<再生環境>
・OS:Windows 10 (64bit)
・プレイヤー:foobar 2000 WASAPI接続
・スピーカー:KRIPTON KS-1HQM (USB DAC 内蔵アンプスピーカー)
・ヘッドフォン:Roland QUAD-CAPTURE(USB DAC)+ Sony MDR-ZX700 (ヘッドフォン)
事前情報を頭に入れず、スピーカーとヘッドフォンで一回ずつ聴いて見た感想を記します。 我々甲虫楽団は11月3日にホワイトアルバム全曲演奏ライブを敢行したばかりです。
↓当日の全曲ダイジェスト(2分30秒)
ライブ準備のために同アルバムはかなり聴き込みましたので(Revolution 9も)、その耳にどのように聴こえるでしょうか?
全般
昨年の『Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band』50周年リミックスのときにも書きましたが、ホワイトアルバムでは録音トラック数が増えた一方(前作同様4トラックどまりの曲もあり)、録音自体はシンプルなのでリミックスに向いていると予想していました。実際の音源を聴いてまさにその通りでした。どなたにとっても期待を裏切らない瑞々しい出来だと思います。全体的には以下のような傾向があると感じました。
- 50年前のステレオミックスのイメージを尊重しつつ現代基準でブラッシュアップ
- 個々の音の分離が良く高音から低音まで充分に鳴っている。ドラムとベースがとくに影響を受けて細かなニュアンスが聴き取りやすくなっている
- ベースの音量は控えめ(そうやっても存在感は維持できる音質だから?)
- 音の定位をこまかく調整(元の録音ではトラックが同じような音も別々に配置)
- ボーカルには積極的にエフェクトを適用
- 元々エフェクトがかかっていたボーカルはあまり音質向上しない
- コーラスはボーカルを取り巻くように配置しエフェクトを強め
- 全体にかけるリバーブは小さめの部屋のイメージに留める(宅録の世界観を強調?)
- 小規模の生楽器の音が生々しい(アコースティックギター、弦楽器、管楽器)
- 裏に狂気をはらんだ楽曲はとくに迫力が増す(Glass Onion、Savoy Truffleなど)
来年リミックスが期待される『Abbey Road』はこの2点に当てはまる部分があまりありません。ギターの音をどう鳴らすかがカギになりそうです。
以下個々の曲の感想です。とくに気に入った曲には★をつけました。
Back In The U.S.S.R.
ドラムの音が生々しい。とくにスティックで叩かれた皮が振動する様子が伝わって来る。目の前でポールがドラムを叩いている様子が目に浮かぶDear Prudence
リバーブが強めで宇宙感が増している。Look aroundの前のベースの入り間違い?練習?が消されているGlass Onion ★
せっかくのベースの音量が小さい。ストリングスの音がなまめかしい。ドラムが暴力的Ob-La-Di, Ob-La-Da
イントロの手拍子が1つ足りない!ベースのゴーストノートがはっきり聴き取れるようになった。サックスの音がよく主張している。ピアノのグリッサンドが右から左へ動く(『Sgt.~』の『Lucy in the Sky with Diamonds』のイントロを思い出した)Wild Honey Pie
元のミックス以上に声を加工しているThe Continuing Story Of Bungalow Bill
オノ・ヨーコの声が大きく聴こえるようになった。そのせいか全体的に緊張感が増した。音の定位を細かくいじっているWhile My Guitar Gently Weeps
エリック・クラプトンのギターがおとなしくなった。歌の切迫感が増したHappiness Is A Warm Gun
元々声をあまり加工していないのでボーカルがよりクリアになった。ベースが入るタイミングが思っていたよりも早い。今回のリミックス特有のコーラスの加工が顕著(エフェクト強めでボーカルを取り囲むように配置)Martha My Dear ★
ピアノを弾いている指が目に浮かぶ表現力。演奏が歯切れよくテンポが上がったように錯覚してしまう。ストリングスやブラスの残響が心地よいI'm So Tired
あまり変化を感じない。元々声やドラムの音を加工しているので音質向上の余地が無かったのかもしれない。楽器の音同士の間に空間が増したように感じられる程度Blackbird
あまり変化を感じない。声の押し出しが強くなったかな、という程度。元々シンプルな録音なせいだろうPiggies ★
