「ザ・ビートルズ・アンソロジー」30周年記念新装&拡大版2025年11月リリース

ビートルズが約30年ぶりに『アンソロジー』プロジェクトを再始動します。2025年秋、ドキュメンタリー映像シリーズ・音源コレクション・公式書籍の三位一体で『ビートルズ・アンソロジー』が現代に蘇ります。

アンソロジー・コレクション【8CD】【公式ストア限定盤】

  • 映像:ディズニーの配信プラットフォームで、新規映像を加えた全9話版として11月26日配信開始
  • 音源:1990年代に発売された『アンソロジー』3部作に、新たな第4巻を加えた計4部構成(計191曲)で11月21日世界発売
  • 書籍:初版刊行25周年を記念してソフトカバー版が10月14日発売

THE BEATLES ANTHOLOGY Award-winning Documentary Series, Music Releases and Iconic Book (The Beatles公式サイト)

『ザ・ビートルズ・アンソロジー』がこれ以上ない究極の形で復活。同時に、映像・音楽・書籍のすべてを含む世界規模のリリース・キャンペーン展開が決定!(The Beatles日本公式サイト)

本記事では、この2025年版『アンソロジー』の内容を1990年代版との違いに着目して整理し、インターネット上のファンの反応や考察も併せて紹介します。


映像:ドキュメンタリーシリーズ(9話・Disney+配信)

映像面での『アンソロジー』最大の新要素は、第9話となる完全新作エピソードの追加です。この新エピソードには1994~1995年にポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの3人(いわゆる“スリートルズ”)が『アンソロジー』制作のために再集結していた頃の未公開オフショット映像が収録されるとのことです。DVD版の特典映像を拡大した感じでしょうか。オリジナル版(1995年放映・全8話)はビートルズ自身が自らの歴史を語る形で進行しましたが、新エピソードではAnthology制作時におけるビートルズの「現代」(1990年代半ば)の姿が描かれることになります。

1995年当時、3人はジョン・レノンのホームデモ音源を元にした新曲「Free as a Bird」「Real Love」を共同制作し、またスタジオでのジャム演奏も行いました。そうしたアンソロジー制作舞台裏が映像でどこまで見られるのか、ファンの注目が集まっています。

オリジナル版映像のリマスターも期待されます。ピーター・ジャクソン監督率いるWingnut FilmsとPark Road Postが修復を担当し、映像画質は当時のSD画質/VHSから最新の高精細フォーマットへ向上すると見られます。

音声面でもジャイルズ・マーティン(ジョージ・マーティンの息子)が大半の楽曲パートを新規ミックスし、当時よりクリアな音質で映像を楽しめるよう調整されています。映像をリマスター(基本的に完成品を手直し)、音声はリミックス(素材まで戻って再構成)は近年のビートルズ映像作品の定番です。

配信はDisney+独占、11月26日より順次公開予定です。

1995年当時はテレビ放映後のVHS/DVD発売という流れでしたが、今回は初公開からいきなりストリーミング配信となる点が時代の変化を感じさせます。なお物理メディア(Blu-ray/DVD)での発売発表は現時点でありません。「ザ・ビートルズ:Get Back」は配信後に物理メディアで発売されたので今回も期待したいです。


音源:アンソロジー・ミュージックコレクション(Vol.1~4)

音楽面では、これまで3部作だった『アンソロジー』アルバムに新たな第4巻が加わることが最大のトピックです。新発売される 『The Beatles Anthology (2025 Edition)』 は、オリジナル版『Anthology 1~3』の全曲(アウトテイク、ライブ、デモ音源など)をジャイルズ・マーティンが2025年最新リマスターした上で、新編集の『Anthology 4』を追加したボックス・セットとして登場します。全4巻の収録曲数は合計191曲にも及び、1958年の初期録音から2023年発表のラストシングル「Now And Then」まで、ビートルズの音楽的軌跡を網羅する内容です。

Vol.1~3については曲目構成に変更はなく、「Free as a Bird」や「Real Love」も当時リリースの1995年版/1996年版ミックスのまま収録されます。一方で、新たなVol.4には13曲の未発表音源と、近年リリースされた各アルバムのスペシャル・エディションから厳選された17曲が収められます。スペシャル・エディションはまだ完結していない(『Rubber Soul』以前が出てない)のになぜスペシャル・エディションから再収録したのか不可解です。

