レポート:『ザ・ビートルズ:Get Back』スペシャル・エディション最速プレミア上映会

2021年11月25日『ザ・ビートルズ:Get Back』第1話がディズニープラスで配信開始されました。同日全体を約100分にまとめたスペシャル・エディションの上映会が東京・TOHOシネマズ 日比谷で開催されました。運よく参加できましたのでレポートします。

左後ろに見えるのが東京ミッドタウン日比谷
 
スクリーン5
なかなか良い席でした

最速プレミア上映会イベント概要

【日 程】2021年11月25日(木)
【時 間】開演18:20〜  20:30 終映
【会 場】TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン5
【ゲスト】ハマ・オカモト・中川絵美里(TOKYO FM THE TRADパーソナリティ)
     PUFFY(大貫亜美・吉村由美)
【上 映】『ザ・ビートルズ:Get Back』特別映像(2D字幕版)上映(約100分) 

今回主に二つのルートで参加者を募集していました。

TOKYO FM 150名
ディズニープラス  20組40名

他にも招待されるルートはあったようで、全部で300人以上はいたと思います。

『ザ・ビートルズ:Get Back』配信開始を記念して、カバーでも知られるPUFFYが一夜限りの最速上映会に登壇! (ディズニープラス)
PUFFYとハマ・オカモト登壇「ザ・ビートルズ:Get Back」上映会で大貫が明かしたジョンとの接点(ナタリー)

トークショー

ゲストのパフィーといえばプロデューサーの奥田民生さんが手がけた「これが私の生きる道」のビートルズオマージュが真っ先に思い浮かびます。また、「Lucy In The Sky With Diamonds」をカバーしたことがあり、これはジョン・レノン作の曲からカバー曲を選ぶ際に二人の意見が一致したものだったそうです。その程度の由縁で呼ばれたのだろうなと想像していたら、大貫亜美さんのお父様はホテルマンでジョン・レノン&オノ・ヨーコの応対をしたことがあってジョンのサインを持っているという、この種の宣伝イベントに似つかわしくないガチなエピソードが飛び出しました。

このトークの様子は12/8 TOKYO FM "THE TRAD"で放送されるそうです。

今回このTOHOシネマズ 日比谷 スクリーン5が選ばれたのは4K UHD & Dolby ATMOSに対応しているからだそうです。家庭でも対応機器であれば真価を発揮できると宣伝していました。ピーター・ジャクソン監督の日本向けビデオメッセージ(「ビートルズ日本公演に行った人は今日来てますか?」・・・居ない様子でした)に続いてその後放送されたスペシャル・エディション(通称100分バージョン)は単なるダイジェストではなく、前半はピーター・ジャクソン監督による解説付きでした。

以下、本編のネタバレを含みます。なお、僕は映画『Let It Be』を通して見たことが無いので差はわかりません。

 スペシャル・エディション前半

まずはピーター・ジャクソン家のホームビデオから始まります。彼はかなりオタク気質のようでいかに自分がビートルズファンか、創意工夫とテクノロジーでいかに今回の映画の品質を向上させたか、語りたくてしょうがない感じでした。映画「Let It Be」相当の映像からポールの顔にズームして解像度がグッと上がる演出に監督の自負が現れています。確かにすごかったです。健康食品のCMみたく「使用前」の「Let It Be」の映像を実際以上にチープに見せていないか心配になるくらいでした。さらにモノラル録音をAIで各楽器に分離して見せているのも驚きました。ただ、旧来の技術(2009年のゲーム「Rock Band」等)と同様、ベースの音はやはりうまく抽出できないな、と感じました。

100分バージョンでの説明と少し違いますが以下のようなサンプルで解説されました。

スペシャル・エディションの前半には監督本人がたびたび登場しますが、切り替わるごとに抱えるビートルズ楽器(おそらく自身のコレクション)が変わるのも笑わせに来ていました。リッケンバッカー、ヘフナー、グレッチ、カジノ、ストラトキャスター(Rocky)、レスポール、などその数10本以上。ただ、ビートルズ演奏マニアから言わせてもらえば楽器の仕様の追い込みがまだまだです!なお、監督が登場するのはこのスペシャル・エディションだけで本編には登場しないそうです。さすがに本編では自重して、このエディションで思う存分語ったということでしょう。

ピーター・ジャクソンのゲット・バック・セッション観としては、「Hey Jude」のプロモーションビデオでライブの楽しさを再確認したことがゲット・バックのプロジェクトのきっかけ(だから監督はマイケル・リンジー=ホッグが続投)/当初はライブを録音してライブアルバムを作ろうとしていた(なのでアルバムとしての慣例で14曲必要)/ルーフトップ・コンサートはあくまでレコーディングだった、という主張でした。(追記:本編第1話見たらこの内容がそのまま字幕で説明されていました)

語りながら少しずつセッションの映像が登場していましたが、ここでいったん監督は引っ込んで1969年1月27日の様子がじっくり投影されます。それは生々しい創作の現場でした。ジョージ・ハリスンがおぼろげながら浮かんできた「Old Brown Shoe」をピアノを弾きながら探っています。ときおりビリー・プレストンにコードのアドバイスを求めています。名曲の予感にワクワクドキドキしているジョージがかわいいです。ポールもそれに付き合おうとドラムに座りジョージを鼓舞します。

このゲット・バック・セッションはバンドメンバーが一斉に楽器演奏をして歌うので、自分の声や演奏が聴こえないと上手にパフォーマンスできません。しかしながら、けっして広く無い部屋にビリー・プレストン含む5人がひしめき合っているので、環境はあまり良くなかったようです。

