「ザ・ビートルズ THE U.S. BOX」日本盤発売 仕様まとめ

2014年1月29日にビートルズのアメリカ独自編集盤LPを再現した13枚組CDボックス「THE U.S. BOX」(海外では"The U.S. Albums")の日本盤が発売されました。

僕自身は購入予定は無く、もともとアメリカ盤についての知識も乏しいのですが、インターネットで収集した情報をここにまとめます。誤りがありましたらご指摘ください。

今回の製品については以下で詳しく解説されています。

ビートルズ 「USオリジナル盤」がCDボックスで復刻
http://www.asahi.com/and_M/information/TKY201401280109.html

ザ・ビートルズ THE U.S. BOX!輸入盤・国内盤とも好評発売中!
http://www.hmv.co.jp/news/article/1312130016/

今回の日本盤は単に輸入盤に帯や日本語冊子を付属しただけではなく、CDの盤からして日本向けに生産されたもののようです。
一番の違いはジャケットで、日本盤のみ「A式表張り」を再現している点です(海外盤より再現度が高い)。

『THE U.S. BOX』ここがスゴイ!
http://www.universal-music.co.jp/the-beatles/news/2014/01/23_news

いわくつきの「YESTERDAY AND TODAY」のジャケットはいわゆる「ブッチャー・カバー」を基準に、別途「トランク・カバー」のステッカーが付属するという当時を再現した作りになっています。ただし、ジャケットの紙質は当時のざらついたものでは無く、光沢のあるものになっています。

ジャケットの体裁にはこだわった今作ですが、肝心の音は海外盤も日本盤も当時のアメリカ盤を再現しておらず、現代の基準で再構成されている点が批判の的になっています。

どうやら以下の方針で構成されているようです。

1.アメリカ側で勝手に音を加工したものは根絶
勝手ステレオ(モノラル音源を無理矢理ステレオ化。通称「疑似ステレオ」を含む)、勝手モノラル(ステレオ音源の左右をミックスして1つのモノラル音源を作成。通称「偽モノ/ニセモノ」)、リバーブ(エコー)付与(通称「ディープ・エコー」)、といったものは2009年にリマスターされた正統音源に差し替えられています。ステレオ音源が存在しないものはステレオ盤の再現にもいさぎよくモノラル音源を収録しています(Love Me Do、P.S. I Love You、She Loves You、I'll Get You)

2.イギリス盤「Help!」「Rubber Soul」 収録曲のステレオ音源は1987年リミックスに差し替え
2009年のリマスターで1987年リミックスバージョンが正統と認定されたのでそれを踏襲しています。

3.製品としての統一感を重視して音を調整
通して聴いて違和感が無いよう、音圧や音質を調整しているようです。モノラル音源は2009年にCDで発売されたものより音圧が上がっています(そうしないとステレオ音源との音量差が気になる)。ステレオ、モノラルとも2009年のCD音源より前の工程の高解像度音源を元にリマスターしているという情報があるので聞き比べると面白いかもしれません。

4.アメリカ盤独自ミックス音源はできるだけ尊重
この商品の大きな売りの一つがアメリカ独自ミックス(ミックス違い)音源の存在です。音素材からして、イギリス盤と違うということです。前述の方針と矛盾しない限りはそれら独自ミックス音源を収録しているようです。

この結果、今回収録されたアメリカ盤独自ミックスは以下のようです。
You Can't Do That (モノラル)
Long Tall Sally (モノラル)
I Call Your Name (モノラル)
I'll Cry Instead (モノラル)
Any Time At All (モノラル)
When I Get Home (モノラル)
And I Love Her (モノラル)
I'll Be Back (モノラル
She's A Woman (モノラル)
I Feel Fine (モノラル)
Michelle (モノラル)
The Word (ステレオ)
I'm Looking Through You (ステレオ)
I'm Only Sleeping (モノラル)
Doctor Robert (モノラル)
And Your Bird Can Sing (モノラル)
We Can Work It Out (ステレオ)
Day Tripper (ステレオ)

また、本来アメリカ盤独自ミックスのはずなのに収録されなかった曲は以下のようです。
Long Tall Sally (ステレオ)
I Call Your Name (ステレオ)
Komm Gib Mir Deine Hand(モノラル) ※独自ミックスのステレオからの勝手モノラル
Komm Gib Mir Deine Hand (ステレオ)
I'm Only Sleeping (ステレオ)
Doctor Robert (ステレオ)
And Your Bird Can Sing (ステレオ)

