レビュー:『ザ・ビートルズ:Get Back』Part 3 コメディ回

11月27日からディズニープラスで配信開始された 『ザ・ビートルズ:Get Back』の第3話「Part 3」の感想を完全ネタバレでまとめます。Part 2(感想は→こちら)はルーフトップ・コンサートの準備が始まったところで終わっています。

Part 3の半分くらいは「スペシャル・エディション最速プレミア上映会」で上映された内容なのでそちらのレポートも合わせてご覧ください→こちら 

コメディ回

もちろんPart 3はルーフトップ・コンサートがメインで全体の3分の1近くを占めますが、それ以外の部分はとくにお笑いの要素が強いと感じました。

安定の1エピソード1奇声のオノ・ヨーコ、とことんオチに使われるリンゴ・スター、などなど。これはルーフトップ・コンサートの緊張感と対比させる意図もあるでしょうし、これまでのPart 1~2で5時間以上ビートルズと過ごしてきた視聴者なら現場と同じテンションで一緒になって笑えるだろうということかもしれません。

グリン・ジョンズ

録音エンジニア(実質的にはプロデューサー)であるグリン・ジョンズの奇抜なファッションも笑いどころです。グリンが業務連絡を口にしてビートルズの演奏を止めてしまうところは彼がいじられキャラだったと想像させます。

彼はPart 1ではビートルズを前に萎縮している様子でしたが、一緒に仕事をしていくなかでメンバーから認められるようになり、演奏内容に対する提案も通るようになって次第に調子に乗っている様子がかわいいです。彼は3か月前に『レッド・ツェッペリン I』のレコーディングを担当していたので、「なんだビートルズ大したことないじゃん」と思ったのかもしれませんが…。

発言力を増していた彼はアラン・クラインについてジョンに熱心に警告していましたが、ジョンが聞き入れなかったのは残念でした。

ジョンとリンゴの覚悟に感動

当初のライブという構想を実現するため、または現時点での目的である映画の完成のためにルーフトップ・コンサートしか選択肢が無くなった状況でしたが、ポールは踏ん切りがつかない様子でした。

そんなポールを説得しようとするジョンに感動しました。当時ジョンは薬物中毒で気力や判断力を失っていたという説がありますが、もしそうだったとしてもこの瞬間だけは正気だったと思います。

とどめの一撃はリンゴの「僕はやりたい」。自己主張する場面がほとんど無く、あるとしても面倒な事を回避したい場合に限られていたので今作屈指の名ゼリフでした。思いがけない人からの思いがけないひとことにポールも呆気に取られているようでした。

その後の「Dig It」の演奏で歌詞代わりにセットリスト候補を叫ぶジョン。明確な言葉は無くてもポールや他のメンバーを鼓舞する非常に感動的なシーンでした。対するポールは目線はうつろでしたが次第に決意を固めている様子でした。最後は「多分ね やるよ」と言ってその日のスタジオを去りました。

ルーフトップ・コンサートの感想については「スペシャル・エディション最速プレミア上映会」レポートをご覧ください→こちら 

決めないビートルズ

それにしてもPart 1~3通してポールが煮え切らないのがもどかしかったです。ビートルズの名に恥じない完璧なものを作り上げたいというモチベーションは一貫しているのですが、そのために何をどうするのかはっきりせず、くどくど語りますが結局何をしたいのかわかりません。せっかく他のメンバーは決定事項に従う姿勢を見せているのに余計なストレスばかり増えてしまいます。

ポールが語っていた「スケジュールを作って毎日目標を達成していく」というのはすばらしい考え方なので、それに賛同しなかった他のメンバーが悪かった点もあります。決断を迫られても先送りにする(「今日は決めない」と豪語するなど)のはジョンも同様です。

そのジョンを筆頭にセッションを通じてふざけすぎで一向に前に進まないので、スタッフもうんざりしている様子でした。やはりブライアン・エプスタインのように上から指示してくれる人が必要だったのだろうなと思います。

ゲット・バック・セッション後の展開

プロジェクトが終わりになるにつれてその先の展開の話が出てきます。ここはいくつものIf(もしも・・・)がちりばめられていて、見ている側は胸を締め付けられます。

もしもビリー・プレストンを従えてツアーを行っていたら、リンゴが映画撮影から復帰後にすぐ曲を追加してアルバムを発売していたら、ビートルズ在籍中にジョージがソロアルバムを発売していたら、ジョンがアラン・クラインを拒絶していたら、・・・ビートルズ解散を先延ばしにできる選択はたくさんありえました。

ディレクターズ・カット版発売に期待

圧倒的な追加映像を収録したDVD/Blu-rayの発売がすでに噂されています。ピーター・ジャクソン監督は『ロード・オブ・ザ・リング』でもかなり映像を追加したセットを発売していたので期待は高まります。以下は是非お願いしたいです。

  • ルーフトップ・コンサート マルチアングル版(音は演奏&歌だけ。アングルによって音像を変えない)
  • 後年正式発売されたテイクの映像が残っている場合はその完全版
  • セッション最終日の映像完全版(本編ではスタッフロールのおまけだった)

これらの発売を待たずに配信分だけでもまだまだ楽しめます。

コメントを投稿

5 コメント

  1. 本編 Part3 を観て気になったことがあったので、もしお判りならご教示いただきたいと思い、これを書いています。
    ルーフトップでの Dig a pony の直前、「モーリン? ……モーリン?」と聞こえる箇所がありますよね。あれはリンゴが言っていると思っていたんですが、映像を観る限り、彼がモーリンに呼び掛けている様子はうかがえませんでした。誰か別の人の声だったということでしょうか。いや、そもそも、本当に「モーリン?」と言っているのでしょうか(それすら自信がなくなりました)。
    もしご存じであれば、ご回答くださいませ。拝

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。

      見てみましたが「モーリン」という言葉は確認できませんでした。
      近い言葉としてはRolling(カメラのフィルムが回る=撮影)でしょうか。

      英語字幕をオンにして見るとわかるかもしれません。

      削除
  2. ご回答ありがとうございます。
    なるほど、「Rolling」かもしれませんね。
    ちなみに、この声はアルバム『LET IT BE』の「Dig a pony」の冒頭でも聴くことができます。ギター(?)の一音を挟んで、二回です。こちらのほうがより鮮明に聴こえると思います。よろしければご確認ください。では。m(_ _)m

    返信削除
    返信
    1. リンゴのHold it!の後でしょうか。それらしき音声は確認できませんでした。詳しい方の登場を待ちたいと思います!

      削除
    2. ありがとうございました。

      削除