ジョンが神経質そうに苦情を出してジョージ・マーティンが何とか改善しようと奔走していました。「自分の音が聴こえない」「お前の音が大きすぎる」というのは現代のアマチュアバンドと同じだなと感じました。ジョージ・マーティンは最後にリンゴにリクエストが無いか問いましたが、ジョンが「リンゴは大丈夫」と言ってしっかりリンゴをオチに使っていました。

その後メンバーのチューニングタイムになります。ビリー・プレストンのエレキピアノを基準にするのでビリー・プレストンに音を出すよう要求するのですが、ジョージが「単音よりフレーズの方が音を合わせやすい」と言っているのはなるほどなと感心しました。

ひとしきりチューニングが完了した後、グリン・ジョンズに「ポールのベースのチューニングがズレている」と指摘されてポールが憮然とするのも笑いどころでしょう。ちなみにルーフトップ・コンサートでもポールのベースのチューニングがズレています。ヘフナーのバイオリンベースはチューニングが合わせにくい、とポールを擁護しておきます。

ルーフトップ・コンサートで終了

スペシャル・エディションの後半は1969年1月30日のルーフトップ・コンサート全編でした。今回3部作の一番の売りを惜しげもなく出しています。確かに屋上での映像は余すことなく使用されていますが、旧版『Let It Be』と同様、街頭インタビューや警官とのやりとりを加えて、複数のアングルを同時にはめ込む演出でした。Blu-ray/DVDで発売されるとしたら音は演奏だけでマルチアングルで切り替えられる形態を期待したいです。

感想をまとめます。

  • ポールがルーフトップに登場してからすべての曲を演奏し終えるまでの間、映像素材の画角がワイド(元素材の上下をカットして実現)では無くなる。貴重な素材をカットしたくなかった?
  • ジョンが興奮してかなり気合を入れている。ライブでここまで気合入れたのはこれが最後では無いか?
  • 1回目の「I've Got A Feeling」のポールのテンションがすごい、ここがルーフトップ・コンサートのピークだったと思う。1階にいる警官の様子との対比がコミカル
  • 「I've Got A Feeling」の"somebody who looked like you"を歌い切ったあとの照れ隠しのようなコミカルな動きは近年のポールと変わらない
  • 2回目の「Don't Let Me Down」で ポールは横目で警官の姿を見つけて思わず声を出して笑っている。それを機に全員のテンションは上がるが演奏はまとまりを欠いていく。それ以前にジョンが歌を失敗してポールは残念そう(ジョンは1回目も歌詞を忘れるという失態を演じている)
  • ポールは何回かはきっと警官に向かって「Get Back」 (帰れ)と歌っている
  • ルーフトップ・コンサートの終わりが唐突な感じがしたが誰か「次の曲で終わり」と指示したのだろうか?
  • 終わった後メンバーで地下のスタジオに集まって興奮気味に語り合っている。やり遂げた後に饒舌になるこの気持ちよくわかる
  • 地下で早速録音音源を皆で聞いて盛り上がるが、ジョンは1回目の「Don't Let Me Down」の歌詞間違いという現実を突きつけられて、周りに「何も言うなよ」というプレッシャーをかけている

ルーフトップ・コンサートが終われば後はおまけという位置づけなのか、セッション最終日となる翌日の映像はスタッフロールの一環として登場し、このスペシャル・エディションは終了しました。

追記:ルーフトップ・コンサートからスタッフロールまでの流れは本編のPart 3と同じようでした。クライマックスであるルーフトップ・コンサートが終わったのにダラダラ続けるのは演出上良く無いと判断したのでしょう。


映画館で観られて光栄でした。映像も音もすべてきれいで迫力あり、よくぞ50周年という最初で最後かもしれないチャンスに技術とこだわりを持ったピーター・ジャクソンを選んでくれたものだと感謝したい気持ちでいっぱいです。気付かずにサラッと見てしまいましたが、音源に比べたら圧倒的に映像の量は少ないはずで、そこを上手に編集して違和感無く成立させているのだと思います。

メンバーに対する印象は書籍版を読了した際(くわしくは→こちら)とあまり変わりませんでしたが、映像を見てより「幼い」 と感じました。とくにジョンとジョージ。彼らはまだ20代、ビートルズ旋風で世界の期待と希望を背負わされて対外的には虚勢を張っていたのだろうなと思います。スタジオ内で身内に見せる無邪気な顔はけっこうデビュー前から変わっていないのではないかと想像させます。

これから配信の第1話を見ようと思います。

追記:第1話見ました。感想まとめは→こちら

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2 コメント

  1. こんにちは。久しぶりにコメントします。

    パート1見ました。

    ピーター・ジャクソンの編集能力すごいです。コアなファンに配慮した傑作になる匂いがただよってます。ただし練習風景なので一般のお客にはややキツイと思います。

    印象深いシーン

    リンゴがピアノで作曲中のポールにピタッと寄り添うところ。うっとり聞くリンゴにポールもまんざらではなさそう。

    ゲット・バックの歌詞が移民排斥運動に由来することをソンタク無しに描いたところ。

    甲虫のべさんはどんな感想をお持ちでしょうか。

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    1. marrさんコメントありがとうございます。

      実はまだ第1話見れていないので、見たら各話感想をブログに書いていきたいと思います。よろしければまたお越しください。

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