豊崎愛生さんとビートルズ――『けいおん!』でまねたポールと『ラバー・ソウル』朗読

声優の豊崎愛生さんが、ザ・ビートルズ『ラバー・ソウル』スペシャル・エディションの発売記念企画に参加。「In My Life」と「Drive My Car」の英詞の日本語訳を朗読する公式動画と、ビートルズへの思いを語るインタビューが公開されました。

『けいおん!』の平沢唯役などで知られる豊崎さんですが、ビートルズとの付き合いは幼稚園時代にさかのぼります。母親と通ったドーナツ店、中学生の頃に作ったベスト盤MD、そしてレスポールを手にした際の「ポール・マッカートニーごっこ」。今回のインタビューと過去の発言から、その関係をたどります。

豊崎愛生がビートルズを語る公式インタビュー

まずは今回公開されたインタビューです。約17分半にわたり、ビートルズとの出会いから、朗読で意識したこと、好きなメンバーまで語っています。以下の記事中には、それぞれの話題の開始位置へのリンクも付けました。

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ビートルズとの出会いは、母親と通ったドーナツ店

豊崎さんが最も古い記憶として挙げるのは、幼稚園の帰り道に母親と立ち寄ったドーナツ店です。店内で流れていたのがビートルズでした。当時はバンド名も曲名も知らず、その店に行けば聴ける音楽として親しんでいたそうです。

お気に入りは、黄色い砂糖の粒が付いたチョコレートドーナツ。いつも同じものを買ってもらって食べていたといいます。音楽と食べ物の組み合わせが記憶に残り、ビートルズとドーナツは今でも切り離せない存在になっています。

具体的な曲名として出てくるのが「Love Me Do」。今でもこの曲を聴くと甘いものが食べたくなるので、きっと店のプレイリストに入っていたのだろう、と話しています。曲を明確に覚えているというより、現在の感覚から当時をたどっているところが、幼い頃の記憶らしい話です。

このドーナツ店の思い出は、2015年の『ザ・ビートルズ1』発売時に寄せた公式応援コメントにも登場していました。

インタビュー:ビートルズとの出会い(0:00〜)

父親に勧められた『Sgt. Pepper’s』、自分で選んだベスト盤MD

ビートルズを意識して聴くようになった経緯は、別の機会にも語っています。2019年11月5日放送のTOKYO FM「THE QUARTER~スフィアの10s is Wonder!!~」で、初めて買ったCDとして紹介したのが『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』でした。

番組を紹介した記事によると、小学校低学年の頃、父親に勧められて中古CD店へ買いに行ったことがきっかけだったそうです。そこからブリティッシュ・ロックや昔の洋楽に関心が広がったと、自身の音楽のルーツを説明しています。母親とのドーナツ店の記憶に、父親からの音楽の勧めが重なっていたわけです。

今回のインタビューでは、中学生の頃の聴き方も明らかになりました。CDから好きな曲を選んでMDに録音し、自分だけのビートルズ・ベストを作っていたそうです。『ラバー・ソウル』から入れていたと記憶しているのは、「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」と「In My Life」の2曲でした。

「Norwegian Wood」は、朝の爽やかな気分に合う曲。一方の「In My Life」は、部活動を終えて少し疲れた帰り道に選ぶ曲だったといいます。徳島で育った豊崎さんにとって、後者は川沿いを自転車で走った時間や、夕日、きらめく川面の風景と結びついています。

ビートルズの歌が、聴く人それぞれの土地の風景や日常に重なる。この話は、その具体的な一例として印象に残ります。

インタビュー:初めて聴いた『ラバー・ソウル』(2:22〜)

大人になって気づいた『ラバー・ソウル』の歌詞

中学生の頃は、歌詞の意味よりも音の心地よさを楽しんでいたそうです。大人になって歌詞を読み、かつて爽やかな気分で聴いていた「Norwegian Wood」の結末に驚くなど、聴き慣れた曲にも新しい発見がありました。

そこから、どんな心境や時代背景で書かれたのか、ビートルズの歩みの中でこのアルバムがどんな位置にあるのかを考えるようになったといいます。なお、「Norwegian Wood」の結末については解釈が分かれることを、本人も踏まえて話しています。

好きな曲を選んで楽しむ聴き方を認めつつ、今の豊崎さんが勧めるのは、アルバムを最初から最後まで曲順通りに聴くことです。かつて自分でベスト盤MDを作っていた人が、後にアルバム全体の流れを楽しむようになったという変化にも、長い付き合いが表れています。

インタビュー:あらためて『ラバー・ソウル』を聴いて(5:26〜)

『けいおん!』のギター練習でポール・マッカートニーをまねた

好きなメンバーを尋ねられると、豊崎さんは昔からポール・マッカートニーだと答えています。親しみやすいかわいらしさと、音楽的な変化の大きさが魅力だそうです。「Michelle」を例に、メランコリックな曲を生み出すポールへの驚きも語っています。

そのポールへの憧れが、声優としての仕事に入り込んだエピソードもありました。『けいおん!』では、演じる平沢唯と同じギブソン・レスポールを持って、実際に演奏する機会がありました。豊崎さんの記憶にあったのは、ポールもレスポールを弾いていた姿です。