Anthology 4 収録曲

I Saw Her Standing There (Take 2)
Money (That’s What I Want) (RM7 undubbed)
This Boy (Takes 12 and 13)
Tell Me Why (Takes 4 and 5)
If I Fell (Take 11)
Matchbox (Take 1)
Every Little Thing (Takes 6 and 7)
I Need You (Take 1)
I’ve Just Seen A Face (Take 3)
In My Life (Take 1)
Nowhere Man (First version – Take 2)
Got To Get You Into My Life (Second version – unnumbered mix)
Love You To (Take 7)
Strawberry Fields Forever (Take 26)
She’s Leaving Home (Take 1 – instrumental)
Baby, You’re A Rich Man (Takes 11 and 12)
All You Need Is Love (Rehearsal for BBC broadcast)
The Fool On The Hill (Take 5 – Instrumental)
I Am The Walrus (Take 19 – strings, brass, clarinet overdub)
Hey Bulldog (Take 4 – instrumental)
Good Night (Take 10 with a guitar part from Take 5)
While My Guitar Gently Weeps (Third Version – Take 27)
(You're So Square) Baby I Don't Care (Studio jam)
Helter Skelter (Second version – Take 17)
I Will (Take 29)
Can You Take Me Back? (Take 1)
Julia (Two rehearsals)
Get Back (Take 8)
Octopus's Garden (Rehearsal)
Don't Let Me Down (First rooftop performance)
You Never Give Me Your Money (Take 36)
Here Comes The Sun (Take 9)
Something (Take 39 – instrumental – strings only)
Free As A Bird (2025 mix)
Real Love (2025 mix)
Now And Then

『Anthology 4』では既出のシングル2曲「Free As A Bird」「Real Love」は、プロデューサーだったジェフ・リン自らによる2025年最新リミックス音源にアップデートされました。

ジェフ・リンは当時、ジョンのカセット音源のピアノ伴奏に他のビートルズの演奏・歌を重ねる形で新曲を完成させましたが、今回はAI技術を用いたデミックス処理でジョンのボーカルを分離・クリーンアップし、よりクリアな音質で再現しています。

「Free as a Bird」2025年ミックスは各種配信サイトですでに聴けます。基本的には2015年の『ザ・ビートルズ 1+』のミックス(演奏や歌が一部1995年版と違う)を基準にしているようです。

今回ミュージックビデオがAIで4K画質に補間されました。なぜか音は1995年ミックスのままです。このビデオ内で多用されている合成は現代の技術でさらにクオリティ上げられそうですが、今回は完成品をそのままアップスケールしただけのようです。細部がAIによる想像で補われていて変な感じになっているところもあります。

『Anthology 4』は2023年に発表された「Now And Then」で終わっています。この曲は1970年代にジョンが残したデモから生み出された「ビートルズ最後の新曲」であり、本来1995年のアンソロジー企画で制作されかけながら未完成に終わっていたものです。30年越しに完成した「Now And Then」が今回アンソロジーの一部に正式に組み込まれたことで、「Free As A Bird」「Real Love」と合わせて“幻の3部作”がコンプリートした形になります。

「Now and Then」についての甲虫楽団ブログの記事は→こちら

Vol.1~3にはマーク・ルイソン執筆の当時の解説がそのまま再現され、Vol.4にはケビン・ハウレットによる新たな曲解説と、故デレク・テイラー(ビートルズ元広報担当)による1996年当時の未公開インタビューを基に構成した序文が掲載されます。また180グラム重量盤LPレコード全12枚組のボックスも同時発売され、こちらも内容はCD版と同様です。

ビートルズ公式オンラインストア限定で、ボックス購入者には12インチ判やCD判のフォト・アート・カード(メンバー写真)4枚セットが数量限定で付属する特典も用意されています。

日本の公式オンライストアではさらにTシャツ付きのセットが販売されます。下記4商品(フォト・アート・カード付き)はオリジナル配送箱で配送されるそうです。Tシャツは単体発売もされます。

  1. アンソロジー・コレクション【セット販売特別価格】【THE BEATLES STORE限定商品】】【8CDボックス+Tシャツ(Black)】【輸入国内盤仕様/完全生産限定盤】
  2. アンソロジー・コレクション【セット販売特別価格】【THE BEATLES STORE限定商品】】【12LPボックス+Tシャツ(Black)】【輸入国内盤仕様/完全生産限定盤】
  3. アンソロジー・コレクション【8CDボックス】【THE BEATLES STORE限定盤】【輸入国内盤仕様/完全生産限定盤】【CD】【SHM-CD】
  4. アンソロジー・コレクション【12LPボックス】【THE BEATLES STORE限定盤】【直輸入盤仕様/完全生産限定盤】【アナログ】

書籍:『ザ・ビートルズ・アンソロジー』25周年記念版

映像・音源と並ぶ『アンソロジー』プロジェクトの柱として、公式書籍『ザ・ビートルズ・アンソロジー』の25周年記念エディションが発売されます。オリジナルの書籍版『Anthology』は2000年に刊行され、日本語版も含め世界的なベストセラーとなりました。メンバー自身が語ったインタビューや証言で綴る“ザ・ビートルズ自身による自伝”ともいえる大型本で、当時は大判ハードカバーの豪華仕様でした。今回発売される25周年版はソフトカバー(ペーパーバック)版となり、ページ数は368ページと内容は基本的に初版と同一とみられます。現時点で公表されている限りでは新たな章や写真追加などは特に告知されていません。今のところ日本版の発売は発表されていません。

