2018年11月13日火曜日

アルバム『ザ・ビートルズ』(ホワイトアルバム)50周年記念リミックス ファーストインプレッション

ポール・マッカートニーと入れ違いに日本にやって来た『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』 50周年記念スペシャル・エディション。目玉であるリミックスのハイレゾ音源(24bit 96kHz)を聴いてみました。
<再生環境>
・OS:Windows 10 (64bit)
・プレイヤー:foobar 2000 WASAPI接続
・スピーカー:KRIPTON KS-1HQM (USB DAC 内蔵アンプスピーカー)
・ヘッドフォン:Roland QUAD-CAPTURE(USB DAC)+ Sony MDR-ZX700 (ヘッドフォン)

事前情報を頭に入れず、スピーカーとヘッドフォンで一回ずつ聴いて見た感想を記します。 我々甲虫楽団は11月3日にホワイトアルバム全曲演奏ライブを敢行したばかりです。
 ↓当日の全曲ダイジェスト(2分30秒)

ライブ準備のために同アルバムはかなり聴き込みましたので(Revolution 9も)、その耳にどのように聴こえるでしょうか?

全般

昨年の『Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band』50周年リミックスのときにも書きましたが、ホワイトアルバムでは録音トラック数が増えた一方、録音自体はシンプルなのでリミックスに向いていると予想していました。実際の音源を聴いてまさにその通りでした。どなたにとっても期待を裏切らない瑞々しい出来だと思います。

全体的には以下のような傾向があると感じました。
  • 50年前のステレオミックスのイメージを尊重しつつ現代基準でブラッシュアップ
  • 個々の音の分離が良く高音から低音まで充分に鳴っている。ドラムとベースがとくに影響を受けて細かなニュアンスが聴き取りやすくなっている
  • ベースの音量は控えめ(そうやっても存在感は維持できる音質だから?)
  • 音の定位をこまかく調整(元の録音ではトラックが同じような音も別々に配置)
  • ボーカルには積極的にエフェクトを適用
  • 元々エフェクトがかかっていたボーカルはあまり音質向上しない
  • コーラスはボーカルを取り巻くように配置しエフェクトを強め
  • 全体にかけるリバーブは小さめの部屋のイメージに留める(宅録の世界観を強調?)
  • 小規模の生楽器の音が生々しい(アコースティックギター、弦楽器、管楽器)
  • 裏に狂気をはらんだ楽曲はとくに迫力が増す(Glass Onion、Savoy Truffleなど)
 最後の2点は『Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band』50周年リミックスのときにも感じたのでこれはリミックスを担当したジャイルズ・マーティンの個性なのかもしれません。
来年リミックスが期待される『Abbey Road』はこの2点に当てはまる部分があまりありません。ギターの音をどう鳴らすかがカギになりそうです。

以下個々の曲の感想です。とくに気に入った曲には★をつけました。

Back In The U.S.S.R.

ドラムの音が生々しい。とくにスティックで叩かれた皮が振動する様子が伝わって来る。目の前でポールがドラムを叩いている様子が目に浮かぶ

Dear Prudence

リバーブが強めで宇宙感が増している。Look aroundの前のベースの入り間違い?練習?が消されている

Glass Onion ★

せっかくのベースの音量が小さい。ストリングスの音がなまめかしい。ドラムが暴力的

Ob-La-Di, Ob-La-Da

イントロの手拍子が1つ足りない!ベースのゴーストノートがはっきり聴き取れるようになった。サックスの音がよく主張している。ピアノのグリッサンドが右から左へ動く(『Sgt.~』の『Lucy in the Sky with Diamonds』のイントロを思い出した)

Wild Honey Pie

元のリミックス以上に声を加工している

The Continuing Story Of Bungalow Bill

オノ・ヨーコの声が大きく聴こえるようになった。そのせいか全体的に緊張感が増した。音の定位を細かくいじっている

While My Guitar Gently Weeps

エリック・クラプトンのギターがおとなしくなった。歌の切迫感が増した

Happiness Is A Warm Gun

元々声をあまり加工していないのでボーカルがよりクリアになった。ベースが入るタイミングが思っていたよりも早い。今回のリミックス特有のコーラスの加工が顕著(エフェクト強めでボーカルを取り囲むように配置)

