ライブハウスにおける映像&音声収録術

※同目的の記事→その2、→その3もご参照ください。
 2013年6月15日甲虫楽団ワンマンライブの全演奏曲をYouTubeで公開しています。演奏のクオリティはさておき、この映像を見た方から「どうやってライブを録音&撮影しているのか」とご質問いただくことがあるので今回のライブのケースをご紹介します。

ブッキングライブが盛んなライブハウスは備え付けの録音・撮影システムが存在する場合が多いですが、今回の会場である小岩ジョニーエンジェルには設備が無かったため自前で用意しました。映像や音声の収録について専門的に学んだ事は無いので試行錯誤の連続です。

録音機材

録音にはZOOMのハンディレコーダーH1を4台使用しています。これによりマルチトラック素材を作成できます。後から時間をかけて音源をミックスダウンできるというわけです。
ZOOM H1
H1は日本が世界に誇るオーディオ系ガジェットメーカー、ズームのハンディレコーダーのエントリーモデルです。新品でも7,000円台で購入できます。これを中古で入手しました。単三電池1つで3時間以上録音できるのでワンマンライブでも録音しっぱなしにできます。付属している2GBのmicroSDHCカードの場合非圧縮のWAVファイルでは容量が足りなくなるため320kbpsのMP3ファイルで録音しています(フォーマットによる録音時間の違いはこちら)。

撮影機材

撮影にはデジタルビデオカメラ2台、コンパクトデジタルカメラ1台、アクションカメラの代名詞GoPro のHERO3 ホワイトエディション1台を使用してマルチカメラ環境を実現しています。すべてフルハイビジョン(1920×1080ピクセル)のAVCHDかMP4 でメモリーカードに記録します。
GoPro HERO3
動画の場合メモリーカードの容量に注意が必要です。64GBもあれば充分ですが大容量のものは高価なので4~16GBあたりのメディアを使い回してこまめに撮影しています。一気に長時間録画するとファイルサイズが増大して編集しにくくなるという事情もあります。
デジタルビデオカメラはACアダプタを使用するので良いのですが、コンパクトデジタルカメラやGoProの場合、バッテリーの持続時間も問題になります。とくにコンパクトデジタルカメラの動画撮影はおまけのようなものなので1つのバッテリーで30分程度しか撮れない印象です。そもそもほとんどのコンパクトデジタルカメラは関税対策で29分台までしか連続動画撮影できないようになっています(30分を超えるとEU圏ではビデオカメラ扱いになって税率が上がるため)。
コンパクトデジタルカメラもGoProもACアダプタで撮影することは可能なのですが、設置場所に自由度が増すというメリットを重視してバッテリを使用しています。とくにGoProは超小型かつスマートフォンからアングルを確認できるのでカメラの後ろに人が回り込めない場所(ステージ上など)にも設置できます。同じような事(スマホでプレビュー)は最近のデジタルビデオカメラやデジタルカメラでもできるようになっているようです。

機材の配置

以上の機材を以下の図のように設置しています。
クリックして拡大します

機材は基本的に三脚で設置していますが、GoProの本体には三脚用の穴が空いていないので先端がクリップになっているミニ三脚を使用しています。
この結果、ギター、ベース、ボーカル、キーボード、アコースティックギターがラインで収録されます。スピーカーから出た音をマイクで収録するわけではないので輪郭のくっきりした音になります。
ただしこのままでは会場で聴こえている音とかけ離れた粗が目立つ音になってしまうため、会場後ろからZOOM H1備えつけのマイクで録音した音も最終的にミックスしています。
なお、ライブハウスのミキサーからの音源を聴くと、会場で聴いているよりキーボードの音が大きく聴こえる(=ボーカルの音が小さく聴こえる)のがほとんどです。まさか会場では生声も聴こえているから、というわけでは無いと思うので、ボーカルを聴きとりやすいよう会場のスピーカーが調整されていると想像しています。
巷のライブハウスの録音サービスでは以前はミキサーからの音(通称ライン音源)をそのまま録音していたことがほとんどでしたが、そういった聴覚上の問題もあって最近は客席付近に設置したマイクの音(通称エア音源)もミックスした状態で録音することが増えてきたように思います。

素材の編集

こうして収録した素材を1つの動画に編集するわけですが、まず最初の関門は同期です。複数の素材が同じ時間軸で流れるように開始位置を合わせる作業です。音の波形を頼りにある程度目で見て合わせることができますが、最終的には耳で聞いてズレが無いようにする必要があります。

複数音源を同期させた様子

さらに、同じ出来事を収録しているはずなのに開始位置を合わせても時間が経つにつれズレていくことがあります。優秀なことにZOOM H1の音同士は3時間以上再生してもズレないので、これを基準に映像を1~2曲ずつ細切れにして合わせなおしています。実際はそれでも各曲の後半になるにつれズレているのでしょうが、ほとんど気になりません。一定の割合でズレるのなら全編の長さをデジタル処理で伸縮するのが理想ですが割に合わないと思います。
同期が済んだら音と映像をそれぞれ最適と思われる内容に加工します。音はそれぞれの素材のボリュームやイコライザを調整したり、エフェクトをかけたりしています。映像の素材は撮りっぱなしなのでデジタル処理でズームやパンをしながら適宜カメラを切り替えます。デジタルズームすると解像度が下がるため、YouTubeで公開する際は撮影時のフルハイビジョンではなく、より解像度が低いフォーマット(640×360等)で公開しています。
今回は音声の編集にはSONY ACID Music Studio 9、映像の編集にはSONY Movie Studio Platinum 12を使用しています。最近のビデオ編集ソフトウェアにはマルチカム機能などという名前で複数のアングルの映像素材を音を頼りに自動的に同期してくれるものがあるようですが、今回は手動で同期しています。

編集結果の例

撮影専任スタッフがいるわけではないのでステージの直前にバンドメンバーで分担して録画を開始するのですが、時間切れだったりそもそも操作を忘れていたりして、前述の(1)~(4)すべてのカメラを同時に使った映像は撮れませんでした。

(1)(2)(3)を使用した例

(1)(4)を使用した例

今後の改善点

全景を収める前述(1)のカメラはズームを多用するのでより解像力が高い機材の導入を検討しています。とはいえ元々映像や音声に詳しいわけでは無いですし、演奏しながらこれらの機材の面倒を見るのはリスクが高いので ライブの撮影&編集スタッフをやっていただける方ご一報お待ちしております!

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