「All You Need Is Love」担当エンジニア ジョン・レノンの斬新な行動を語る


ビートルズはほとんどの楽曲をアビーロードスタジオで録音しましたが、先約があった場合などに外部の独立系スタジオを使用することがありました。その中の一つ、オリンピック・スタジオでは1967年の5~6月に「Baby, You're a Rich Man」「All You Need Is Love」というシングル両面を構成した2曲を録音しています。
オリンピック・スタジオでのジョージ・ハリスンとエリック・クラプトン(1969年)
今回、当時のエンジニアを務めたエディ・クレイマーがGuitar World 誌のインタビューに応えました。彼はLed ZeppelinやKissを手がけたことでも有名です。

Interview: Engineer Eddie Kramer on Recording The Beatles' "All You Need Is Love"
http://www.guitarworld.com/interview-engineer-eddie-kramer-recording-beatles-all-you-need-love

この録音については書籍「ザ・ビートルズ・レコーディング・セッション」にも記載ありますが、今回は当事者のインタビューとあって同書にも書かれていなかった事実を語っています。要約しますと
  • 当時のオリンピック・スタジオは先鋭的で、世界最高の機材を揃えていた。
  • スタジオとしては駆け出しのオリンピック・スタジオにとってビートルズの来訪は大きなチャンスだった。アビーロードスタジオに負けていないところを証明したかった。
  • ビートルズのセッションは21時から深夜3時まで行われた。テープを操作するだけでなく、マイクをしつらえたりして皆が快適になるよう取り計らえるのは光栄だった。
  • 当時は映像系の音楽も手掛けており、様々な楽器がスタジオ内に残されたままになっていることがしばしばだった。
  • スタジオ内を歩き回っていたジョン・レノンが置き去りにされていたクラヴィオリンに興味を持ち、「Baby, You're a Rich Man」に使用することを決めた。
  • クラヴィオリン(Clavioline)はアナログシンセサイザーの先駆けであり、オーケストラ楽器の音を電子的に再現しようと試みたものだった。デル・シャノンの 「Runaway」(1961)、 トルネードス「Telstar」(1962)に使用されている。
  • 「Baby, You're a Rich Man」の録音は成功した(だから後日再びオリンピックスタジオを使用した)。
  • 「All You Need Is Love」はテレビの生放送の場で録音する予定だったが、不測の事態に対応するためベーシック・トラックをオリンピック・スタジオで録音することになった。
  • コントロールルームに座ったジョン・レノンはギターを弾きながら「All You Need Is Love」を他のメンバーに教えた。
  • その後ジョンはコントロールルームに残り、他のメンバーはスタジオで演奏した。
  • ジョンはトークバックのマイク(通常はスタッフと演奏者が会話するために使う)に向かって歌い、他のメンバーはそれをヘッドフォンで聴きながら演奏した。

隣に座ったジョンが歌うのを聴くのはどんな気持ちだったでしょうね。
それにしても楽器録音中にトークバックを使ってガイド用に歌ったというのは斬新です(この歌は録音されません)。通常こういった場合はあらかじめギター弾き語りなどで仮に録音したテープをヘッドフォンで聴きながら演奏するのがセオリーだと思います。一方、ジョンが採用した手法のメリットとしてはリズムをバンドが主導して作り上げられる、歌とバンドの相乗効果という一発録りの良さを残しつつ歌だけ後で分離して最良のものを録音できる、といったところでしょうか。
それとも単にジョンは歌を練習したかっただけなのかもしれません。「All You Need Is Love」は歌い回しがとくに難しい曲ですので。




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