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2015年5月27日水曜日

詳報 ポール・マッカートニー日本武道館公演 (4)

ポール・マッカートニー日本武道館公演詳細レポート第4弾、本編終了までです。薄れゆく記憶との戦いになっています・・・。

49年ぶりの再会

「ちょっと聞きたいことがあるんだ。今夜ここにいる人の中でビートルズの最初の武道館公演に来た人、いる?」 (とりあえず「イェー」という観客多数)「そんなに沢山!?」(気を取り直して)手を挙げて見せて」客席でちらほらと手を挙げる人たち。今度は本当だろう。自分のすぐ前にも一人いた。
ステージに降り注ぐ照明が目に入り込まないよう手をかざしながらその様子を感慨深げに見るポール。笑顔がこぼれる。「やあみんな、また会えたね。久しぶり」手を振るポール。手を挙げてない人も拍手して49年ぶりの再会を祝福している。
このやり取りを見て思ったこと。
  • カンペを読まないと「武道館」のイントネーションが「ドカン」になる
  • 質問の意図が伝わるよう、ポールは英語の文法や発音を簡単にしようと心掛けていた
  • MCで「ビートルズ」と発言するのは珍しい気がする(「ウイングス」はあるが)
  • ポール自身、再会に感激しているようだった
「オーケー、では・・・この曲は・・・」
「ツギハ セカイハツコウカイ」客席からの拍手に満足そうなポール。
 今回の日本ツアー初日「Hope for the Future」演奏前と同じフレーズだ。同曲を演奏すると考え、「おいおいそれを言うなら武道館初だろ」と心の中でつっこんだ観客もいただろう。
 「うまくいくといいんだけど」

Another girl ※世界初披露

曲を認識→歓声を上げる→「アナザーガール」と一緒になって歌う を3秒間のうちにこなす今日の観客の反射神経には感服した。ビートルズ曲イントロクイズで勝負したくなった。
日本武道館とはゆかりが無いように思えるこの曲を今日初披露しようと思った理由はわからないが、強いて言えば今年が発表50周年ということか。サビの1回目の高音部はキツそうだったが2回目は無難にこなしていた。他の部分は低い音が多いので今のポールに合っていると思う。それもこの曲を選んだ理由だろうか。
曲の終わりを告げるラスティ・アンダーソンのリードギターはしっかり弾けており、ポールも満足そうにラスティを指さして親指を立てていた。このリードギターは原曲ではポールが弾いているのでラスティは余計にプレッシャーを感じたと思う。
「アリガトー ブドーカン」あえてそれ以上は口にせずすぐ次の曲の演奏を始めた。

Got To Get You Into My Life ※久しぶり

立て続けにサプライズ選曲。これまでOut Thereツアー(2013年~)では演奏されていなかった。幻の1980年ウイングス日本公演の1曲目であったであろうこの曲。ポールがそれを意識して選曲したとすればビートルズ日本公演よりウイングス日本公演の再現を重視したことになる。一説にはこの曲はマリファナのことを歌った(You=マリファナ)らしい。そいつのせいで日本でつらい思いをしたわけなので、今日この曲を高らかに歌うのは意趣返しとなったかもしれない。
ポールはイントロで手拍子を要求し、観客もそれに応える。サビのところは今日一番大きな声で歌っていたように思う。ポールのシャウトも軽快で、2010年代版ポールによく合っている。歌詞間違えなど物ともせず歌いきった。
「サンキュー」

Being For The Benefit Of Mr. Kite!


「オーケー、サンキュー、次の曲はサージェント・ペパーのアルバムから『フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト』」
サプライズな2曲と引き換えにAll Together Now、Lovely Rita、Eleanor Rigbyがごっそりカットされているが、元々この辺りは中だるみしていた感があるのでステージの流れにスピード感が出てかえって良かったと思う。それらをカットするならこの曲もカットしてくれ、という方もいそうだが、ビートルズのベーシストとして最盛期を迎えた頃のフレーズを堪能できるこの曲は個人的には見逃せない。今日演奏した中では最も複雑なベースを弾いていた。
レーザー光線の演出は狭い空間に凝縮されてより迫力があった。
「サンキュー、サンキューベリーマッチ、オーケー、では・・・」


Ob-La-Di, Ob-La-Da

観客が主役になる曲。「イッショニ ウタオウヨ」とポール言われれば精一杯歌うしかない。
「この曲は僕たちと一緒に歌ってね」(観客「イエー」)「みんなきっと上手だろうな」
ポールの「ウィ ラブユー」を合図に途中演奏が静かにになるところでは観客自身が会場全体の歌う声を体感できてより一体感が増した。そんな熱唱にポールも「イージャン、オー、イージャン」と高評価。
「ゼッコーチョー」


Back In The U.S.S.R.

通常ならここで演奏するはずの「Band on the Run」が飛ばされた。ビートルズだけのファンよりウイングスのファンを優遇するなら欠かせない曲のはずだ。結局ポールは自分が今やりたい曲をやっているだけなのだろう。喉の負担を回避したのかもしれないが。いずれにせよ「Ob-La-Di, Ob-La-Da」から直接「Back In The U.S.S.R.」へ展開するのはクールダウンする暇を与えず盛り上がれるので好意的に受け入れたい。
2階席からはめまぐるしく変わる床の映像の上で歌い踊るポールを堪能できた。 後半「Back In The U.S.」と3回繰り返す箇所でポールは北東、南、北西と順番に指差していた。アウトロのアドリブで「Back in the BUDOKAN」と言っていたし、ここが武道館であることを噛み締めているようだった。
 「オーライ、サンキュー」「とても素晴らしい観衆だ」(イェー)「後ろの人楽しんでる?」(イェー)「左の方はどう?」(イェー)「反対側は?」(イェー)「前はどうよ?」(イェー)