熱心なファンの間では書籍版の再刊行を歓迎する声が多い一方で、「もしテキストやレイアウトが当時のままだとすれば改善の余地があるのでは?」との指摘もあります。実際、一部の読者からは初版について「見開き配置の写真がノド(綴じ部分)で見づらい」「手書きメモが写真上に重なって判読しにくいページがある」「巨大すぎて読みづらい」といったレイアウト面の不満が聞かれていました。


ファンの反応・考察あれこれ

今回の『アンソロジー2025』発表に対し、ビートルズ・ファンの間では様々な議論が巻き起こっています。まず、多くの往年のファンにとってアンソロジーは特別な思い出のあるプロジェクトです。1995年当時、テレビで次々と放送されたドキュメンタリーや、未知のアウトテイク集が詰まったCDの衝撃によって「一気にビートルズにのめり込んだ」という人も少なくありません。

僕が「Free as a Bird」を初めて見た2〜3日後が大学の学園祭だったのでビートルズコピーバンドで「Free as a Bird」を演奏した思い出があります。当時はジョージが歌っていると気付かず、2箇所ともポール役が歌っていました。

そうした世代のファンからは「またアンソロジーが世に出るなんて夢のようだ」「2025年になっても最高のバンドから未体験の作品が届けられるなんて嬉しい」と純粋に興奮を示す声も聞かれました。特に映像シリーズがデジタルリマスターで甦る点は歓迎されており、「当時VHSで見ていた映像を高画質で見直せるのは感涙もの」「若いファンにもぜひ観てほしいドキュメンタリーだ」といった期待のコメントも多いようです。

一方で、コレクター層・マニア層からは批判的な見解も少なからず出ています。最大の論点はやはり音源Vol.4の収録内容でしょう。「新曲や未発表素材が思ったより少ない」「結局また既出テイクの詰め合わせではないか」との指摘が目立ち、発表当初から「未発表わずか13曲は物足りない」「過去のボックスセット購入組には新味が乏しい」と辛口の意見が出ています。かつて話題になった「Carnival of Light」(1967年に録音され未だ未発売の実験曲)が今回も収録されないことに落胆する向きもあり、「またしても幻のままか…」と残念がるコメントが散見されました。

また、映像がDisney+独占配信となった点への不満も多いです。「結局ゲット・バックやレット・イット・ビーの時と同じくディズニーに持っていかれた」「物理メディアで手元に置きたいのに…」といった声が挙がり、「このままだと海賊版に手を出す人も出るのでは」と心配する意見もありました。Apple社(ビートルズの著作管理元)が公式に映像ソフトを出さない方針なのかは不明ですが、ファンとしてはできれば高品質のBlu-ray版を期待したいところです。

興味深い考察としては、「『Now And Then』は本来アンソロジー30周年に合わせて発表する予定だったのではないか」というものがあります。2023年に突然“ビートルズ最後の新曲”としてリリースされた「Now And Then」ですが、あるファンは「本来は2025年にアンソロジーの目玉として出す計画だったのを、ポールが待ちきれず完成次第リリースしたのでは?」と推測しています。

このように否定的な意見も目立つ一方で、「それでも結局は買ってしまうんだよね…」というファン心理も正直なところでしょう。

若い世代やライト層にとっては、90年代当時をリアルタイムで体験していない分、新鮮なコンテンツとしてアンソロジーに触れられる好機とも言えるでしょう。実際、公式発表でも「アンソロジーは過去についての作品だったが、新版によって現在・未来においてもその存在感が示される」と謳われており、ビートルズの物語が改めて次の世代へ語り継がれていく意義が強調されています。


甲虫楽団からお知らせ

ビートルズ中後期サウンド追求バンド「甲虫楽団」(こうちゅうがくだん)が今年発売60周年を迎えるビートルズのアルバム『Help!』『RubberSoul』の全曲を演奏するワンマンライブのお知らせです。今年この2アルバムのスーパー・デラックス・エディションが発売されると思っていたのですが当てが外れました…。

タイトル:やっちゃえ甲虫〜リリース60周年記念『Help!』『Rubber Soul』全曲通しライブ
日時:2025年10月18日(土)11:15開場 12:00開演 15:00終演予定
場所:Live in Buddy(東京・練馬区)西武池袋線 江古田駅 徒歩1分
チャージ:3000円(1ドリンク込)
全席自由

ご予約は以下フォームより送信お願いいたします。
「やっちゃえ甲虫〜リリース60周年記念『Help!』『Rubber Soul』全曲通しライブ」ご予約フォーム

ライブについて詳しくは↓

『アンソロジー・コレクション』8CDボックス (完全生産限定盤)(SHM-CD)


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