2013年4月21日日曜日

フェードアウトの終わらせ方(1)「Please Please Me」編

ビートルズのコピーバンドにとって、原典がフェードアウトしている曲を演奏する際にどう終わらせるかは悩みの種だと思います。コピーという土俵において唯一独自性が許されている箇所ではあるのでここぞとばかりに思いっきり遊ぶという手もありますが、やり過ぎて観客に引かれてしまうのは考え物です。
そこでこの連載では妥当性が高い終わらせ方をまとめてみたいと思います。出典はYouTubeで検索できる範囲というお気楽なものです。

まず、妥当性の高さとして以下の優先順位を提案します。
  1. ビートルズ現役時代に公の場で披露したもの
    ライブ、テレビ、ラジオなどでビートルズが演奏した際の終わらせ方は、当時のビートルズの公式見解として最優先される。
  2. ビートルズ現役時代の録音が別バージョンとして後に公式発売されたもの
    アルバム「Anthology」やゲーム「Rock Band」等でフェードアウト処理する前の状態の音源が公式発売される場合がある。当時のビートルズの意図が垣間見える。
  3. ビートルズのメンバーがソロ活動の中で公の場で披露したもの
    レコード、CD、配信、ライブ、テレビ、ラジオ等でメンバー本人が独自のエンディングを披露する場合がある。多くの場合作曲者自身によるものなのでビートルズ現役時代もそのようにした(したかった)可能性がある。
  4. ビートルズ解散後に編集によって作り出されて公式発表されたもの
    アルバム「Love」やゲーム「Rock Band」の一部の楽曲が相当。メンバー本人の関与は限定的だが公式発表されたものは尊重すべき。
  5.  ビートルズ現役時代の録音が流出したもの
    いわゆる海賊盤が相当。ビートルズ側が意図して公開したものでは無いので重視すべきでは無いかもしれないが参考になる(これに相当するものは後に公式発売されることが多い)。
  6. 第三者のプロミュージシャンによるアレンジ
    プロのビートルズトリビュートバンドのみならずオリジナル曲で活躍しているプロミュージシャンがビートルズの曲をライブで演奏したり音源を流通させたりすることがある。プロとしての経験と技術に裏付けられた終わらせ方は納得感が高そうであるし、プロだけに結果は多くの人が体験することになるので既成事実としても無視できない。
本連載では基本的に上記1~4を取り上げますが、抜けているものや5、6について推薦いただけると嬉しいです。

第一回となる今回は先月発売50周年を迎えたデビューアルバム「Please Please Me」についてまとめます。同アルバムでフェードアウトするのは以下の7曲で、実に総曲数の半分を占めます。

Misery
Chains
Boys
Love Me Do
Baby It's You
Do You Want To Know a Secret
There's a Place

以降、参考音源を引用します。リンクをクリックするとエンディング直前から再生されます。

Misery

ラジオ番組の例です。いずれも同じタイミングで終わっていますがギターのフレーズが異なります。
http://youtu.be/4Rl3Wi2RUX0?t=1m40s
http://youtu.be/zxg7j6rQDLM?t=1m36s
アルバムではフェードアウトした直後に演奏が終了していたことが想像されます。

Chains

ラジオ番組の例です。コード進行も締め方もいかにも終わるぞという雰囲気です。アルバムではなぜわざわざフェードアウトしたのでしょうか。フェードアウトせずにあと5秒ぐらい待てば自然に終わったはずです。
http://youtu.be/3mKCM5jUask?t=2m6s

Boys

ハリウッド・ボウルでのライブの例です。他のライブもこうなので他の選択肢は無いと思います。
http://youtu.be/ll-mYwoT_G8?t=1m52s

テレビ出演時のあてぶりです。これもライブと同じです。
http://youtu.be/rN6ZZiKWZYA?t=1m55s

「Rock Band」の例です。編集で強引に終わらせています。結局レコーディング時のエンディングはわからずじまいです。
http://youtu.be/8Frr6nZLqYo?t=2m5s

2013年のALL STARR BANDのツアーでは定番の終わり方にもう少し追加しています。
http://youtu.be/IguJKzL0ndI?t=3m7s

Love Me Do

ラジオ番組の例です。斬新な(新奇な?)終わり方です。
http://youtu.be/Aew3A2akWv8?t=2m27s

リンゴ・スターのライブでの例です。 何故この曲をやったのでしょうか・・・。
http://youtu.be/RlmrrX7Uqog?t=3m13s

ポール・マッカートニーのライブでの例です。P.S. I Love Youと繋げて大胆にアレンジしています。
http://youtu.be/Ik3Kzv_d6Fk?t=1m49s

Baby It's You

ラジオ番組の例です。1995年にこの音源がシングルとして公式発売されたのでこれ以外に無いでしょう。
http://youtu.be/cVeoaz3-qC4?t=11m42s

Do You Want to Know a Secret

「Rock Band」の終わり方です。テイク7として流通している音源と同じ終わり方なのでこれは公式見解と考えてよいでしょう。
http://youtu.be/-aeiocyQsYU?t=1m42s

ラジオ番組の例です。同じ終わり方ですが歌い回しがアレンジされています。
http://youtu.be/8hQZ9SeNx7U?t=1m32s

There's a Place

ラジオ番組の例です。ごく自然な終わり方です。
http://youtu.be/1xe-VQs93r8?t=1m30s


こうしてまとめてみると、フェードアウトさせるまでも無かった(あと数秒待てば普通に終わった)曲が多いことに気付きます。そもそもアルバム「Please Please Me」はキャヴァン・クラブでのライブの熱気を再現するコンセプトだったと聞いていますのでフェードアウト処理が多いことに矛盾を感じてしまいます。フェードアウトが当時の流行だったのでしょうか。それとも自信を持ってレコードに記録できる終わり方が思いつかなかったのでしょうか。

2 件のコメント:

  1. 非常に興味深いテーマです!私も同じようなことを考えてました!

    確かに、本アルバムにおけるフェードアウト有無の基準は謎ですね。何となくジョージ・マーティンの判断(好み?)ではないかな~?という気もするのですが。
    もしかしたらフェードアウト処理の曲は、エンディングがキレイに決まらなかったか、またはショボいと判断されたのかもしれません。

    Chainsの「わざわざフェードアウト」の謎は、(またいつか出てくると思いますが)Doctor Robertでも同じことを思います。

    また次回以降、期待しております!

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    1. コメントありがとうございます。

      ビートルズ初期は
      「陳腐化した終わらせ方しか思いつかないからいっそのことフェードアウト」
      が多い気がします。そこにジョージ・マーティンの判断が影響していることはありそうです。

      ご指摘通り「わざわざフェードアウト」の最たるものが「Doctor Robert」で何故ああなっているか不思議です。

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