最後のビートルズの新曲 2023年リリース ポール・マッカートニーが明かす

「Now and Then」2023年11月2日リリースが発表されましたくわしくはこちら

2023年6月13日に公開されたBBCラジオによる ポール・マッカートニーのインタビューで「the last Beatles record」が今年リリースされる予定であることが明らかになりました。

なお、今回AIがビートルズっぽく作曲や演奏をしたわけではありません

ポールやリンゴ・スター、ショーン・レノンが火消しに追われています。

ポール・マッカートニー AIを使った「ビートルズの最後の曲」について「人工的に作られたものは何もない」と語る(amass)

ショーン・レノン、ポール・マッカートニーが明らかにしたAIを使った「ビートルズの最後の曲」について情報を補足(amass)

リンゴ・スター、AIを使った「ビートルズの最後の曲」についてコメント ジョージが生前にこの曲のパートを録音していたことを認める(amass)

聞き手のマーサ・カーニーと
発言の核心部分(Twitterで開いてから再生マークを押してください)↓
1か月間はインタビュー全編を再生&ダウンロード可能↓

本件に関する報道

Sir Paul McCartney says artificial intelligence has enabled a 'final' Beatles song (BBC)

ビートルズ「最後の曲」完成、レノン氏の歌声をAIで復元 マッカートニー氏がBBCラジオで明かす(BBC)

ビートルズ「最後のレコード」ポールが発言 「新曲」なら27年ぶり(朝日新聞)

ジョン・レノンの歌声をAIで…ポール・マッカートニーさん「ビートルズ最後のレコード」(読売新聞)

ビートルズ「最後の作品」 年内発表、AIでジョンの声抽出(毎日新聞)

元々はポール自身が1964年に撮影した写真を収めた写真集『1964: Eyes of the Storm』が同日発売されたこと、ならびに連動する展覧会についてのインタビューでした。

追記:同展覧会の日本での開催が決定しました

展覧会名:ポール・マッカートニー写真展1963- 64~Eyes of the Storm~
<東京>
会期:2024年7月~9月
会場:東京シティビュー (東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー 52階)
主催:フジテレビジョンほか   以降大阪巡回予定

ポールからの日本向けビデオメッセージ↓

昨今ネットで流行っている「AIでポール・マッカートニーの曲をジョン・レノンに歌わせてみた」等の架空の音源を作り出す技術の話題に発展した際にポロっとポールが述べた本件がニュースとして世界を駆け巡りました。

今回は混然一体となった音源からジョンの歌と楽器演奏を分離しノイズを除去するためにAIが使われました。ビートルズ界隈では映像作品『ザ・ビートルズ Get Back 』(2021年)で実用化されて以降『Revolver』(2022年)リミックス等積極活用されています。

「the last Beatles record」(最後のビートルズのレコード)というからにはジョージ・ハリスンとリンゴ・スターも参加していなければなりません。のちにSNSでポールやショーンも4人全員参加していると名言しました。リンゴものちにインタビューに同様の発言をしています。

It’s all real and we all play on it.(ポール)

It is a new recording made by all four Beatles. (ショーン)

it’s the final track you’ll ever hear with the four lads. (リンゴ)

となると対象曲は1994年~1995年に『The Beatles Anthology』(ビートルズの歴史を振り返る)プロジェクトの一環でジョン以外の3人で行われたセッションの際に取り上げた曲と思われます。ジョンの生前のデモテープに、残った3人が音を重ねる形でビートルズ名義の楽曲を完成させるというものです。

この時対象になった曲のうち「Free as a Bird」と「Real Love」はアルバム『The Beatles Anthology 1』(1995年)『The Beatles Anthology 2』(1996年)にそれぞれ収録されました。アルバムはもう1枚『The Beatles Anthology 3』(1996年)も発売されたのですが、そちらには新曲は収録されておらず、当時から3曲目の制作に失敗したことが伝わっていました。

問題の3曲目は「Now and Then」だったことがわかっています。当時ジョージが早々にこの曲に見切りをつけたようですが、何かしら録音はしただろうということで今回はこのときの『Now and Then』が発掘されたと考えられています。ポールやリンゴ・スターによる直近の追加録音はあったのでしょうか?(追記:その後リンゴが自身の誕生日に詳細を語っています。→こちら

今回の曲名についてビートルズ側から公式発表はまだありません。「Now and Then」という曲名自体正式名称とは言い難く「Miss You」「I Don't Want To Lose You」と呼ばれることもあるようです。

この「Now and Then」は以降も何度か完成を試みた様子がポールや関係者から伝わっています。2015年には「Free as a Bird」と「Real Love」が、初出時にプロデューサーを務めたジェフ・リンによって大胆にリミックスされています。この時も「Now and Then」に取り組んだかもしれません。2015年版リミックス↓



2015年版「Real Love」を聞くとテープ再生速度変更に伴うジョンの声質の変化が1996年版に比べて抑えられているように感じるので2015年時点の技術を活用した可能性があります。そして2023年になって最先端技術であるAIが後押ししてついに3曲目の完成にこぎつけたということです。「未来の医療の発展に期待して30年コールドスリープする」といったSFにも近いロマンを感じます。

それにしてもなぜ今年リリースなのでしょうか?現時点でもっとも有力なのは今年発売50周年を迎えるベストアルバム通称「赤盤」「青盤」のリミックスとともに発売される、という説です。

『The Beatles Anthology』プロジェクト当時、これまで挙げていた3曲の他に「Grow Old With Me」も新曲候補でした。この曲はジョン名義でも発売されており、2019年にはリンゴがカバーしています。その時はポール・マッカートニーがベースを弾きました。人気のある曲なので今回もこちらの方がよかった気がしますが、『The Beatles Anthology』プロジェクト当時は録音まで至らなかったようでジョージの演奏音源が無いと思われるため望み薄です。

「Grow Old With Me」は中間部をポールの若い声で合成した音源がネットに出回っています。これとリンゴバージョンをおあそびで融合させてみました↓
この音源でいうと00:54あたりにジョージの「Here Comes The Sun」のメロディが入っていることがわかります。リンゴ版「Grow Old With Me」のこの趣向の経緯についてはこちら↓
奇跡の “ビートルズ新曲” 35年越しの「グロウ・オールド・ウィズ・ミー」(Re:minder)

今回の「新曲」についてビートルズへの冒涜と感じる人は多いと思います。「Free as a Bird」「Real Love」公開時にもそういった反応がありました。僕としてはビートルズプロジェクトの正統な意思決定を尊重したいと思います。ビートルズは現役当時から新しもの好きで既存の常識を軽々と超えてきましたので。

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