舞台『BACKBEAT』を通じてビートルズに興味を持たれた方に向けたビートルズ鑑賞ガイド第三弾にして完結編、「演奏」編です。※2019年公演を元にしています。
楽器
ジョン・レノン
ジョン・レノンの楽器と言えばRickenbacker(リッケンバッカー)の小ぶりなギター、325モデルを思い浮かべる方が多いと思います。ハンブルク時代から使用し始めました。デビュー後、アメリカ進出のタイミングで新調しています。
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1本目 |
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1本目のパーツを交換し、色を塗り替え |
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2本目 |
左手で押さえる部分の間隔が極端に狭い(スケールがショート)ので一般的には弾きにくいとみなされるギターですが、ジョンのかき鳴らすスタイルには合っていたのでしょう。
『BACKBEAT』のジョン役、加藤和樹さんが使用したのは同じRickenbackerのギターではあるものの325ではなく620という普通のスケールのギターです。弾きにくさを嫌ったのかもしれません。小ぶりなボディで女性にも人気で、椎名林檎さんが使用したり詞の中に登場させたりしたことでも有名です。色は限定色のRuby(ルビー)で樹脂製のパーツ部分が鏡面加工されているタイプです。『BACKBEAT』の舞台上で照明に反射してまぶしく感じた方もいると思います。
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Rickenbacker 620 Ruby Mirror |
ポール・マッカートニー
ポール・マッカートニーの楽器と言えばHonfer(へフナー/ホフナー)のバイオリンベース500/1モデルです。もはやビートルズの代名詞とも言える楽器です。ジョン同様、デビュー後に一度買い換えています。
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1本目 |
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2本目。世界で最も有名なベースのうちの1つ |
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現代に至るまで2本目を使用(写真は2018年日本公演) |
『BACKBEAT』のポール役のJUONさんはHofnerのバイオリンベースの最廉価モデル「Ignition Bass」を使用しています。新品で5万円くらいで買えます。
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Ignition Bass(左用) |
風格に劣るのでもう少しこだわっていただきたかったところです。現行のフラッグシップ「Vintage 62 World History Premium 3rd」ですと20万円超えますが、ポール使用器になかなか似ています。
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Vintage 62 World History Premium 3rd |
JUONさんがバイオリンベースを弾くのは舞台の終盤で、主に使用しているのは日本のメーカー、Tokai(東海楽器)のESタイプのギターです。
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TokaiのES-148S。JUONさんが使用しているのはこれの左用か? |
ポールがこのタイプのギターをハンブルク時代に使用していたことは無いと思いますが、1960年代初頭のイメージを壊さないルックスで、左用が調達できたものが選ばれたと想像しています。
ジョージ・ハリスン
ジョージ・ハリスンはリードギタリストということでギターをとっかえひっかえ使っていましたが、ハンブルク時代というとResonet Futurama(レゾネット・フューチュラママ)が思い浮かびます。
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ジョージが弾いた現物 |
ちょうどこのギターは2019年6月12日にオークションで出品されましたが約2700万円の最低落札価格に届かず落札されませんでした。ジョージの現物でないとしてもこのタイプのギターは手に入らないので、『BACKBEAT』のジョージ役、辰巳雄大さんはGUILD(ギルド)のJETSTARを使用しています。
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GUILD JETSTAR |
なぜこのギターを選んだのかは不明です。
スチュアート・サトクリフ
スチュアート・サトクリフが使用してたベースは後のポールのベースと同じメーカー、Hofnerの500/5です。
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ポールのベースと共存することも |
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復刻モデルの「Reeperbahn」 |
当時の仕様を再現した復刻モデルも2018年に発売されましたが数十万円します。さすがに手が出なかったのか、『BACKBEAT』のスチュ役の戸塚祥太さんはルックスのイメージが近いEpiphone(エピフォン)のRivoliを使用しています。
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Epiphone Rivoli |
ピート・ベスト
ピート・ベストは当時、イギリスのPremier(プレミア)のドラムを使用していたようです。リンゴ・スターもそうでした。
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ピート使用器に近いとされるPremierのドラム |
『BACKBEAT』のピート役、上口耕平さんはLudwig(ラディック)のドラムセットを使用しています。ビートルズ時代のリンゴが愛用していたことでも有名なメーカーです。僕はドラムの事はあまり詳しくないので、
