ザ・ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』50周年記念エディション 発売記念イベント(タワレコTV)
30分以上にわたって、今年84歳の経験と知識を惜しげもなく披露してビートルズについて語りました。非常に音楽的な深い話でした。以下に趣旨をまとめます。
ビートルズ日本公演での前座
- なぜドリフターズが前座に選ばれたか未だに疑問。当時「他のグループが忙しかったんだよ」と笑いあっていた。事情はいかりや長介しか知らなかったと思う。
- ビートルズには会えなかった。バックステージでは姿も見られなかった。自分たちも楽屋から出ることも制限されていた。ドリフターズのマネージャーがビートルズの大ファンでドリフターズとビートルズを会わせようとしたが却下された。どうして会えなかったのかわからない。前座の自分たちですら会えなかったので、あのとき日本人でビートルズと会えたのは誰なんだろう。聞いていない(編注:ホテルで加山雄三さんは会っている)。
- ステージを見たいといったら主催者側から許可が下りず、アリーナのドアを勝手に開けて壁に寄りかかりながら正面から見た。うれしかった。
- 当時ドリフターズは自分(高木ブー)がA Hard Day's Nightを歌っていた程度でとくにビートルズの曲は演奏していなかった。でもA Hard Day's Nightじゃだめだろう、ドリフターズはギャグになっていなきゃダメだろうということでLong Tall Sallyを演奏した。仲本(工事)が歌っていた。恥ずかしいことに完璧じゃなかった。ドラムを貸してくれないのでステージの端っこで加藤(茶)がちょこんとやっていたし、荒井注はシンセをやっていたがそれも無いからギターを弾いていた。ドリフターズもビートルズもメンバーが死んじゃってもう絶対共演できないから、ドリフターズというグループとしてあれはすごかったと思う。自慢できる。
- ビートルズの前座で演奏した際のギターはギブソン。当時は高嶺の花でドリフターズに入ってやっと買えた。その後さらにグレードが上のギターを手に入れるために一度売却したが、そのギターが高木ブーの元にあることを重要視する人が買い戻してくれ実質タダで再び手にした。
- もうギターは弾けない。ウクレレと違って6弦だしスチール弦だし。このギターは家に飾って、あの時のビートルズの空気を吸っていたかなと思うくらい。
ビートルズ日本公演前座で弾いたギター |
※当時高木ブーさんは6歳年齢をサバ読んでいた
「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」について
- ビートルズ来日の翌年にアルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」が出た当時のことは覚えていない。
- ニセモノのビートルズが来日したときに招待されて武道館に行った。アリーナに人は入れず、当時と同じくおまわりさんが300人いた。当然エキストラだが警察官の制服は現代的だった。二部構成で一部はビートルズ公演の再現。二部のステージでSgt.Pepper'sの衣装を着ていたのを覚えている(編注:1995年4月1日のBootleg Beatles来日公演か?)。音源は今回の50周年記念盤が出るまで聴いたことが無かった。
- 今回「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」を初めて聴いた感想は「こりゃすげぇ」。昔のビートルズの形を期待したらダメ。全く違う。子供とオヤジぐらい違う。ちっちゃなスケールで4人でライブをやっていたのとはまったく違う。もっと大きなスケールで見てほしかったのだろう。ビートルズがこれをやりたいと思った気持ちもよくわかる。音の幅がいい。もはやオーケストラだと思う。強引に誰かに聴かせられても自分で買って聴いてもいいけどぜひ聴いてほしい。昔のビートルズがよかったという人もいるかもしれないが、このアルバム全13曲の中には昔のビートルズ風の曲もある。全部初めから終わりまで聴くとビートルズがこうなったのは当たり前かな、しょうがないのかなと思えるはず。僕はいいと思う。僕らが当時ビートルズと初めて出会って「すげぇなあ」と思ったのと同じくらい。ぜひとも聴いてほしい。聴いていいと思う。聴いてからいろいろ考えればよい。
ビートルズ考
- 昨日も昔のビートルズの映像を見ていたけど無駄がない。メンバーそれぞれ違う受け持ちをそれぞれちゃんとやっている。ビートルズがあんなに良くなったのは曲の良さもあったけど演出の勝利だと思う。
