた「抱きしめたい」
「抱きしめたい」は、ビートルズが米国で初めてシングル・チャート1位を獲得した曲です。世界的な代表曲でありながら、ポールのソロ・ツアーでは長く取り上げられてきませんでした。Rolling Stoneのロブ・シェフィールドによる記事は、今回の演奏を1964年以来、62年ぶりの復活として紹介しています。
ポールとテイラー、パーティーでの演奏から続く交流
二人の関係を知るうえで興味深いのが、2020年のRolling Stone「Musicians on Musicians」対談です。作曲やレコーディングについて話し合うだけでなく、パーティーで音楽が始まった夜の思い出も語られています。
テイラーは、デイヴ・グロールもいた席で、フー・ファイターズの「Best of You」をピアノで弾いたことを回想。ポールも、周囲に促されて演奏したことや、ウディ・ハレルソンが弾き始めた「Let It Be」に加わったことを話しています。
2024年にはポールがテイラーのウェンブリー公演を訪れ、2026年3月にはテイラーがポールのフォンダ・シアター公演に足を運びました。(Page Six)
ポールの歴代オープニング曲――1990年以降の主なツアー
「抱きしめたい」の復活で気になるのが、今後のコンサートでの扱いです。近年のポールは、ビートルズの曲でコンサートを始めることが多く、その1曲目の変化がツアーの話題にもなってきました。
1990年以降を振り返ると、当時の新曲、ウイングスの代表曲、初期ビートルズのヒット曲と、幕開けにも時期ごとの特徴があります。
本編の生演奏の1曲目を、曲の移り変わりに沿って集約しました。同じ曲が続くツアーは同じ行にまとめ、間を置いて復活した場合は別の行にしています。単発の特別公演やサウンドチェックは原則として除き、小規模公演は流れを示す一部のみ掲載しています。
| オープニング曲 | 年・ツアー | 備考 |
|---|---|---|
| Figure of Eight | 1990年|World Tour(1989~1990年) | ソロの新曲を採用。1990年の初のソロ来日公演もこの曲。 |
| Drive My Car | 1993年|New World Tour | ついにビートルズのナンバーで開幕。以降は基本的にこのスタイルになる。 |
| Hello, Goodbye | 2002~2003年|Driving World/Back in the U.S./Back in the World | 2002年の日本公演も「Hello」の挨拶から。 |
| Jet | 2004年|’04 Summer Tour | ウイングスの代表曲で幕開け。 |
| Magical Mystery Tour | 2005年|US Tour | ショーへ観客を誘う曲を採用。以降は便利に採用していく印象。 |
| Drive My Car | 2007年|Memory Almost Full関連公演 2009年|Summer Live ’09 | 2007年のElectric Ballroom公演などから、2009年のシティ・フィールド公演へ。 |
| Magical Mystery Tour | 2009年|Good Evening Europe | 2009年の欧州ツアーではこちらに変更。 |
| Venus and Mars / Rock Show | 2010年|Up and Coming | 3月28日~11月21日の28公演で採用。「Magical Mystery Tour」で始まる公演もあり。2012年3月28日のアントワープ公演でも復活し、確認できた冒頭での演奏は計29公演。 |
| Hello, Goodbye / Magical Mystery Tour | 2011年|Up and Coming 2011~2012年|On the Run | 二曲を公演ごとに使い分け。「On the Run」ではそれぞれ17公演・19公演で、ほぼ同数。 |
| Eight Days a Week | 2013~2015年|Out There | ツアー全体で77公演の幕開けに。「Magical Mystery Tour」も12公演で採用され、2015年の日本公演でも両曲を使い分けました。 |
| A Hard Day’s Night | 2016~2017年|One on One 2018~2019年|Freshen Up | 印象的な冒頭のコードが、二つのツアーを通じて開幕の合図に。 |
| Can’t Buy Me Love | 2022~2024年|Got Back | 2022年からのオープナー。2023年はこの曲が中心で、2024年も「A Hard Day’s Night」と併用。 |
| A Hard Day’s Night | 2023~2024年|Got Back | 2023年に再登場。2024年はこの曲が13公演、「Can’t Buy Me Love」が10公演。 |
| Help! | 2025年|Got Back 2026年3月|Rocks the Fonda | 2025年に刷新したオープニングを、2026年3月のフォンダ・シアター公演でも継続。 |
曲別の回数はsetlist.fmの「Show Openers」集計と公演記録に基づきます。「Got Back」は2023~2024年にも選曲が入れ替わっているため、単純に一曲から次の曲へ交代したわけではありません。2024年の記録では、サウンドチェックを含む年別統計から本公演の二曲を参照しました。
「Eight Days a Week」「A Hard Day’s Night」「Help!」という流れは興味深いところです。ジョンが主にリード・ボーカルを担当していた曲も、ポールのコンサートの顔になっています。「抱きしめたい」はジョンとポールの歌声が重なる曲ですから、この並びに加わっても不思議ではありません。
ポールのコンサートで、まだ本格的に演奏されていないシングル曲は?