甲虫楽団のドラムのまみこ☆に上口さんのドラムの写真を見てもらったところ、まずスネアドラムの設置位置が極端に高い事に注目していました。上口さんはピートの撮影用ドラムセットを真似したのではないか、というのがまみこ☆の見解です。確かに、よく似たセッティングの写真がありました。
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上口さんはこの写真のピートを参考にした? |
スネアドラムの設置位置高い、タムタム(バスドラムの上に2個程度設置する)無し、シンバル1枚(2枚が基本)、などの共通点があります。なお、ピートの他の演奏写真を見るとタムタムがあるので、このセッティングは撮影用の演出である可能性があります。
鈴木壮麻さんのTwitterにバンドセットの写真が投稿されました。
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鈴木壮麻さんのTwitterより |
ギターアンプがVOX(ビートルズと同じ)と、RolandのJCであることがわかります。
以上の楽器解説は『BACKBEAT』の報道機関向け写真を見て書いているのですが、実際のステージには他の楽器も登場しています。『BACKBEAT』の演出を担当している石丸さち子さんのTwitterに用意されている楽器の写真が投稿されました。
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石丸さち子さんTwitterより |
奥の楽器4台がこの記事でも紹介したメインのギター/ベースです。トラブル対応用に複数のギターを用意しています。バイオリンベースの控えは日本のメーカーGreco(グレコ)のものです。その他Rickenbacker 330(赤いギター)、ジョージが愛用したメーカーのGretsch(グレッチ Grecoと330の間の銀色のギター)、ギターの大定番ストラトキャスター(330の手前)が見えます。中盤にもう一本見えているHofnerのベースは、加藤和樹さんと戸塚祥太が並んでいる宣伝用写真で戸塚祥太さんが持っているHofnerのHCT500/2 Club Bassかもしれません。
ビートルズの楽曲の生演奏
ビートルズの楽曲を人前で演奏することを主目的とするバンドは世界中にありますが、日本にはとくに多いと思います。演奏や歌の分担をビートルズ本人達と一致させるスタイルがほとんどで、そういったバンドを日本では「コピーバンド」と呼んでいます。
※当ブログにおける「コピーバンド」の定義の詳細は→こちら
つまり、コピーバンドは『BACKBEAT』のようにビートルズを演じているわけですが、どの程度なりきるかによって流派が異なります。まず、演奏内容については原曲のミスのレベルまで再現にこだわるバンドもいます。演奏の次は楽器を本人に似せ、次は衣装・・・とエスカレートしていきます。ポール役が左利きで演奏するかどうかが大きなターニングポイントです。『BACKBEAT』のJUONさんのように本来右利きで演奏してきたのに左利きに転向する人も多いです。楽器も買い直しです・・・。
さらにはカツラやメイクまで施してMCも英語で行うというバンドまでいます。ここまでくると「トリビュートバンド」と定義する方が一般的で、海外にはこのタイプのバンドが多くプロで活動しており、来日公演を行うこともしばしばです。
また、ビートルズは活動時期によって音楽性を大きく変えていますので、 各時期に特化したバンドも多いです。革ジャンに身を包んでビートルズがデビューする前の曲を中心に演奏するバンドもあります。そういったバンドであれば『BACKBEAT』ファンの方もとっつきやすいでしょう。
日本で一番有名なビートルズコピーバンドは「The Parrots(ザ・パロッツ)」です。六本木のライブハウス「Abbey Road(アビーロード)」に連日出演しており、満席になることも多いです。海外のアーティストが日本公演の際に同店を訪れることが定番になっていることから、どれだけのステイタスがあるか伺えます。ポール・マッカートニーの来日公演の際にポールの妻の誕生日パーティーに招かれてポール本人の前で演奏したことまであります(当時と今のメンバーは一部異なります)。
パロッツは演奏・楽器・衣装の再現度はそこそこにとどめ、プロとしての高次元でのクオリティの維持とビートルズの楽曲のエッセンスを表現することに重点を置いているように見えます。
六本木アビーロードに興味を持たれた方は以下の投稿もご覧ください。
ライブレストラン・六本木アビーロード入門 ビートルズファンの期待を裏切らない
東京圏ではパロッツの他に2~30名ほどビートルズコピーバンド界隈でプロ活動している人がいる印象です。その中にはメジャーシーンでの活躍経験がある方も多く、廣田龍人さん(ジョン担当が多い)と伊豆田洋之 さん(ポール担当が多い)が筆頭です。そういったプロの方の演奏は説得力と迫力があり、きっとビートルズの曲の魅力を引き出してくれると思います。
日本ではアマチュアコピーバンドの発表機会も多いです。着席型で対象年齢層が高めのライブハウスでは月1回程度のペースで「ビートルズデー」などといったビートルズコピーバンドが出演するイベントが開催されたりします。昨今東京では下北沢のライブハウス『BREATH(ブレス)』がとくに精力的で、店外も含め様々なビートルズ関連のイベントを開催しています。店外イベントは入場無料が通例で、毎年7月の下北沢音楽祭内でイベント開催することも多いです。
その他、お店のスケジュールを確認いただければご予定の合うイベントもあると思いますので是非一度足をお運びください。アマチュアコピーバンドはビートルズの曲が好きというモチベーションだけでやっていますので、ビートルズの曲の演奏に興味がある方に見ていただけれは共感できる場面も多いと思います。
我々甲虫楽団はと言えば、ビートルズの中後期をターゲットにし、歌や演奏の分担はあまりビートルズを踏襲せず、楽器はそこそここだわり、衣装は雰囲気程度に留め、その分とことん音の忠実再現を追及するというポジションで活動しています。 『BACKBEAT』でビートルズ曲の生演奏に興味を持った方にいつか見ていただけることを楽しみにしております。
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