【2025年版】日本におけるヘフナーバイオリンベース購入ガイド(ビートルズコピーバンド向け)

これからビートルズのベースをコピーしようとしている人、あるいはよりポール・マッカートニーに近づきたい人のためのヘフナーバイオリンベース購入ガイドです。

現役ビートルズコピーバンドのベース担当が15年の研究の成果をここに共有します。どれを買えばいいの??という疑問に対する答えがあるはずです。

…と言っても60年超のヘフナーバイオリンベースの歴史において直近15年間ネットで情報を得たに過ぎないので認識や知識の不足もあると思います。先輩方のご指摘・ご意見お待ちしております!

現行品まとめ

2025年現在、ドイツ・Hofner社の日本総代理店は株式会社黒澤楽器店が務めています。
Hofner|ヘフナー日本版オフィシャルサイト

バイオリンベースの現行製品は以下の要素で分類されます。用語は僕が独自に設定したものもあります。赤字がポール使用器に近い仕様です。

グレード:Premium 60th / Premium Standard / Premium Artist / Contemporary / Ignition SE / Ignition PE / Shorty
タイプ(ピックアップ配置):Mersey / Cavern / 1PU
ルックス:Traditional / Ignition / Shorty
ボディ構造:ホロウ / セミホロウ / ソリッド
利き手:右(無印) / 左(L)

  • スケールは全て762mm
  • Shortyは厳密にはバイオリンベースでは無いがビートルズコピーバンドの文脈では同一視した方がわかりやすい
  • レリック仕様の商品やサンバースト以外のカラーは理解の妨げになるため除外
以下に各グレードを価格(税込定価)とともに表で整理します。
Hofnerバイオリンベース現行品まとめ
※M=Mersey C=Cavern L=左利き用あり
※価格は代理店公式ページに記載あるもの。Ignition SEのCavernタイプはオープンプライス


仕様の比較ポイント

ポールがビートルズ時代に使用した2本のバイオリンベースは2つ装着されているピックアップの配置が全く異なるのでどちらに合わせるかが重要です。

2つのピックアップがフロント側(ネック側)に隣接しているタイプは古くから「Cavern」と呼ばれています。デビュー前に根城にしていたCavern Clubに由来します。

デビュー翌年に手に入れた2本目のように2つのピックアップが離れているタイプをここでは「Mersey」とします。

Shortyは1つしかピックアップが無いので「1PU」と表現しました。

ルックス(第一印象)はポール使用器のイメージを「Traditional」とここでは名付けました。「Ignition」や「Shorty」はその名の通り各シリーズ固有の形状と理解してください。

Iginitionはピックアップ周辺やコントロールパネルがTraditionalと明らかに異なります。実物を見るとそれ以上に差異(ビザール風味)を感じます。

ポール使用器のボディ構造は「ホロウ」(空洞あり)です。「セミホロウ」はボディ内の空洞にセンターブロックが存在しており、強度面やハウリング対策で有利です。「ソリッド」には空洞がありません。

利き手はポールを追求するなら左用です。しっかり左用がラインナップされているのはさすがです。


グレード解説

Premium(プレミアム)シリーズ3種

究極的にはポール・マッカートニー使用器に近づくことが目的です。この3種のみドイツ製で他のグレードは中国で製造しています。

最高級の60th Anniversary Editionはナット幅が41mmと他のモデルより1mm狭く、他にもポール使用器のマニアックな仕様をこれでもかと盛り込んで高価になっています(でもまだまだ不満点はある)。

Artistは他のPremiumグレードの製品がラッカー塗装なのに対してより安価なポリウレタン塗装を採用しており、他にも製造工程の見直しなどでコストダウンを実現したモデルです。塗装以外に目立った仕様の差は無いようですが塗装がどのような感じなのか現物を見て判断することをお勧めします。

以下、各製品の紹介ページにリンクします(右利きのみ。明示していない場合はMerseyタイプ。以降同様)

Premium 60th:H500/1-63-60TH-0 H500/1-63-60TH-II 
Premium Standard:H500/1-62-0 H500/1-61-0(Cavern)
Premium Artist:H500/1-63-AR-0