- リンゴ(・スター)が隠れないよう一段高い場所で演奏している。ポール・マッカートニーが左利きだったというのもいい。ジョージ・ハリスンとマイクに向かい合ってもネックが重ならずにバランスが良い。TVを考慮した演出だと思う。
- ビートルズはロックグループであるけどコーラスグループだと思っている。ビートルズは常に誰かが歌ってハーモニーを加えている。ポールの高いパートは魅力。ソロシンガー+バックバンドではなく4人に無駄がない。
- 今のバンドはみんな衣装がバラバラ。当時はビートルズもドリフターズもユニフォーム着て四人が公平に引き立っていた。これは僕らの時代の感覚なのかな。もう今の感覚とは合わないかもしれないが。
- ジョン・レノンのギターとリンゴ・スターのドラムのコンビネーションが良い。ビートルズの中で誰がスターか?についてドリフターズ内で議論したことがある。僕(高木ブー)は当初リンゴ・スターだと言った。いたずらにオカズを叩かずにリズムを取る。その後自分の結論としてはジョージ・ハリスンとなった。歌の間にジョージのギターが入る。これがビートルズサウンドだ。
- ポール・マッカートニーは歌手だ。ベース弾きではない。主旋律に対するハーモニーがベースのフレーズに入っているので彼のベースは普通と違う。これにより3人の歌声にさらに幅が出る。この無駄の無さは他のグループには無かったのではないか。
今日の衣装はインド時代のビートルズを意識?(たぶん違う) |
ビートルズとの関わり
- 米軍キャンプを回っていたころにビートルズを知った。当時コーラスグループをやっていてハーモニーが好きだからみなさんよりは先にビートルズに注目していたかもしれない。おもしろい曲だなと思っていたがそんなににすごくなるとは思っていなかった。ドイツでやっていたころの音源を聴くとくだらない。ちっとも良くない。イギリスに帰ってきてからの方がハーモニーの良さが出ている。
- ビートルズの曲ベスト3はMichelle、Yesterday、Ob-La-Di,Ob-La-Da。こぶ茶バンド(仲本工事、高木ブー、加藤茶)ではライブの一曲目でOb-La-Di,Ob-La-Daを演奏する。
- ドリフターズはロックンロール。時代でいうと(エルヴィス・)プレスリー。ブルースコードを基にしている。ビートルズが出てからコード進行から何から全部壊しちゃった。オーギュメントとかディミニッシュなど。ドリフターズは「これは手に負えない」と思った。その後アース・ウィンド&ファイアーぐらいまではなんとかついて行けた。ビートルズの登場はドリフターズにとって良いことではなかったのかもしれない。そのぐらいすごい影響があった。ビートルズあたりから音楽が変わった。
- ドリフターズの中で最もビートルズファンは自分(高木ブー)かもしれない(編注:志村けんさんだと思います)。仲本(工事)はロックンロールだし。ビートルズのカバーアルバム「Let It Boo」を強引に作らされたがやって良かった。感情の入れ方が難しくて苦労した。本当に聴いてほしい。
Michelleを演奏 |
高木 ブー/ LET IT BOO |Sony Music Shop
4 コメント
高木さんイベントのレポート。大変面白かったです。
返信削除同じ世代に活躍した音楽人から見たビートルズへの視点というのはやはりひと味違うなと感心しました。一番のスターはジョージですか。へぇ。プロの見方は違いますね。
また志村氏のおかげで高木さんはしこたま稼いだでしょうが、やはり弟子からメンバーになった志村氏と自分を同列で見ていないのでは、と読み取れて面白かったです。
それともやはり「志村より自分の方がファン度が高い」と自負しておられるのかな?
意外な人が登場して、独特の視点を持っていろいろと詳しいことにちょっと驚きました。
marrさんコメントありがとうございます。
削除高木ブーさんの知識と経験にはびっくりしました。この話を聞くことができて良かったです。
「ドリフターズの中で最もビートルズファンは誰か?」と質問を受けての回答だったわけですが、実際誰とは決められない(他のメンバーがどれくらい好きか知らない)様子でしかたなく自分を挙げている感じでした。
高木ブーから見たら、志村けんはいつまでたっても付き人なんだろうね。
返信削除これって、ストーンズのロンウッドに似てるのかな?(ストーンズ/ロンウッドファンが読んでたらスミマセン)
80年代のロンウッドのインタビューで「ミーティングに呼んでもらえない」って言ってた記憶がある。
サポートメンバーから正規メンバーに認められたのって90年代に入ってからじゃなかった?
コメントありがとうございます。
削除志村けんさんの名前が出なかったのはビートルズの前座をやった当時は
メンバーでは無かったせいが大きいと思いますが、
そもそもミュージシャンとして見ていないのかもしれませんね。