サッカーイングランド代表は2026年7月15日、FIFAワールドカップ準決勝でアルゼンチンに1対2で逆転負けしました。1966年以来、60年ぶりとなる優勝は実現しませんでした。3位決定戦は6-4でフランスに勝ち、3位でワールドカップを終えました。
2026年W杯イングランド代表の「Come Together」とBritish Invasion 2.0
2026年5月22日に公開された代表発表映像は、ジョン・レノンの肉声から始まります。
「I think we are jolly English, actually」――自分たちは実際のところ、とてもイギリス人らしいと思う、という発言です。
続いて「Come Together」が流れ、26人の名前がニューヨークの映画館、ライブ会場、看板、地下鉄などに現れます。FAの公式説明も、1960年代以降にビートルズがアメリカへ与えた文化的影響への参照を認めています。
映像にはビートルズを知る人向けの仕掛けが続きます。
- ジョン・ストーンズがアビイ・ロード風の横断歩道を歩く
- 『Yellow Submarine』を思わせるアニメーションが入る
- 『Come Together』公式MVのアニメーションに似せた表現
- ハリー・ケインが映画『Help!』の手旗信号を再現する
- 選手たちが『A Hard Day's Night』のように街を走る
1964年にビートルズがアメリカを席巻した第1次ブリティッシュ・インヴェイジョンを、サッカーで再現する「British Invasion 2.0」はイングランドサッカー協会(FA)が掲げた公式名称ではありません。ただし、イングランド代表をニューヨークへ置き、ビートルズの記憶を全面に出した映像の狙いをよく表しています。
公開日の5月22日は「Ticket To Ride」が1965年に全米1位を記録した日とも重なります。ワールドカップへの旅と「乗車券」を掛けたという説をとなえる人もいました。
ジュード・ベリンガムの応援歌「Hey Jude」 EURO 2024から2026年W杯へ
イングランド代表にとっての2026年ワールドカップはジュード・ベリンガムの今大会7得点目となるゴールで終わりました。
彼の名前が「Hey Jude」に由来する、と説明する広告資料もあります。しかし両親が命名の由来を公式に認めた記録は確認できません。
この連想を代表レベルへ広げたのがEURO 2024でした。アディダスはベリンガムを主役に「Hey Jude」を使用した広告を制作。デビッド・ベッカム、フランク・ランパード、イアン・ライト、ストームジー、ローラ・ウッズらが出演し、1966年以降の失敗を背負う新世代としてベリンガムを描きました。
アディダスはイングランド代表のユニフォーム供給元ではないため、映像は代表のエンブレムやユニフォームを使わず、過去58年の痛みと一曲で「イングランド」を表現しました。「Hey Jude」はEURO 2024のイングランド戦で繰り返し歌われ、決勝でも響きました。
ベリンガム自身も「ビートルズをよく聴く。自分の音楽の趣味は少し古いので、まさに合っている」と話しています。合唱についても、立ち止まって聴きたくなり、脚が震える、このような瞬間のために契約したのだと思う、と喜びを語ったことがあります。ポール・マッカートニーもこのチャントを認めたとする報道があります。
ビートルズ4人はどのサッカーチームのファンだったのか
ビートルズはリヴァプール出身ですが、4人をまとめてリヴァプールFCのファンとすることはできません。ブライアン・エプスタインが、リヴァプールとエヴァートンのどちらのファンも失わないよう、贔屓のクラブを公言させなかったという真偽不明の逸話もあります。
| メンバー | 関係の深いクラブ | 確認できる根拠 |
|---|---|---|
| ポール | エヴァートン/リヴァプール | 家族はエヴァートン。後年は両方を応援 |
| ジョン | 特定不能 | 父はリヴァプール支持とされるが、本人の宣言はない |
| ジョージ | 無所属に近い | 質問を冗談ではぐらかした |
| リンゴ | アーセナル | 義父に連れられてアウェー戦を観戦 |
ポール・マッカートニーは「エヴァプール」
ポールの父ジェームズはエヴァートン地区の生まれでした。ポールは「ここだけの話だが、父はエヴァートン生まれで、家族は公式にはエヴァトニアンだ。マージーサイド・ダービーやFAカップ決勝なら、エヴァートンを応援しなければならない」と説明しています。
1966年のFAカップ決勝、エヴァートン対シェフィールド・ウェンズデイにはジョンとともに出席。エヴァートンが0対2から3対2へ逆転する試合を見ました。1968年の決勝、エヴァートン対ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンも観戦しています。
