レビュー:「Magical Mystery Tour Deluxe Box Set」(内容編)

「Magical Mystery Tour Deluxe Box Set」(「マジカル・ミステリー・ツアー デラックス・エディション」北米版)のレビュー、先日の「仕様編」に引き続き内容編です。本編の感想は映画館上映のレポートをご覧ください。

特典映像

■隠し映像(イースター・エッグ)

Missing Dining Room Scene
Fish and Chip Shop
Jessie's Blues
Magic Alex Sings Walls of Jericho

トップメニューで「PLAY FILM」からさらに左か上、「AUDIO OPTIONS」からさらに右か上を選択することで4つの映像を視聴できます。バス旅行のホームビデオのような内容です。

■メイキング

Director's Commentary by Paul McCartney「監督のコメンタリー ポール・マッカートニー」
ポールが本編に合わせて語り続ける内容です。最初途切れ途切れで声も掠れており心配させますがだんだん調子を上げています。
同作品が映画「A Hard Day's Night」、夢(夜見る方)、子どもの頃の思い出、を意識して撮影されていたことがわかりました。このコメンタリーのおかげで同作品にニール・アスピノールとマジック・アレックスが登場していることを初めて知りました。
自分が煙草を吸うシーンで「悪い習慣だ。子供は真似をするな。」と言っているのには時代の流れを感じました。

The Making of Magical Mystery Tour (19:05)「メイキング・オブ・『マジカル・ミステリー・ツアー』」
関係者が当時の様子を振り返る内容です。ジョン・レノンのインタビュー音声、ジョージ・ハリスンの1993年のインタビュー映像も含まれます。ビートルズ以外の当時の出演者のインタビューが少ないのが残念でした。主要メンバーは皆他界したのでしょうか・・・。ビートルズの最初の3本の映画に出演しているビクター・スピネッティも今年亡くなりました。

Ringo the actor (2:30)「俳優としてのリンゴ」
リンゴ・スターがYesterdayを朗々と歌い上げるシーンが必見です。

Meet The Supporting Cast (11:27)「共演陣の紹介」
出演者の経歴を紹介しています。皆当時既に活躍していた俳優やコメディアンだったことが分かります。リンゴのおばさん役のジェシー・ロビンズが巧みなドラム演奏を見せ、その様子について現在のリンゴが語るシーンが目玉です。

■ミュージッククリップ

'Your Mother Should Know' (2:35)
'Blue Jay Way' (3:53)
'The Fool On The Hill' (3:05)
'Hello Goodbye' (3:24)

「Your Mother Should Know」「Blue Jay Way」はメイキング映像といった面持ちです。「The Fool On The Hill」もメイキング風ですが、こちらは街中のシーンを中心に構成され、リリースバージョンとは大きく異なります。この3曲ともリリースバージョンよりリップシンク(口パク)を積極的に行っていました。検討した結果リップシンクを止めた様子が伺えます。その主旨の事をポールはコメンタリーで語っていました。
「Hello Goodbye」は1967年にテレビ放送用に作成されたもので、ビートルズによる映画編集作業の様子とビートルズ以外によるイメージ映像によって構成されます。あまり面白いものではありません。

■削除シーン

Nat's Dream (2:50)「ナットの夢」
Ivor Cutler 'I'm Going In A Field' (2:35)「アイヴァー・カルター〈アイム・ゴーイング・イン・ア・フィールド〉」
Traffic 'Here We Go Round The Mulberry Bush' (1:53)「トラフィック〈ヒア・ウイ・ゴー・ラウンド・ザ・マルベリー・ブッシュ〉」

しっかりと演出され、一線級のエンタテイナーを起用しているこれらのシーンを惜しみなく削除してしまうのは大胆だと思いました。ビートルズの気まぐれに振り回されたかっこうでしょうか。

ブックレット

解説文5ページ、当時の行程表(領収書など当時使用した書類の写真入り)、キャスト紹介、公開当時のメディアの反応が主な内容で、写真の占める割合が多いです。行程表から、バスツアー終了1ヶ月以上経ってから本編冒頭のシーンを撮影したことがわかります。帳尻合わせに苦労した結果でしょうか。その翌日に行われた本作品最後の撮影はフランスで行われた「The Fool On The Hill」でした。

EP復刻版

レコードプレイヤーを持っていないためEP盤は聴けていません。ジャケットにあらすじがイラスト入りで載っていますが、実際の本編映像よりシーンが多く順番も異なります。興味深いのはそれら本編映像に存在しないシーンが今回特典映像として公開されている点です(ジェシーおばさんのドラム演奏シーンなど)。このEP発売当時を知っている人にとっては、あらすじ上だけの話と思いきや実際に映像が存在したことになり驚きはひとしおだと思います。
当初このあらすじどおりに編集していたものをところどころカットしたのがリリースバージョンということなのかもしれません。あらすじにしか存在しないシーンは他にもまだあるので、同様に未公開映像として眠っている可能性があります。いつかあらすじどおりに構成した完全版をリリースしてほしいものです。

まとめ

デラックスエディションはその価格の高さが物議をかもしていますが、封入物は当時の時代背景やビートルズの意図を追体験できる内容になっているため本編をより深く味わうことの一助になると思います。その主旨からすれば、北米版は価格も安く封入されているDVD/Blu-rayはいずれも日本の機器で再生できるのでお勧めです。
全体を見て感じたのは制作する側からすれば非常にコストパフォーマンスの悪い作品だということです。このお金の使い方はビートルズだからできたことであり、だからこそビートルズにしかできない作品になったわけで、よくぞやってくれたという気持ちです。

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