『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』50周年記念リミックス ファーストインプレッション

2017年5月26日にビートルズのアルバム 「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」の50周年記念エディションが発売されました。当然(?)スーパー・デラックス・エディションを購入済みです。
まずは目玉のアルバムまるごとリミックスを聴いた第一印象を書きます。資料を調べたり過去の音源と聴き比べたりはしていないので間違っているところもあると思います。頭の中にある基準の音源は2009年リマスターのステレオ版です。

今回はWindowsパソコンでCDからFLACファイルを作成し、RolandのオーディオインターフェイスQUAD-CAPTUREにソニーのヘッドフォンMDR-ZX700(7000円台)をつないで、foobar2000で24bit/192kHzにアップコンバートして聴きました。

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band

楽器の音が大きい。ベースをライン録音した 先駆けだったと思うがライン録音であることがよくわかるベースの音質になっている。コーラスが左右に広がっているがどうやって実現したのだろう。

With A Little Help From My Friends

前曲より格段に音質向上の効果が感じられる。ギターとピアノのバッキングがよく分離されており、曲の推進力が増している。 リンゴ・スターの歌とドラムの臨場感が増した。一番が終わったあとのドラムソロは大音量過ぎて笑った。ベースはもっと前面に出て良かったように思う。

Lucy In The Sky With Diamonds

イントロのキーボードのフレーズが各鍵盤から直接音が出ているかのような定位になっている。今作のリミックスを担当したジャイルズ・マーティンは時々このような冗談のようなアイデアをぶつけてくる印象。ジョン・レノンの声のエフェクトはより彼の声の魅力を際立たせている。過去のステレオ版よりテンポが遅くなったように感じる。そのためサビが重厚になった。サビ前のタムの音が大きすぎ。

Getting Better

これまでのところ最も音質向上を感じる。50周年記念エディションのトレーラーにこの曲が使用されていたのはそのせいかもしれない。歌の鮮度とエフェクトが合わさってとても50年前の音とは思えない。ベースのフレーズが思っていたのと違う箇所がある。これは今後要研究。タンブーラの音が大きすぎ。

Fixing A Hole

イントロを聴いて初めてハプシコードが2回録音されたと知った(左右に分かれている)。前曲もこの曲もベースの音が今一つ不明瞭で現代の技術を使っても磨けなかったということか。ベースのフレーズが思っていたのと違う箇所がある。これは今後要研究。マラカスかと思っていた音はブラシを使ったドラム?

She's Leaving Home

ステレオ版を聴いて育ったのでモノラル版基準の今作は旧来のステレオ版よりスピードが速くそれに比例して音も高くなっているので違和感がある。ストリングスの音が明瞭になったことと合わさって躍動感が出ているのは良いが、声の音色がところどころ不自然。最初からこのテンポとキーで歌って録音していたら良かったと思う。

Being For The Benefit Of Mr. Kite!

それが狙いなのだろうが、それにしてもうるさい。リミックスした証を残したいかのようにエフェクト音が左右に動いている。 ジョンの声は素晴らしい。イントロのドラムのロールが大きすぎ。

Within You Without You

ジャイルズ・マーティンの出世作は『Love』におけるこの曲とTomorrow Never Knowsのマッシュアップだったので否が応でも期待が高まる。果たして素晴らし出来。タブラの音色とジョージ・ハリスンの歌い出しには鳥肌が立った。 最後の笑い声大きすぎ。

When I'm Sixty-four

雰囲気が大人になった印象。よりいっそうこの曲の切なさが際立つ。ここまで聴いた感じ最新技術によってドラムの高音部分の解像度が上がった印象で、とくにこの曲はシンバルやブラシを多用しているので表情が豊かに聴こえる。クラリネットの音も良い。ジャイルズ・マーティンは生楽器の音をよく聴かせるのが得意なのかもしれない。ポールの歌のニュアンスがはっきり聴き取れ、最後に笑いながら歌っていることが良くわかった。

Lovely Rita

イントロのアコースティックギターが生々しい(これもやはり生楽器)。 後は順当な進化といった感じ。ドラムとベースの粒立ちが良くなって、実はスタッカートを効かせた演奏だったことがわかる。最後の最後のベースのグリッサンドはこれまで気づかなかった。コルクを抜く音がエフェクトをかけ過ぎてそれっぽく無い。

Good Morning Good Morning

大胆にドラムに手を加えて来た。ブラスの音色も相まって狂気さが増したと感じる。ビートルズが当時意図したものと違う仕上がりのような気がするが、これはこれで楽曲の魅力を引き出していると思う。

Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)

モノラル版を基準にしているせいということなのか、聴いたことが無い音が多い。歌はジョンの声が最も存在感があり、ポール主導の同アルバムのコンセプト曲の中央に鎮座していることに胸が熱くなる。

A Day In The Life

ジョンの歌は50年前当時のあの音源のために歌われ録音されたように感じる。今回のリミックスではどうも浮いている。鮮度の良い音源までさかのぼることができなかったのかもしれない。だったら逆にもっとローファイに加工する手はあったと思う。エフェクト音で大胆に遊んできたジャイルズ・マーティンなのでこの曲のオーケストラ上昇フレーズの変貌に期待したがあまり印象は変わらなかった。


同アルバムに対するこれまでの印象は、ドラッグの影響下によって制作されたという事前情報も相まって近寄りがたいような飲み込まれそうな圧迫感があったのですが、今回のリミックスでは50年前の「サイケデリック」という概念をデフォルメ化してファッショナブルにアレンジしたように感じます。随分と聴きやすくなりました。
今回の企画に対してはダビングを繰り返してくすんだ音になっていたものを現代技術できらびやかにすることが最も期待されていたことですので、となれば明るい雰囲気に展開させるのは必然だと思います。現代にはこれくらい華やかでかわいらしい世界観の方が受け入れられやすいのではないでしょうか。
音については生楽器(声含む)にマイクを近づけて録った音については格段に表現力が増したように感じます。ダビングを繰り返すとそういった成分から先に劣化していくのかもしれません。劣化だったとしてもそうやって混然一体となった音のかたまりをこれまでビートルズからのメッセージとして受け入れて来たわけですので、今回のリミックスには賛否両論あってもおかしくありません。

 

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2 コメント

  1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
    コーラスはイエロー~ソングトラックのミックスから左右に別れてるね。
    なんかイエロー~ソングトラックってファンの中でも無かったことになってない?

    With A Little Help From My Friends
    イエロー~ソングトラックの、ベースが中心にあるミックスの方がスキ。

    Lucy In The Sky With Diamonds
    歌の出だしからバスドラがハッキリ聞こえてるのにはステレオ派は違和感があるかも?モノラル派は馴れてる?

    Getting Better
    ベースって2本重ねてる?その2本のバランスが今回変わったか?

    イエロー~ソングトラックって過小評価されてない?



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    1. コメントありがとうございます。

      「イエロー~ソングトラック」同様、今回も最終ミックスダウン作業より前の世代の音源に戻って再構築しているということですね。

      「イエロー~ソングトラック」は編集作業のミスが指摘されており(トラックごとのタイミングのズレなど)、興味を失ったファンも多そうです。それと、正統と認められるためには「マーティン」ブランドが不可欠ということかもしれません。

      改めて聴き返してみると映画のサウンドトラックという位置づけのせいかおとなしい印象です。そのため、『Rubber Soul』の曲はよい仕上がりだと感じました。

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