レビュー:『ザ・ビートルズ: Let It Be』2024年5月8日配信開始

長らく封印されていたビートルズのドキュメンタリー映画『Let It Be』が50年超の時を経て復活しました。2024年5月8日16時(日本時間)から『ザ・ビートルズ: Let It Be』としてDisney+で配信されています。この5月8日は同映画のサウンドトラック盤『Let It Be』のイギリスでの発売日(1970年)です。

『Let It Be』のアルバムや映画が公開された時点(1970年4~5月)でビートルズは既に解散状態にあり、二つの『Let It Be』はメンバーが晴れ晴れと承認したものではありません。解散を言い含めるような位置づけとなった映画は公開後入手経路がごく限られた状態になりました。さすがにアルバムは現在まで継続的に聴くことができていますが、やはりビートルズ側(とくにポール・マッカートニー)が内容に納得していなかったのか2003年に『Let It Be... Naked』という別ミックス作品がリリースされています。
リリース50周年記念を契機に状況は大きく変化しました。『Let It Be』の録音素材を再編成した記念盤の発売、フィルム素材を再構築した『ザ・ビートルズ: Get Back』の配信、といったイベントを経る中で当時のビートルズの状況が再評価され、ついに映画『Let It Be』が解き放たれたのです。ようやくポールも『Let It Be』に正面から向き合えるようになったのかもしれません。

『ザ・ビートルズ: Let It Be』感想

僕自身は『Let It Be』旧作は未視聴で今回初めて鑑賞しました。僕がビートルズを知った時点では既に正規では入手できない状態になっており、入手できたとしても品質が悪いものしか無いので避けていたのです。『ザ・ビートルズ: Get Back』を先に見ているので『Let It Be』への印象は当時視聴した方とは異なると思います。

まず、監督がバッチリ映り込んでいてびっくり。カチンコもカメラも見切れているし、文字や音声による説明もまったく無いので、何を見せられているんだろうという感覚におちいりました。

このやり方なら1時間にまとめたほうがよかったと思います。アップルスタジオに移動してから始まってテンポよくルーフトップ・コンサートになだれ込めば長めのミュージックビデオの感覚で観られたでしょう。

どうしてもストーリーを出したければポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンの対立という構図を鮮明に打ち出す感じでしょうか。ジョン・レノンは傍観者、リンゴ・スターは道化役に徹してもらって。ジョージ脱退の瞬間の映像や音声は存在しないようなので難しいんでしょうが。

『ザ・ビートルズ: Let It Be』(LIB)を観ると『ザ・ビートルズ: Get Back』(GB)が無茶苦茶わかりやすいことに気づきますが、その反面オタク(ピーター・ジャクソン)が衝動を抑えきれずに解説しまくっているようにも感じられます。饒舌すぎると言えるかもしれませんが、僕個人としてはGB派です。

とはいえ、GB制作時はできるだけLIBと同じアングルを使用しないよう心掛けていたそうなので網羅するためにLIBを見ておくのはよいでしょう。

映像についてはGBは元のフィルムの上下をトリミングしてワイド(横長映像)にしていますが、左右の見える範囲がLIBより広いことがあるのが不思議。LIBは素材の上下左右を余裕を持って切り取っているようです。とはいえ旧作よりは見える範囲が広いそうです。

『 Let It Be』旧作を知っている方の感想を拝見すると他にもオープニングやエンディング、画面切り替えなどが旧作と異なっているとのことです。ある程度フィルムの世代をさかのぼって再編集されていることを意味しますが、GBの方が解像度が高く見えます。AIの補正が強いということでしょうか…。確かにGBはノイズを除去しすぎてのっぺりしている感があります。

これまで見ようとしてこなかったにもかかわらず旧作に俄然興味が沸いてきました…。2024年正規版が見られるようになって値崩れするか、はたまた再注目されて高騰するか。

『ザ・ビートルズ: Let It Be』配信記念で公開されたミュージックビデオ。リリースされたポールの歌と演奏を録音する瞬間を収めた映像のようです。ジョンとジョージの演奏はその後差し替えられているので違和感ありますが・・・。

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