ビートルズの主要なシングル曲の多くは、すでにポールのステージで聴くことができました。それでも、今回の「抱きしめたい」のように、長く取り上げられていない有名曲が残っています。
ここでは英国のオリジナル・シングルのA面・両A面曲と、1995年以降の新曲シングルを対象にしています。「未演奏」はビートルズ解散後のポールの公開コンサートで、楽曲としてまとまった形で演奏した記録を確認できない、という意味です。実質的なメドレー演奏は演奏済みに含め、短い引用、観客との合唱、サウンドチェックは区別しました。調査時点は2026年10月5日です。
| 曲名(英国発売年) | 確認できた演奏状況 |
|---|---|
| She Loves You(1963年) | 独立した1曲としての本格的な演奏は未確認。ただし「一度も歌っていない」わけではなく、2012年や2017年の公演に短い引用・メドレー内の歌唱記録があります。 |
| I Feel Fine(1964年) | 本公演での演奏は未確認。2010年のサウンドチェックには記録があり。 |
| Ticket to Ride(1965年) | ソロの公開コンサートでの演奏記録は未確認。ビートルズ時代にはステージで演奏していた初期の代表曲です。 |
| Yellow Submarine(1966年) | 短い歌唱や観客とのやり取りで登場した記録は複数ありますが、リンゴ・スターがコンサートで今も取り上げているのでフルで演奏することは無いでしょう。 |
| The Ballad of John and Yoko(1969年) | 公開コンサートでの演奏記録は未確認。レコードではジョンとポールの二人だけで録音した曲です。 |
| Free as a Bird(1995年) | 公開コンサートでの演奏記録は未確認。『Anthology』で発表された新曲です。 |
| Real Love(1996年) | 公開コンサートでの演奏記録は未確認。「Now and Then」が2024年にステージに登場した現在も、こちらの本格的なライブ演奏は待たれるところです。 |
一方、「All You Need Is Love」は2002年の「Party at the Palace」で他の出演者と共演しています。「Strawberry Fields Forever」も1990年のジョンへのトリビュート・メドレーで取り上げているため、単純な「未演奏曲」には含められません。
演奏状況はThe Paul McCartney Projectの曲別・公演別記録とsetlist.fmの演奏統計を照合。公開記録に基づく整理であり、私的な演奏までを含む一覧ではありません。
次のツアーは「抱きしめたい」で始まる?
長年演奏しなかった曲が、ある日突然オープニングに選ばれる。2013年の「Eight Days a Week」や2016年の「A Hard Day’s Night」は、そんな驚きを与えてくれました。2025年には「Help!」もその列に加わっています。
今回の結婚式での演奏が、そのまま次のツアーの選曲につながると決まったわけではありません。それでも、テイラーのリクエストをきっかけにポールが「抱きしめたい」を再び歌ったことは、ファンにとって期待したくなる材料です。次のツアーは「抱きしめたい」で始まるかも??

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