新発見:1966年6月25日ビートルズ西独エッセン公演のサウンドボード音源が公知に

1966年6月25日のビートルズの高音質ライブ音源が2025年6月にYouTubeに公開されました。

背景 – 幻のライブ録音の出現

1966年6月25日、ビートルズ(ジョン・レノン〈John Lennon〉、ポール・マッカートニー〈Paul McCartney〉、ジョージ・ハリスン〈George Harrison〉、リンゴ・スター〈Ringo Starr〉)は当時の西ドイツ・エッセン市グルガハレで2回のコンサート(午後5時と夜9時公演)を行いました。このエッセン公演はドイツの音楽誌「BRAVO」主催によるブリッツ・ツアーの一環で、終演後には記者会見も開かれています。

当日のセットリストは「Rock And Roll Music」や「She's A Woman」から始まり、「If I Needed Someone」「Day Tripper」「Baby’s In Black」「I Feel Fine」「Yesterday」「I Wanna Be Your Man」「Nowhere Man」「Paperback Writer」「I’m Down」といった当時の定番11曲が演奏されました。

ビートルズが同じ曲目で2公演行った事実は以前から知られていましたが、当日の演奏を収めた高音質の録音が存在するとは長らく思われていませんでした。ところが約60年後の2025年6月、このエッセン夜公演の音源が突然YouTube上に公開され、世界のファンを驚かせました。公開された音源はミキシング卓から直接録音されたサウンドボード音源で、ビートルズ1966年ツアーでは極めて珍しい高いクリアさを持っています。

録音の存在と未公開だった理由

この音源はごく最近まで特定のコレクターだけが秘蔵し「ホーダー(収集家)」の手元に眠っていたようで、公式にもファンの間にも共有されてきませんでした。実際、ファンコミュニティの一部ではこのテープの噂こそ囁かれていたものの、入手困難な私蔵音源とされてきました。

エッセン公演については、当日午後の第1回公演の模様を録音した不完全なオーディエンス録音が辛うじてファンの間で出回っていました。


2025年になぜ突然公開? – 流出の経緯

2025年初夏、欧米のビートルズ専門ブートレッグ・レーベルであるTMOQおよびHMCが、このエッセン公演音源を入手し近くCD化すると報じられました。その音源が早速YouTubeに流出したわけです。 この音源流出劇の背景には、昨今のビートルズ未発表ライブ音源を取り巻く状況も関係しているでしょう。2023年には1963年4月の英国ストウ校でのライブ録音が60年越しに発掘され、大英図書館に収蔵されるなど話題となりました。

新発見:1963年4月4日ビートルズが男子校で演奏した音源が60周年記念で公知に(甲虫楽団ブログ)

ストウ校音源の公開時にビートルズ研究家マーク・ルイソン氏が「まだ眠っている録音が他にもあるかもしれない」と語っていましたが、その言葉通りビートルズの未公開ライブ音源が次々世に出始めているのです。

歴史的・音楽的意義 – ビートルズ最後期ツアーの貴重な記録

今回明らかになったエッセン公演音源は、ビートルズのライブ史において非常に価値ある記録だと評価されています。1966年のドイツ・日本・フィリピンを巡るツアーはビートルズにとって事実上最後のワールドツアーであり、そのわずか2ヶ月後の1966年8月29日サンフランシスコ公演を最後に彼らはコンサート活動から引退しました。エッセン公演は「ビートルズが永遠にツアー活動を止める直前」のステージであり、その演奏を克明に伝える録音が得られた意義は大きいです。

音質と演奏内容の評価

今回公開されたエッセン公演音源の音質は1960年代のビートルズライブ録音としては破格に良好です。サウンドボード録音(会場に流すためにマイクの音を通す機材から直接録音)という性質上、会場の歓声よりも演奏そのものが前面に捉えられており、特にジョンやポールのボーカルはくっきりと耳に届きます。当時の簡易な機材でここまで明瞭に録れたこと自体が驚きといえます。最新のAI技術でリミックス処理されたバージョンもブートレッグで用意されると思われます。

この公演の数日後には日本公演となるわけですが、音源を聞くと日本公演よりはかなり気合が入っている印象です。メンバー各人がドイツ語(現地語)でMCをしており、ビートルズとドイツの親密な関係がうかがい知れます。デビュー前に彼らはドイツのハンブルクで出稼ぎ演奏をしていましたし、1964年にはドイツ語でシングルをリリースしたりしていましたが、ブレイク後のドイツ公演はこの1966年だけだったのでこのツアーへの思い入れは強かったと思います。

 今回のエッセン公演音源の登場により、ビートルズの歴史に新たな1ページが加わりました。公式にはリリースされていないものの、ファンの間では早くも音源の解析や評価が進んでいます。半世紀以上封印されていた音が蘇った意義は計り知れず、今後もこのような眠れる音源が発掘される可能性に期待が高まります。

コメントを投稿

0 コメント