書籍「MUSIC LIFE 1970年代ビートルズ物語」2017年3月29日発売

ビートルズのメンバーの1979年までのソロ活動に注目した書籍「MUSIC LIFE 1970年代ビートルズ物語 (シンコー・ミュージックMOOK) 」が2017年3月29日に発売されました。題名を見るとビートルズ解散後のディスコグラフィーを想像しますが、それだけではありませんでした。
表紙はアルバム「Let It Be」のパロディになっている
MUSIC LIFE 1970年代ビートルズ物語<シンコー・ミュージック・ムック>

まず、冒頭のカラーページはポール・マッカートニーの「ワン・オン・ワン ジャパン・ツアー2017」の記事から始まります。まだ情報が少ないせいか内容は薄いです。2点記述に誤りもありました。現バンドメンバーは「2012年」からとありますが、「2002年」の間違いです。「You Won't See Me」が今回のツアーで初登場とありますが、2004年のツアーでも演奏しています。
同じ執筆者による次のリンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド日本公演2016の記事は素晴らしかったです。マニアックに臨場感溢れるレポートでした。他の複数人によるレポートも掲載されています。実際に参加された方が読むにもお勧めです。
続いては「写真で振り返る2016年のビートルズ」で昨年のビートルズ関係者の写真を1ページ1枚ずつ紹介しています。その後ビートルズが解散したのはいつか?諸説を明らかにする記事に続いて、ビートルズ現役時代のソロ活動を整理し、ようやく本題に入ります。

まずは1970年代の活動についてメンバーごと1ページの記事と1ページの写真を使って見開きでまとめています。この構成はわかりやすいと思いました。
その後はメンバー4人の活動を対比させたり関連付けたりしながらじっくり解説しています。端々に当時のメンバーの感情や関係性に触れているのがドラマチックです。「テーマ別研究」で当時の音楽シーンにおける位置づけ、ステージ衣装、日本との関係について掘り下げているのはここ数年のビートルズ関連書籍のトレンドに乗っています。
まとめは1970年代を1年ずつ出来事や音楽作品で整理して終わっています。メンバー全員現役のまま、大麻所持で逮捕されることも凶弾に倒れることもありません。このまま永遠に続くかのような、いつかビートルズが再結成するかのような余韻を持たせた夢のある終わり方です。

本書と同じ邦題「1970年代ビートルズ物語」を持つリンゴ・スターの「Early 1970」の世界観に通ずるものがあります。

それ以降の記事にも目が離せません。「『ザ・ビートルズ史』著者 マーク・ルイソン インタビュー」では『ザ・ビートルズ史』を読み込んだ後の深いインタビューになっています。ジョージ・マーティンの不倫(のちにそのまま結婚)がビートルズのプロデューサーになった一つのきっかけとなった、という説は『ザ・ビートルズ史』の目玉の一つですが、これによりマーク・ルイソンはジョージ・マーティン夫妻と断絶することになったというのは壮絶なエピソードです。
今回のインタビュー記事を読んで、マーク・ルイソンは膨大な資料を詰め込んでそれらのつじつまを合わせていくことによって脳内に仮想的なビートルズを構築するに至っていると感じました。彼にはビートルズの面々の当時の様子が映像で明確にイメージできるそうです。もはや人工知能です。是非彼を監督としたビートルズの再現映画を制作してほしいです。
マーク・ルイソンは星加ルミ子さんを重要人物として認識しており、インタビューを希望していました。本書は星加ルミ子さんが編集長を務めていた雑誌「MUSIC LIFE」名義ですので近いうちに夢の対談が実現するかもしれません。

本書は2016年を振り返って締めくくっています。映画『Eight Days a Week』に警視庁が所蔵しているビートルズ日本公演の映像が使用されるまでの経緯が興味深かったです。


ビートルズ解散後のソロ活動に興味が無い人にこそお勧めな書籍です。少なくとも1970年代が終わるまではビートルズは現役感を保っていたことがわかります。1970年にビートルズが終わってしまって悲しいと思っている方にとってその後の10年間がビートルズのカーテンコールのように感じられて心が救われるかもしれません。

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