Martha My Dear ★

ピアノを弾いている指が目に浮かぶ表現力。演奏が歯切れよくテンポが上がったように錯覚してしまう。ストリングスやブラスの残響が心地よい

I'm So Tired

あまり変化を感じない。元々声やドラムの音を加工しているので音質向上の余地が無かったのかもしれない。楽器の音同士の間に空間が増したように感じられる程度

Blackbird

あまり変化を感じない。声の押し出しが強くなったかな、という程度。元々シンプルな録音なせいだろう

Piggies ★

楽器の音が大きく力強くなり迫力が増した。今回のリミックスはジョージ・ハリスンの歌の魅力を最大限に引き出していると感じた。すべてのジョージ曲に当てはまるがこの曲が顕著

Rocky Raccoon

一音目のアコースティックギターの板が鳴る感じがよく伝わってくる。ポールの多彩なボーカルが堪能できる

Don't Pass Me By

実はすばらしいニュアンスで弾いているベースだが、音量が小さくてもったいない

Why Don't We Do It In The Road

ボーカルの音の歪み具合を上手にコントロールしている

I Will

ボーカルとリスナーの距離がぐっと近くなった。おそらく意図的なもの

Julia

ボーカルの口の動きが感じられるほどの繊細さ

Birthday

ベースとドラムが小さくなって曲のパーティー感が薄まってしまった。現代のパーティーはこのようにカジュアルであるということだろうか

Yer Blues

冒頭からボーカルにエフェクトをかけ過ぎ。元の録音が団子状態であまりリミックスの余地が無かったのかもしれない。全体のリバーブは他の曲と同様小部屋感を出している。おそらくリミックス全体に漂う小部屋感はこの曲が基準

Mother Nature's Son ★

今回のリミックスの中では珍しくボーカルに大きなリバーブをかけている。Dear Prudenceにならぶ宇宙的なサウンドになった

Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey ★

今回のリミックスの中では珍しくベースが大きい。声に大胆にエフェクトをかけることで迫力が増した

Sexy Sadie

最初のスネア2発で心を奪われる。ドラムが歯切れよく曲の推進力が増した。この曲のコーラスのリミックス方針が他の曲にも適用されたと想像している

Helter Skelter

前曲と同じようなコーラスのリミックス方針で、より壮大になった。ベースは角が取れたような音で、これらの点が影響して迫力不足の感がある

Long, Long, Long

ジョージのボーカルの魅力を再確認。前曲との音量差あり過ぎ問題は改善した

Revolution 1

何故ここまでボーカルとコーラスを強調したのだろう

Honey Pie ★

管楽器のニュアンスがよく伝わってくる。これはジャイルズ・マーティンの得意技と想像している

Savoy Truffle ★

今回のリミックスの集大成のような出来(ドラムとベースのニュアンス、管楽器の音の良さ、ジョージの歌の魅力、狂気を表現する迫力、・・・)

Cry Baby Cry

最初の激しいドラムのフィルのフレーズが思っていたよりかなり複雑。サビにストリングスが入っている??全体的には正常進化という印象

Revolution 9

リミックスしていない??技術的に難しかったのかもしれないが、この曲は作品性の多くの部分をミックス作業が占めているため、元々手を付けるべき領域では無いのかもしれない。現在この曲をリミックスできるのはオノ・ヨーコぐらいか

Good Night

『Sgt.~』のリミックスでも感じたが、ここまで生楽器が大編成になると音質向上はあまり感じられない傾向がある。ボーカルとコーラスの分離は良くなったが、その分リンゴ・スターが歌詞を間違えてコーラスが歌っている内容とズレていることが目立つようになった

後日スーパー・デラックス・エディション収録の他の音源についても書きたいと思います。