その後、リヴァプールFCのケニー・ダルグリッシュと親しくなり、立場が広がりました。「どちらもリヴァプールのチームだから両方を応援する。宗派対立の考えはない。自分はEver-poolだ」と語っています。両方を応援できる理由を聞かれたら、「ローマ教皇から特別な許可を受けた」と答える、という冗談も残しています。
1968年の写真企画「Mad Day Out」で身につけたリヴァプールのロゼット(リボン製の勲章・バッジ)は、撮影中に会ったファンから借りた物とされます。
1977年のFAカップ決勝、リヴァプール対マンチェスター・ユナイテッドは、カリブ海のヨットでラジオ中継を聴いていました。
代表への関心もあります。2018年のワールドカップ前、公式サイトでイングランドへのメッセージを求められたポールは、優勝してほしい、そうなれば最高だ、幸運を祈りながら最善を尽くすことを願う、と答えました。
ジョン・レノンをリヴァプールファンと断定はできない
ジョンの父アルフレッドはリヴァプールFCのファンだったとされます。しかしジョン本人がリヴァプール支持を明言した確かな資料はありません。
1974年の『Walls And Bridges』のカバーには、11歳のジョンが描いた1952年FAカップ決勝、ニューカッスル対アーセナルの場面が使われました。ヘディングする選手はニューカッスルのジョージ・ロブレドと考えられています。背番号9をジョンの「9」への関心と結びつける説もあります。
リンゴ・スターは義父の影響でアーセナル
リンゴをアーセナルへ連れて行ったのは、ロンドン出身の義父ハリー・グレイヴスでした。少年時代、アンフィールドやグディソン・パークで行われるアーセナルのアウェー戦を一緒に見ています。
作家アンディ・トンプソンは、リンゴが「ガナーズ」(アーセナルの愛称)について非常に詳しいと記しています。一方、息子たちはリヴァプールのシーズンチケットを持つとされています。
ジョージ・ハリスンは「もう一つのチーム」
ジョージは4人の中で最もサッカーへの関心が薄かったとされます。リヴァプールとエヴァートンのどちらを支持するのか聞かれると、「リヴァプールには三つのチームがある。私はもう一つの方が好きだ」と回答。どちらも選ばず、質問そのものを冗談にしました。息子ダーニはリヴァプールのサポーターとして知られています。
ビートルズは1965年のFAカップ決勝をテレビで見た
1965年、初のFAカップ優勝を目指すリヴァプールのビル・シャンクリー監督へ、4人は連名で電報を送りました。
「幸運を祈る。僕たちはテレビで見ているよ。ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ」
リヴァプールはリーズ・ユナイテッドを延長戦の末2対1で破り、クラブ初のFAカップを獲得しました。この電報はシャンクリーの遺品から見つかっています。
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の人物群に、唯一のサッカー選手として置かれたのもリヴァプールの元FW、アルバート・スタビンズです。起用を提案したのはジョンとされます。アルバムを贈ったポールは、長年の素晴らしいプレーをたたえ、「これからも長く相手をかわし続けてください」という趣旨のメッセージを添えました。
ビートルズ作品に残るサッカー
「Dig It」に登場するマット・バスビー
『Let It Be』収録の即興曲「Dig It」には、マット・バスビーの名前が登場します。マンチェスター・ユナイテッドの名監督として知られますが、現役時代にはリヴァプールで約5年間プレーしました。
「Glass Onion」に1966年W杯決勝の実況
『Anthology 3』で発表された「Glass Onion」の初期ミックスでは、1966年ワールドカップ決勝を伝えたBBC実況の「It's a goal!」が歓声とともに繰り返されます。完成版ではジョージ・マーティンのストリングスに差し替えられました。
映画に映る赤と青、マフラー、庭でのボール遊び
映画『Help!』ではビートルズが赤と白のマフラーを着用します。リヴァプールFCの色だと解釈されることがあります。
映画『Yellow Submarine』の「Eleanor Rigby」の場面には、赤いチームと青いチームの試合が現れます。リヴァプール対エヴァートンを連想させる配色です。
『Magical Mystery Tour』の「Blue Jay Way」用映像を撮影した1967年11月3日には、ポール、ジョージ、リンゴがリンゴの自宅の庭でボールを追い、時には手も使って遊ぶ姿が記録されています。
主な参照先:England Football、Reuters(2026年W杯準決勝)、Reuters(ベリンガム)、The Beatles Story、The Beatles公式サイト、Paul McCartney公式サイト、The Guardian、The One Clubほか。支持クラブについては資料間の食い違いが多いため、本人の発言と確認できる行動を優先しました。







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