練習時にはストラップを短めにし、「ポール・マッカートニーごっこ」のように、格好よく見える弾き方を探っていたそうです。キャラクターに合わせて手にしたギターに、昔から好きなミュージシャンとの接点を見いだしていたのです。

ポールに憧れてレスポールを選んだという話ではありませんが、キャラクターとしての演奏を準備する時間にも、豊崎さん自身の音楽の好みが自然に顔を出していたことが分かります。

ちなみに、『けいおん!』自体にもビートルズのオマージュを感じます(ベーシストが左利き、卒業旅行でロンドンに行ってアビーロードを歩く、・・・)。

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インタビュー:ポールへの憧れ(11:43〜)

インタビュー:レスポールでポールをまねた話(13:22〜)

2011年には「Hey Jude」を演奏、2015年には公式応援コメント

ビートルズとの関わりは、発言だけにとどまりません。2011年のファーストコンサートツアー「love your live」では、「Hey Jude」をギター弾き語りで披露。同年12月21日に発売されたライブ映像作品にも収録されており、ソニーミュージックの公式曲目一覧で確認できます。

この映像をめぐっては、YouTubeへの投稿に批判的な反応が集まったことが2012年に報道されました。ただ、それは投稿動画に対するネット上の反応の話です。演奏の好みをめぐる評価とは別に、初ソロツアーでビートルズの曲を選び、自ら演奏していたことは、豊崎さんの活動歴に残っています。

豊崎愛生「ユーチューブ」動画が「炎上」 「ビートルズをバカにしてるのでは」(J-CAST ニュース)


※映像は実際のものと異なります


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2013年の『フリップ フロップ』発売時のHMVインタビューには、楽曲提供者のwhooさんとの音楽談議も登場します。互いにビートルズ好きであることに話が及ぶと、豊崎さんは、音楽の話をしながら楽しくレコーディングした様子を説明しています。

そして2015年には『ザ・ビートルズ1』に応援コメントを寄せ、2026年には『ラバー・ソウル』の公式朗読企画へ。聴き手、演奏者、コメントを寄せるファン、言葉を届ける声優と、関わり方を変えながらビートルズとの接点が続いています。

「Drive My Car」朗読――少し大人っぽく

今回の仕事は、英詞の日本語訳を読むというものです。豊崎さんは、自分の好きな音楽と、普段の声優の仕事がこの形でつながることを喜んでいます。

「Drive My Car」については、映画スターを目指す女性との会話に、大人の意味合いも含まれていると捉えています。そのため朗読でも、それまでのアイドル・ポップ的な印象から一歩進んだ、少し大人っぽい雰囲気を意識したそうです。

YouTubeで「ドライヴ・マイ・カー」朗読を見る
インタビュー:朗読で意識した大人の雰囲気(8:35〜)

「In My Life」朗読――間奏のピアノも表現のヒントに

「In My Life」では、幅広い世代やさまざまな状況の人が自分を重ねられるよう、特定の場面を強く限定しない、フラットな読み方を意識したといいます。

さらに興味深いのが、収録時のディレクションの話です。もう少しかわいらしく、という提案を受けた際、豊崎さんが思い浮かべたのは、曲の間奏に入るピアノの音でした。そのかわいらしい感触を朗読にも取り入れると、自分の中でしっくりきたそうです。

日本語訳の意味だけでなく、長年親しんできた楽曲のサウンドも声の表現の手がかりになっていたわけです。こうした説明を踏まえて朗読を聴くと、言葉の響かせ方にも注目できそうです。

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インタビュー:「In My Life」の読み方(9:24〜)
インタビュー:間奏のピアノから得たイメージ(10:41〜)

最近気になるのは、バンドを支えたリンゴ・スター

ずっとポールが好きだという豊崎さんですが、最近はリンゴ・スターにも関心が向いているそうです。年齢を重ねるにつれて、人当たりのよさや、メンバーをつなぐ存在としての魅力をあらためて感じるようになったと語っています。

音楽性や技術に加え、人柄やメンバー同士の関係もビートルズを考えるうえで欠かせない。その視点から、サウンドの面でもバンド全体の面でも支え続けたリンゴの仕事を尊敬しているといいます。スターとしてのポールへの憧れに、集団を支えるリンゴへの敬意が加わったという変化です。

インタビュー:最近感じるリンゴの魅力(14:36〜)

豊崎愛生にとってビートルズは「生活の一部」

インタビューの最後で、豊崎さんはビートルズを「生活の一部」と表現しています。子どもの頃に聴いていなければ、その後に好きになった音楽も、考え方も違っていたかもしれない。それほど身近なところに溶け込んでいた存在だというのです。

母親と食べたドーナツ、徳島の川沿いの風景、レスポールを構えた練習時間。そして今回、声優として読むことになった歌詞。大きな出来事だけでなく、日々の暮らしのあちこちにビートルズがいたことが伝わるインタビューでした。

インタビュー:ビートルズは「生活の一部」(16:44〜)

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