ポール・マッカートニー『Saturday Night Live(SNL)』シーズン51の最終回に音楽ゲストとして出演

2026年5月16日、ポール・マッカートニーがアメリカの長寿番組『Saturday Night Live(SNL)』シーズン51の最終回に音楽ゲストとして出演しました。ホストはウィル・フェレル。ポールにとって、通常回のSNL音楽ゲストとしては2012年以来の出演です。

テレビ本編で披露されたのは、新曲「Days We Left Behind」、ウイングス時代の「Band on the Run」、そしてエンディング中の「Coming Up」。放送終了後には「Help!」「Drive My Car」も演奏しました。

演奏だけではない

ポールはこの回で、演奏以外にも番組に参加しています。

  • ウィル・フェレルのモノローグ中に客席から登場
  • チャド・スミスとウィル・フェレルの「そっくりネタ」に参加
  • 整備士コント「What It Feels Like Talking to a Mechanic」に出演

特にモノローグでは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラマー、チャド・スミスがウィル・フェレルになりすまして登場します。チャド・スミスとウィル・フェレルは以前から「顔が似ている」ことで有名で、そのネタをSNLがそのまま使った形です。

そこへポールが客席から声をかけ、「チャド、何をしているんだ?」という流れになります。

チャド・スミスはネタと演奏をつなぐ

チャドはモノローグでは「ウィル・フェレルに似ている男」として笑いを作り、その後はポールの演奏で実際にドラムを担当します。

ポールの通常バンドで長年ドラムを担当してきたエイブ・ラボリエルJr.とは質感が違いますが、SNLというテレビ番組の特別編成としては、非常に納得感のある起用でした。

もう一人、イングリッド・マイケルソンは今回、バック・ボーカルとして参加しました。

普段エイブ・ラボリエルJr.がドラムだけでなくバック・ボーカルでポールを支えていることの証となりました。エイブ=チャド+イングリッドということです。

新曲「Days We Left Behind」初披露

本編最初の演奏曲は、新作『The Boys of Dungeon Lane』からの「Days We Left Behind」でした。

この曲は、ポールが過去を見つめ直すタイプの曲です。ステージ後方には若き日のポールや、クオリーメン時代を思わせる写真が映し出され、歌詞の世界と視覚演出が結びついていました。

若き日のリヴァプールを振り返る曲を、83歳のポールが現在の声で歌う。そこには説得力があります。

「Band on the Run」で観客の期待に応える

続く「Band on the Run」は、ウイングス時代を代表する大曲です。

「Band on the Run」は過去にもSNLで演奏されていますし、ポールの定番中の定番です。そのため、一部のファンからは「もっと珍しい曲でもよかったのでは」という見方も出ていました。

これは「元ビートルズのポール」ではなく、「ビートルズ後も巨大なキャリアを築いたポール」を示す選曲だと思います。

「Coming Up」はSNL史への自己引用

エンディング中に演奏された「Coming Up」は1980年にポールがSNLに登場した際とも結びつく曲です。

この曲は、ポールのキャリアの中でも少し特殊な位置にあります。ビートルズでもなく、ウイングスでもなく、宅録的・実験的なソロ感覚を持った曲です。

後日公開された「Help!」「Drive My Car」

当初、本編だけを見ると今回のポールはビートルズ曲を演奏しなかったようでした。新曲、ウイングス、ソロ。そこにあえてビートルズを入れなかったのだ、と。

しかし、放送終了後に「Help!」と「Drive My Car」が演奏されていたことがわかりました。


整備士コント

演奏以外では、ポールは整備士コント「What It Feels Like Talking to a Mechanic」にも出演しました。

このコントは、車の修理工場で整備士が専門用語のような意味不明な言葉を並べ、客が困惑するという設定です。そこにポールが主任整備士のような立場で登場し、さらに意味不明さを増幅させます。

過去のSNL出演と比べると、今回は「総合出演」に近い

ポールとSNLの関係は長く、1980年の「Coming Up」、1993年のゲスト出演、2010年・2012年の本格的な音楽出演、2015年のSNL40(周年)、2025年のSNL50(周年)など、複数の重要な接点があります。









2025年のSNL50では、ポールは『Abbey Road』終盤のメドレーを歌い、番組の歴史的祝祭を締めくくる役割を担いました。これは「ビートルズ神話の象徴」としてのポールです。

それに対して、2026年のSNL出演は少し違います。ビートルズの象徴としてだけではなく、新作を出す現役アーティストとして、ウイングスとして、ソロ・アーティストとして、さらにコントにも乗るテレビ出演者として登場しました。

ファンの評価

今回の出演に対する肯定的な評価としては、「83歳でなお新曲を携えてSNLに出ること自体が驚異的」「新曲の回想的な雰囲気がよかった」「チャド・スミスやウィル・フェレルとの絡みが楽しかった」という声が目立ちます。

一方で、「声の衰えが気になった」「Band on the Runは定番すぎる」「もっと珍しい曲を聴きたかった」という反応もあります。

どちらも理解できます。ポールを神格化しすぎれば、現在の声の現実を見落とします。しかし、声だけを取り出して評価すれば、今回の出演が持っていた構成の面白さを見落とします。

ポールはまだ現役であり続けている

2026年5月のSNL出演は、ポール・マッカートニーの現在をかなり正直に映したステージでした。

これは「昔の栄光をなぞっただけ」の出演ではありません。むしろ、ポール自身が自分のキャリアを編集し直し、SNLというテレビの場に合わせて再配置した出演でした。

その意味で、このSNL出演は「老いたポールを見た夜」ではなく、「ポールが自分の歴史をもう一度編集して見せた夜」だったと言えるでしょう。

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