製品番号中の61、62、63という数字は参考にした1960年代の製品の製造年を示しています。ポールの1本目のバイオリンベースは1961年製なので61という数字はCavernタイプであることを示しています。

ポールの2本目の(世界で最も有名な)バイオリンベースは1963年製ですが1962年製の仕様を盛り込んでいるため、62や63という数字が過去の製品にも使用されてきました。現行品はポールドンズバを目指す仕様に63を冠しているようです。


Contemporary(コンテンポラリー)シリーズ

ルックスはトラディショナルですが細部は現代的に効率よく製作されています。丈夫で重量バランスもよく、ライブで酷使するのに向いています。万人にお勧めできるモデルです。

ポール使用器に似ているか、という観点で遠目で見て気になるのはコントロールパネルのスイッチやノブが黒、ネックのバインディングがある、くらいでしょうか。

Contemporary:HCT-500/1-SB HCT-500/1-CV(Cavern)


Ignition(イグニッション)シリーズ2種

ルックスを犠牲にしてさらにコストダウンを追求している印象で、いかにも廉価版という見た目です。

ビートルズファンをかなり意識しているようで、低コストで実現できるマニアックポイントはContemporaryより追従しています。コントロールパネルのティーカップノブ、ボディの肩にHofnerロゴ(SEのみ)など。

SE(高価)とPE(安価)の差はボディのロゴ、BASSMANステッカー、ハードケースのようです。約2万円の差額はハードケース代と考えると良いでしょう。

Ignition SE:HI-BB-SE-SB HI-CA-SE-SB(C)(Cavern)
Ignition PE:HI-BB-PE-SB


Shorty(ショーティー)シリーズ

スケール(弦を張る長さ)こそ他のバイオリンベースと同じですが、ピックアップを1つのみとしてボディを極限まで小さくしています。

ここまでコンセプトが突き抜けると妙に説得力あります。安さも大きな魅力です。

詳しくは以下の記事をご覧ください
ほぼネックだけのバイオリンベース Hofner Shorty Violin Bass をドイツから取り寄せた

Shorty: HCT-SHVB-SB-0


購入時・購入後の留意事項

細かな仕様の違い

現行品は比較的仕様が統一されている印象ですが、製造時期や個体、あるいは販売店のサービスによって入手時の仕様が微妙に異なっている場合があります。

購入時は以下の点に注目してください。

  • 弦:フラットワウンド/ラウンドワウンド ※通常はPremiumのみポールと同様フラットワウンド
  • ケース:ハード/ソフト(ギグバッグ)、純正/非純正 ※純正にも何種類かある
  • ストラップピン:2箇所ともあり/1箇所だけあり/なし ※ビートルズ時代のポールは「なし」
  • ストラップ:付属/なし ※ストラップピンが無い場合は付属していることが多い
  • BASSMANステッカー:あり/なし ※近年はHofnerからの出荷時点で付属することが増えている
  • コントロールパネルのノブ:ティーカップノブ/黒 ※販売店がContemporaryのノブをティーカップに替えていることもある
  • 色:サンバーストの明暗の色の差、グラデーションの変化の度合い

もっとマニアックな視点ではHofnerロゴの貼り付け位置、ペグの見た目(シャフトが突き出ているなど)、ジャックのワッシャ、ピックガードを止める金具の曲り具合、などが同じ型番でも違う可能性があります。他にもあるかもしれません。


中古事情

ヘフナーバイオリンベースは過去60年以上に渡って様々な仕様の製品が発売されてきました。ポールに近づくという観点で中古市場で注目すべきは以下の4種類です。

ヴィンテージ

1961年〜1964年くらいに製造されたもの。当時は今以上に仕様のばらつきがあり、ポール使用器に近い仕様であれば確実に100万円以上です。

20/40 Anniversary Model (通称 20/40)

1995年にイギリスの販売代理店Music Groundの設立20周年と、Hofner社の500/1 Violin Bass誕生40周年を記念して製作された限定モデルです。