この残念なケースにステレオバージョンが多いのは、いくつかのLPの初版では勝手ステレオが収録されており、その後の再発売の段階で独自ミックスが採用されたためという説が有力です。今回は初版を尊重したというわけです。また、前述の法則3に抵触するため見送られたという説もあります。もちろん、単なるミスという可能性もあります。

当時のLPと今回のCDの
音源一致状況をまとめると以下のようになります。
文章量を減らすために表現を工夫しているのでご注意ください。

MEET THE BEATLES・モノラル
以下のみ一致(LPでは他は勝手モノラル)
I Want To Hold Your Hand
I Saw Her Standing There
This Boy

・ステレオ
以下(LPでは勝手ステレオ)以外一致
I Want To Hold Your Hand
This Boy

THE BEATLES SECOND ALBUM
・モノラル
以下(LPでは勝手モノラル)以外一致
Roll Over Beethoven
Thank You Girl
You Really Got A Hold On Me
Devil In Her Heart
Money
Please Mr Postman

・ステレオ
以下のみ一致 (LPでは他は勝手ステレオ)
Roll Over Beethoven
Thank You Girl
You Really Got A Hold On Me
Devil In Her Heart
Money
Please Mr Postman
※当時のLPはリバーブが追加されていたので一致ではないという意見も

A HARD DAY'S NIGHT
・モノラル
全て一致

・ステレオ
全て相違(LPでは全曲勝手ステレオ)
※今回I'll Cry Insteadはモノラルのアメリカ盤独自ミックスを収録

SOMETHING NEW
・モノラル
以下以外一致
Komm Gib Mir Deine Hand(LPではアメリカ独自ミックスのステレオ版からの勝手ミックス)

・ステレオ
以下以外一致
Komm Gib Mir Deine Hand(LPではアメリカ独自ミックス)

BEATLES '65
・モノラル
全て一致

・ステレオ
以下以外一致
She's A Woman(LPではアメリカ独自ミックス)
I Feel Fine(LPではアメリカ独自ミックス)

THE EARLY BEATLES
・モノラル
以下のみ一致
Love Me Do
PS I Love You
※勝手ステレオを元に勝手モノラルを作ったので一致ではないという意見も

・ステレオ
以下(モノラルに差し替え)以外一致
Love Me Do
PS I Love You

BEATLES VI
・モノラル
全て一致

・ステレオ
以下以外一致
You Like Me Too Much(1987年ミックスに差し替え)
Yes It Is(LPでは勝手ステレオ)
Dizzy Miss Lizzy(1987年ミックスに差し替え)
Tell Me What You See (1987年ミックスに差し替え)

HELP!
・モノラル
全て相違(LPでは全曲勝手モノラル)

・ステレオ
全て相違(1987年ミックスに差し替え)

RUBBER SOUL
・モノラル
全て一致

・ステレオ
以下のみ一致(他は1987年ミックスに差し替え)
The Word(アメリカ独自ミックス)
I'm Looking Through You(アメリカ独自ミックス)

YESTERDAY AND TODAY
・モノラル
以下(LPでは勝手モノラル)以外一致
Drive My Car
If I Needed Someone

・ステレオ
以下のみ一致(他は1987年ミックスに差し替え、いくつかアメリカ独自ミックス未収録)
We Can Work It Out(アメリカ独自ミックス)
Day Tripper(アメリカ独自ミックス)

REVOLVER
全て一致

HEY JUDE
全て一致

上記一覧も公式見解では無く、「もっと他に独自ミックスが収録されている」「独自ミックスとされるがそうではない(未収録で問題無い)」、など様々な意見が飛び交っており真相は不明です。さらに当時のアメリカ盤では、「ミックス違いでは無いが左右のチャンネルが逆」、「フェードアウトの長さが違う」といったケースもあるようでややこしいです。それらも今回は2009年音源に差し替わっています。
なお、Help!には当時のアメリカ盤同様、冒頭にいわゆるジェームス・ボンド風イントロが追加されていますが、曲の部分は2009年音源のようです。

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