『レット・イット・ビー スペシャル・エディション (スーパー・デラックス)』ファーストインプレッション

 ビートルズのアルバム50周年記念リミックスシリーズの最後を飾る『Let It Be』の「スペシャル・エディション」が2021年10月15日に世界同時発売されました。スーパー・デラックスの3枚目まで聴いたので感想を記します。

ブックレットも含めた全体的な感想は→こちら

英語版に日本語訳の紙や冊子が付属

『Let It Be』のジャイルズ・マーティンによるリミックス

旧作と比べ、以下の変更点を感じました。

  • 全体的に高音質で音の分離が良くなった(このアルバムの録音自体あまり高音質ではないので限定的だが)
  • 高音と低音それぞれが広がり開放的になった(旧作は押しつぶされた感じ)
  • オーバーダビングがメンバーの演奏をかき消さないように配慮
  • ベースの音量が小さくなったが低音成分は増量。ライブ感が増した
  • ボーカルの押し出しが強くなった
  • ジョンとポールのボーカルについて、ジョンの音量を強調/極端に左右に分けず1本のマイクに寄り添うような配置に(旧作では分離されていなかったTwo Of Usの二人のボーカルも同様の配置に変更)

この結果、ポールが一歩下がってジョンの存在感が増し、さらにジョンがポールに歩み寄ったように感じられて嬉しいです。新作映画『ザ・ビートルズ:Get Back』の意図に合致するリミックスと言えるでしょう。

どうせなら、『Let It Be』をなぞったリミックスではなくジャイルズ・マーティン版『Get Back』を作ればよかったと思います。アルバム『Let It Be』は映画のサントラとしてビートルズの意図とは無関係に編集されたものと認識しています(2006年の『LOVE』とあまり変わらない)。とはいえ、フィル・スペクターが手掛けた旧作をマーティン家のプロデュースに引き戻すという大河ドラマと考えればこれもありなのかもしれません。

 今回、Two Of Usの「We're going home」のところジョンが上のパートを歌っていることを初めて知りました…。

 

CD 2 ゲット・バック – アップル・セッションズ

少し退屈に感じました。興味深いのは確かなのですが、映画 『ザ・ビートルズ:Get Back』のトレーラーの高画質を一度見てしまうと、どうしても映像付きで見たくなってしまいます。この感じなら出し惜しみせずもっと収録してくれればよかったと思います。

発表前に公開されていましたがOne After 909(テイク3)とDon't Let Me Down(ファースト・ルーフトップ・パフォーマンス) は気合が入っていてとくに良かったです。

 

CD 3 ゲット・バック – リハーサル・アンド・アップル・ジャムズ

曲を厳選した感があって楽しめました。音質の良さを実感しました。

 

CD 4、5 Blu-Ray

CD4と5はグリン・ジョンズのミックスが主ですが、音源の出自が怪しい(マスターテープが見つからなかったのか後年再編集された海賊盤を元にしている)との言説を目にして聞くのを一旦後回しにしています。

制作者側にビートルズファンはいないのでしょうか…。1回限りのチャンス(次あるとしたら100周年か関係者がすべて亡くなったとき?)なので覚悟と誇りをもって取り組んで欲しかったです。世界中のファンの力を借りることもできたでしょうに。

Blu-rayはその真価を発揮できる再生環境を持っていないので聴くことは無さそうです。ハイレゾ音源がダウンロードできる権利がもらえると良いのですが。

  

コメントを投稿

2 コメント

  1. お久しぶりです。今タイから日本へCDを取り寄せているのですが、
    グリンジョンズMixは楽しみにしているのですが、そんな噂があるのですね。。

    しかしこれで50周年企画モノがひと段落してしまい、ビートルズネタが出てくるのはまた先になりそうで少し寂しい気持ちになりますね。

    返信削除
    返信
    1. Miyataniさんごぶさたしております。
      今回の収録音源のうちグリン・ジョンズが手掛けた曲はファンによる検証が進んでいて
      ・日本版のみ音源が異なる
      ・69年版と70年版の音源が混在している(69年版と謳いながら)
      ・後年の海賊盤で勝手に行われた編集が採用されている(つまり海賊盤をそのまま流用している)
      などと言われており、僕もよくわかっていません。もう少しすると事実が整理されると思います。

      削除