当時としては突然変異的にポール使用器に仕様を寄せており、発売後30年経ても評価が高いです。特にネックやヘッドの端正なたたずまいは現行品最高峰のPremium 60thでもかないません。僕も1本所有しています。見つけたらぜひ購入検討対象に加えてください。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

【中古】HOFNER / 500/1 20/40 Anniversary【渋谷店】
価格:341,000円(税込、送料別) (2025/3/12時点)


Vintage 62 World History Premium 3rd(通称 WHP3rd)

ポール使用器の追求を目指したWorld History Premium(WHP)は3つの世代に分かれており、少なくとも第3世代(3rd)はこだわりの強い(Hofner社からしたらめんどくさい)日本市場限定で販売されました。 

1st(2010年ごろ?)からの進化は早かった印象で、2012年までには3rdになっていたようです。

宮地楽器が特注でさらに仕様を追い込んでいました。2018年のことです。
Hofner 500/1 WHP Special Edition (Miyaji 100th Limited Edition) 発売

ナット幅41mmなど、このときの仕様はPremium 60thに受け継がれているようです。

Premium 60thには手が出ないがそれより下のグレードには満足できない人にお勧めです。


ネックのバインディングが無いContemporaryシリーズ

Contemporaryの現在の標準仕様ではネックにバインディングがあります。この白い縁取りは耐久性の面ではメリットありますが、ポール使用器とは違うのでこの点だけで一気に興醒めしてしまいます。

ところが、Contemporaryシリーズにはかつてネックバインディングが無いものも存在しており、2014年頃には日本用モデル HCT500/1 J という型番で正式にラインナップされていました(さらにフラットワウンド弦が標準装備だった)。

Contemporaryシリーズを中古で探す場合はネックバインディングに注目してみてください。ただし、ネックバインディングが無い個体は本来あるヘッドのバインディングも無い場合があるので購入判断に困るかもしれません。


僕が所有している改造済みContemporaryシリーズを売りに出しています。以下をご確認ください。
Hofner HCT 500/1 Part3(完結編)このベース売ります

改造

晴れて入手した後は改造による更なる追求も検討してください。ルックスがTraditionalの個体は改造する甲斐あります。

Contemporaryシリーズの改造ポイントは以下をご確認ください。
Hofner HCT 500/1 Part2(改造編)

以下、Premiumシリーズや20/40、WHPについてコストパフォーマンスが良い順に改造案を列挙します。入手した個体によっては改造不要な場合もあります。

  • コントロールパネルをヴィンテージに変更(65年式コンパネの幅を削って狭くする手もあり)
  • ピックアップ(あるいはカバーだけ)をヴィンテージに変更
  • リアピックアップの位置をブリッジ寄りにずらす(木部加工必要かも)
  • ヘッドのロゴを貼り直し
  • ペグのコマを縮小
  • オフセンタージャックに変更(木部加工必要)
  • ヘッドをリシェイプ(形状を整える)
ゲット・バック・セッション(1969年1月)時点のポール使用器に近づけたい場合は、弦をRotosound RS88M(ブラックナイロン弦)に変更しBASSMANステッカーを貼りましょう。
ヘフナー社が提供しているBASSMANステッカーは再現性低いので以下の情報を参考にしてください。
ROTOSOUND ロトサウンド ベース弦 Black Nylon Flatwound Medium Scale/Standard (.065-.115) RS88M


演奏

いよいよ演奏する段階になりましたら以下の情報をぜひ参照してみてください。

まとめ

ヘフナーバイオリンベースの現行品は仕様と価格のラインナップがバランスよくわかりやすく配分されており選びやすいです。

ビートルズコピーバンドとしてバイオリンベースを手にしようとするならContemporary以上のグレードをお勧めします。価格が見合わないようでしたら、中途半端に安いIgnitionよりはShortyに振り切った方が気持ちが伝わると思います。

Contemporaryでは満足できない、もっと金額を出せるということでしたら、20/40やWHP3rdの中古を探すことをお勧めします。

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