2012年8月16日木曜日

ビートルズの演奏にインスパイアされたお話

ビートルズのアイドル性や楽曲そのものではなく、演奏という側面に着目した日本のコンテンツがここ数年多いような気がします。例えば以下のようなものが挙げられます。

けいおん!

2007年連載開始の4コマ漫画ですが、2009年のアニメ化で大ブレイクしてから知った方も多いと思います。女子高の軽音楽部の日常を描いた作品で、アニメでは主人公たちが演奏した設定で数多くのオリジナル楽曲が発表され、そのクオリティの高さも評判になりました。実社会にバンドブームをもたらし、劇中に登場した楽器が品薄になったというニュースが報道されていました。AKB48のバンド「Baby Blossom」誕生にも影響を与えているかもしれません。

このバンド、自作曲を楽器を弾きながら歌うという点もそうですが、ベーシストが左利きという時点でビートルズを意識したことは明らかだと思います。卒業旅行でロンドンに行ってアビーロードを歩くという場面もありました。

坂道のアポロン

2007年連載開始の女性向け漫画で、2012年になってアニメ化されました。舞台は1966年の長崎でジャズの演奏を軸に高校生の生活を綴った作品です。音楽がテーマであり、1966年というビートルズ来日の年の話なので自然とビートルズの話題も出てきます。高校の文化祭でグループサウンズ風の衣装・曲で演奏するシーンがあったのですが、そのバンドのビートルズ好きのベーシストが持っていたのは見た目が明らかにHofner 500/1の通称「キャバーン」タイプのものでした。

これはポール・マッカートニーがビートルズのデビュー直後まで使用していたもので、2つのピックアップの距離が近いのと縦型のHofnerロゴが特徴です。劇中のベースはまさにその特徴を持っていました。1961年以前に製造された当時無名のモデルを数年後に日本の高校生が入手できたのか甚だ疑問ですが、あえてこのタイプを選んだのは制作者のこだわりでしょうか。

天使の3P!

2012年発表のライトノベルで「てんしのすりーぴーす」と読みます。女子小学生のスリーピースバンドのお話です。使用楽器がビンテージという設定で、ベースはHofnerの500/1と明言されていました。それ以降ベースについて具体的な記述は無かったようですが、挿絵を見るとラージエスカッション(ピックアップの黒い縁取りが大きい)だったので、ビンテージだとしても1965年前後のものだと思います。ビンテージHofnerの頂点とも言えるポールのものと同じ仕様にしなかったのは単に作画資料を間違えたからでしょうか。

僕はビートルズ

2010年~2012年に連載されていた漫画です。前述の3作品は実はほとんど見ていないのですが、この作品は第一話から最終話まで毎号欠かさず読んでいました。20代前半のメンバーで構成される現代のビートルコピーバンドが解散したその日にビートルズデビュー前の日本にタイムスリップしてしまうという話です。転がり込んだ先で当時未発表だったビートルズの楽曲を自作と偽って披露したことから周りの人の運命を変えていきます。

メンバーはそれぞれ東京の別の場所にタイムスリップしており、彼らが再び出会ってバンドを再結成するまでが前半の山場です。その過程で出あう様々な人が新しい音楽に戸惑い、恐れながらも心動かされていく様子が丁寧に描かれており、毎回もらい泣きしていました。メンバー一人ずつ増えるごとにそのうねりが拡大していくわけですから目が離せなくなります。

楽器はタイムスリップしなかったのですが結局ビートルズと同じものを入手しています。グレッチは普通に輸入したのですが、その時点で存在しないはずの2つのピックアップの距離が離れたHofner 500/1ベースや、ジョン・レノンによる改造済みの仕様のRickenbacker 325ギターが骨董屋にあるなどご都合主義のところはありました。ポール役は左利きなのですがさすがに左利き用のヘフナーではやりすぎと感じたのか出てきたのは右利き用です。おそらくこの仕様(2つのピックアップの距離が離れている)が当時存在しないことを作者は知らなかったのだと思います。知っててやっているなら仕様には目をつむり利き腕だけ配慮するのは不自然です。

その後、Hofnerは右利き用のまま左で使用し、Ricenbackerはジョンと同様に車の塗装工場で黒く塗られています。

メンバーが揃ってからは話は急展開し、ファンに追いかけられて町を走る、ビートルズ全時代の楽曲を網羅したアルバム発売、シェイ・スタジアムならぬ後楽園球場ライブなどビートルズの歴史を追体験しつつとんとん拍子に渡英まで至りました。

そこで起きた出来事をきっかけに、主人公たちは歴史から姿を消すことになります。1話分を使って後日談も描かれるのですが、結局歴史の大局は変わらなかったようです。ビートルズ日本公演は?ビートルズ解散は?ジョン・レノン暗殺は?知りたかったことはたくさんありますが詳しく言及されていません。なんのためにタイムスリップしたのかストーリー上の説明は無いままです。後日談にもう2~3話使っていればより味わい深くなったのですが。

個人的には残念な結末でしたが、ビートルズの曲を演奏したことがある人にとっては前半の盛り上がりは楽しめると思います。「ビートルズの曲を盗作」というストーリーの中核部分を許容できるならお勧めです。


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