レビュー:『ザ・プロデューサー ~ビートルズ・サウンドを支えた男 ジョージ・マーティン~』


2012年6月2日 22時からNHK-BSプレミアムにて
『ザ・プロデューサー ~ビートルズ・サウンドを支えた男 ジョージ・マーティン~』
が放送されました。いつの間にか題名が「創った」から「支えた」に変更になっていました。
確かに「創った」は語弊があるかもしれません。

この番組は同テレビ局のロンドンオリンピック直前イギリス特集の一環だそうです。
元ネタは2011年4月にイギリスBBCで放送された「Produced by George Martin」と思われます。なお、同番組のDVD/Blu-rayが2012年9月11日に海外で発売されます。
追記:日本版が「プロデューサー ジョージ・マーティン〜ビートルズを完成させた男」として2013年1月23日に発売されました。

日本独自編集としてイギリス特集全体のナビゲーターである俳優の綾野剛さんが本編の前後で語っています。
正直期待していなかったのですがビートルズやジョージ・マーティンをよく知っていることが伺えるコメントでした。
日本語の独自ナレーションやマーティン親子の吹き替えもあって、編集に力が入った番組だと思いました。

肝心の番組内容は彼のキャリア形成に大きく貢献したビートルズについてがやはり多いものの、基本的にはマーティンの半生を追う内容でした。ビートルズサウンドの謎を解く鍵が得られることを期待して見ると肩透かしをくらうかもしれません。

その中でも個人的に興味深かった/知らなかった事実/発言を以下に列挙します。カッコ内は発言者です。大分意訳してあります。
  • マーティンの妻ジュディはビートルズと緊密な交流があった
  • ドラマーをピート・ベストからリンゴ・スターに自主的に変更したことをブライアン・エプスタインがマーティンに伝えなかったのでセッションドラマーのアンディ・ホワイトを雇ってしまった。(マーティン)
  • リンゴがビートルズに加入して演奏した時テンポが少し速かった。周りのメンバーもそれに合わせて速く演奏するようになった。(ポール・マッカートニー)
  • リンゴのドラムの音は他の誰とも異なる(マーティン)
  • ある音符についてドラムを叩くことができるスペースは余りない。自分はその中で後ろ寄りで叩くが多くのドラマーは音符の頭で叩く。(リンゴ・スター)
  • ビートルズが忙しくなってスタジオの時間が充分に取れずプレッシャーとなった(マーティン)
  • 「Can't Buy Me Love」をサビから始めたのはマーティンのアイデア。
  • 「Yesterday」のストリングスはシンプルだからこそ意味がある。どうあるべきかわかっていたのでアレンジは数時間で終わった。(マーティン)
  • 「RAIN」のエンディングの逆回転はマーティンのアイデア。
  • 「Eleanor Rigby」のスタッカートが効いたストリングス・アレンジはバーナード・ハーマンがヒッチ・コックの映画で使用した手法を参考にした。(マーティン)
  • 音で絵を作る(作者の意図を表現する)という行為において「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」はビートルズ以前に自身が多く手がけていたコメディ音楽と同じ(マーティン)
  • ジョージはジョンやポールの作曲能力に圧倒されていただろうが、曲を書きたがっていたことを知っていたので、励ましながらアルバムに1曲はジョージの曲を入れるようにした。(マーティン)
  • ビートルズの中で最もジョージ・マーティンを必要としていたのはポールだった。ジョンは普段必要としていなかった。(マーティン)
  • ポールは音楽自体に大きな興味を持っていた。一方、ジョンは言葉に興味を持っていた。それを互いにピンポン玉のように打ち合うことで二人の関係はよりいいものになっていたと思う。(マーティン)
  • ポールは常にジョンのように歌詞を書きたいと思い、ジョンはポールの作曲の才能をうらやましく思っていた。(マーティン)

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