Let It Be

ポールの歌や演奏はいつもよりラフだったように感じたがその分情熱的だった。ラスティのギターソロも熱かった。なお、このギターソロが毎回アドリブなのは 原曲に対するジョージ・ハリスンのアプローチがそうだったからではないか。I Saw Her Standing Thereのギターソロにも同様のことが言えると思う。
曲の冒頭で自分の手元がひとりでに暖かく光りだした。辺りを見渡すと他の観客も同じだった。その時になって思い出したがほぼ全ての座席には日本側主催者により開場前にリストバンド型LEDライト(FreFlow:フリフラ)が置かれており、着席時にそれを身につけるよう指示されていたのだった。
一括制御により一斉に光り出したフリフラ。多くの観客がその光に後押しされるように手を上げ曲に合わせてゆっくりと振っていた。ポールも気づいたようで途中「light that shines on me(私に降り注ぐ光)」という歌詞のところではピアンの左手を弾かず自分に光が降り注いでいる様子を左手のジェスチャーで示していた。
演奏後、文字通り頭を抱えるポール。「ワォ」「みんなとってもクールだ、」(裏声で奇声をあげる)「光を見た時は歌えなくなりそうなくらいびっくりしたよ」(「Let It Be」とサビの所を一瞬弾き語って驚く様子を再現) 「サンキュー、きれいだ」

2013年日本ツアー最終日、「Yesterday」で会場全体が赤いサイリウム(これも日本側主催者が用意)を掲げたサプライズのバージョンアップ版となる今回の演出。「Yesterday」の時はポールの目立った反応は無かったが今回は時間を使って驚いたことを表現してくれた。全自動で一斉に光りだしたことに驚いたのはもちろんだろうが、充分に驚いてそれを表現するだけの心と時間の余裕が今日のポールにはあったのだと思う。

Live And Let Die

曲の冒頭の幻想的な薄暗い照明の中ポールはピアノの右上に置かれていた耳栓を手にとって耳に装着した。2013年には無かったこのくだりを追加したのは耳栓を装着する時間を稼ぐためかもしれない(=以前は耳栓していなかった??)。耳栓を外すのは曲が終わった後、「キコエナイ」のジェスチャーをする前なので耳栓を付けたまま1曲演奏したことになる。
観客皆固唾を飲んで身構えていた爆発はドーム公演と同様に炸裂し、火薬の臭いは2階席まで達した。その後の炎の演出もドーム公演と同等だったようだ。なお、ドーム公演では左右と後ろのスクリーンに炎を映し出して水増ししている。
日本武道館は火気の扱いに厳しそうなので(天井の日の丸に飛び火したら一大事)爆発や炎の演出は無いか縮小すると思っていたので爆音よりそっちの方に驚いた。ポールならではの特例なのかそれとも武道館側に黙ってやってしまったのか。終盤の爆発がいつもより一つ少なかったが手違いなのか、武道館との交渉の結果爆発に回数制限があったのかはわからない。爆発しない時も火柱は上がっていたので火薬は大きな音を出すためだけのものかもしれない。
 演奏後、ポールは北東スタンドに念入りに手を振ってからステージ中央のマジックピアノに移動した。
「サンキュー、サンキュー」「オッケー、ブドーカン」 

Hey Jude

ここまで喉を温存できていたせいか、ポールの歌い出しは今回の日本ツアーの中で最も安定していた。最後のリフレインを待つまでも無く、一緒に歌う人/歌わない人、手を振る人/振らない人、その誰もが一体となってポールを支えこの曲を神々しい領域にまで押し上げていたように思う。現地だからこそ味わえる不思議な感覚だった。
フリフラは今度は青系統に光り出した。 一つのリストバンドで複数の色が出せるようだ。途中からアリーナ席には日本の国旗、南スタンドにはイギリスの国旗が光で描き出された。席ごとに光る色があらかじめ設定されているらしい。フリフラを入場時に配布せず座席に置いていたのはこのためだ。それが開場が遅れた原因の一つという説もある。その説の真偽はさておき、フリフラにはこのようなことが技術的に可能&ポールがアンコール時に現地の国旗とイギリス国旗を振る、という二点から思いついた演出だろうが、労力に見合ったかは疑問だ。該当者が皆一様にリストバンドを掲げてくれないと図形にならないのに、事前に知らされていないので観客本人はその自覚が無い。ポールにこれらの光が国旗だと伝わったのか心配だ。さらに文句をつけるとすれば、いくらポールの国旗パフォーマンスからヒントを得たとはいえ、知らないうちに国旗を構成する一部にされた観客本人が国旗に対してネガティブなイメージを持っていた場合のことを考えると無邪気に楽しんでもいられない。

アリーナに日の丸、南スタンドにユニオンジャック
「ウタッテ、ダンシ」「ウタッテ、ジョシ」「ミンナデ」
曲の終盤で観客に歌わせる際のポールの指示が2013年公演では「ダンセイ/ジョセイ」だったが2015年公演は「ダンシ/ジョシ」に変わっていた。これはもしかしたらLGBTに配慮した結果かもしれない。 「ダンセイ/ジョセイ」より「ダンシ/ジョシ」の方が本人の気持ち次第というニュアンスが強いからだ。
演奏を終えるとバンドメンバーがステージ中央に整列。観客に対して一例し去って行った。
去り際にポールは「アリガトウ」
ポールの姿が消えると早速アンコールをねだる拍手が鳴りだした。