楽器の音が大きく力強くなり迫力が増した。今回のリミックスはジョージ・ハリスンの歌の魅力を最大限に引き出していると感じた。すべてのジョージ曲に当てはまるがこの曲が顕著Rocky Raccoon
一音目のアコースティックギターの板が鳴る感じがよく伝わってくる。ポールの多彩なボーカルが堪能できるDon't Pass Me By
実はすばらしいニュアンスで弾いているベースだが、音量が小さくてもったいないWhy Don't We Do It In The Road
ボーカルの音の歪み具合を上手にコントロールしているI Will
ボーカルとリスナーの距離がぐっと近くなった。おそらく意図的なものJulia
ボーカルの口の動きが感じられるほどの繊細さBirthday
ベースとドラムが小さくなって曲のパーティー感が薄まってしまった。現代のパーティーはこのようにカジュアルであるということだろうかYer Blues
冒頭からボーカルにエフェクトをかけ過ぎ。元の録音が団子状態であまりリミックスの余地が無かったのかもしれない。全体のリバーブは他の曲と同様小部屋感を出している。おそらくリミックス全体に漂う小部屋感はこの曲が基準Mother Nature's Son ★
今回のリミックスの中では珍しくボーカルに大きなリバーブをかけている。Dear Prudenceにならぶ宇宙的なサウンドになったEverybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey ★
今回のリミックスの中では珍しくベースが大きい。声に大胆にエフェクトをかけることで迫力が増したSexy Sadie
最初のスネア2発で心を奪われる。ドラムが歯切れよく曲の推進力が増した。この曲のコーラスのリミックス方針が他の曲にも適用されたと想像しているHelter Skelter
前曲と同じようなコーラスのリミックス方針で、より壮大になった。ベースは角が取れたような音で、これらの点が影響して迫力不足の感があるLong, Long, Long
ジョージのボーカルの魅力を再確認。前曲との音量差あり過ぎ問題は改善したRevolution 1
何故ここまでボーカルとコーラスを強調したのだろうHoney Pie ★
管楽器のニュアンスがよく伝わってくる。これはジャイルズ・マーティンの得意技と想像しているSavoy Truffle ★
今回のリミックスの集大成のような出来(ドラムとベースのニュアンス、管楽器の音の良さ、ジョージの歌の魅力、狂気を表現する迫力、・・・)Cry Baby Cry
最初の激しいドラムのフィルのフレーズが思っていたよりかなり複雑。サビにストリングスが入っている??全体的には正常進化という印象Revolution 9
リミックスしていない??技術的に難しかったのかもしれないが、この曲は作品性の多くの部分をミックス作業が占めているため、元々手を付けるべき領域では無いのかもしれない。現在この曲をリミックスできるのはオノ・ヨーコぐらいか(5.1チャンネル版は今回新たにミックスされたが)Good Night
『Sgt.~』のリミックスでも感じたが、ここまで生楽器が大編成になると音質向上はあまり感じられない傾向がある。ボーカルとコーラスの分離は良くなったが、その分リンゴ・スターが歌詞を間違えてコーラスが歌っている内容とズレていることが目立つようになった後日スーパー・デラックス・エディション収録の他の音源についても書きたいと思います。
2 コメント
私もホワイト50周年盤、聞き込んでますよ。図書館の資料本かと思うぐらい重かった。
返信削除言いたいことは色々ありますが、「ホワイル」では・・。
若い頃聞いたときは、古色香りたつスチームオルガン風の音色がだいぶ後退し、音が痩せて笛の音みたいになったのが気に入らないです。
反対に終盤アァとかオーとかあえぎ声?がハッキリ聞こえるようになって、何だか色っぽいですね。B時代のジョージにこんな一面もあったのかと驚きました。
I WILLとCAN YOU TAKE ME BACKがスタンダード曲のブルームーンの流れにあるのがわかり、にんまり。天才ポールも決して0から曲を作ってたわけじゃないのか。
好きなレコードなのでつい長くなってすみません。
オブラディ~の手拍子は驚いた。
返信削除納得のいく理由をちゃんと説明して欲しい(笑)
リミックスにより、今まできこえなかった音が聞こえるのは解るけど。聞こえなくなるって…
ビートルズ1のジョンとヨーコのバラードでは、ブレイク時のピアノが1音余計に入ってたな。
次のアビーロードではどんなサプライズがあるんだろう?
追伸…5.1チャンのDTSとドルビーの違いって、どなたか説明してっ!
聞いた感じではドルビーの方が上品に聞こえる。ボーカルかONで低音がOFFな感じ。