2015年5月11日月曜日

詳報 2015年ポール・マッカートニー日本武道館公演 (2)

※2017年4月25日日本武道館公演については→こちら
※レポート各回へのリンク→ 1 2 3 4 5

ポール・マッカートニー日本武道館公演詳細レポート第2弾、いよいよ開演までたどり着きました。ここからは全曲感想と全MC網羅で行きます。カタカナで日本語を表記したMCはポールが発言したそのままです。英語のMCは聴き取れる範囲で意訳しました。
当初全3回の予定でしたがもう少し長くなりそうです・・・。
ポール・マッカートニー登場

ポール登場

暗闇の中から普通にポールが歩いてステージにやって来た。ドーム公演であれば、まずはアリーナ前方の観客がポールの登場に気づき歓声を上げる→少し間を置いて両脇のスクリーンにポールが映し出され会場全体が盛り上がる、という演出だが、今回はスクリーンは無くそもそもポールが登場した瞬間にほぼ全ての観客がそれを視認するので会場全体の興奮が一気に頂点に達した。この感覚は鳥肌ものだった。
衣装のデザインはドーム公演と同じだがジャケットの色は初となる深緑だった。ビートルズ日本公演のダブルのジャケットへのオマージュと見るのは考え過ぎだろうか。今回のツアーで特徴的なこぶしを突き上げるポーズで報道カメラの需要に応えたあと、ポールは斜め後ろとなる北東や北西にも念入りに手を振る。ドラムのエイブがハイハットを刻み出し、一旦エイブの方に向いたポールは踵を返して歌いだした。

1曲目予想

ポール武道館公演が決まった時からオープニングに演奏される曲は注目の的だった。ビートルズ日本公演1曲目のRock and Roll Musicと予想(願望?)する人も多かったが、さすがにジョン・レノンボーカルのカバー曲を1曲目に演奏するとは考えにくいし、ポールもそこまで大衆に迎合しないだろう。2015年ドーム公演の基本形と同じMagical Mystery Tourということは無いだろうが、空気を読まない(読む気が無い?)ポールのこと、Eight Days a Weekということは充分ありうる。
2014年来日時にバンドメンバーのブライアン・レイがダブルネックのギターを持ち込んでいたらしく、武道館公演ではVenus and Mars - Rock Showのメドレーを演奏する予定だったのではないかという憶測が流れた。この曲名を冠した記録映画「Rock Show」は日本でも人気があり(今回の来日中もリバイバル上映)、ウイングス全盛期の1975年に来日公演が夢と消えた日本にとっては特別な曲である。是非演奏して欲しかったが、今日ステージ上のブライアンは普通のギターを持っておりこの可能性は消えた。
 ビートルズ日本公演を意識した選曲であれば、当時も今も演奏しているDay TripperやPaperback Writerは充分あり得る。Paperback Writerならポールはエピフォン・カジノのギターを持っているはずだが今ステージ上にいるポールはヘフナーベースを抱えている。この布陣でPaperback Writerを演奏したらすごいことだが、それは無いだろう。
あるいは1980年幻のウイングス日本公演の1曲目だったであろうGot To Get You Into My Lifeか。これは今日のサウンドチェックでも演奏していたので一気に確率が高まった。
会場が注目する中、1 2 3 4 1 2 3と口でカウントしたポールが歌い出したのは・・・

Can't Buy Me Love

今回の日本ツアーを特徴づけるこの曲だった。昨年までのOut Thereツアーでは演奏されなかったが、今回の日本ツアーでは登場箇所は異なるものの結局5公演全てで演奏したことになる。武道館公演の1曲目となったことで、今回の日本ツアーはCan't Buy Me Loveと共に語り継がれることになるだろう。歌から始まるこの曲は1曲目として効果的で会場は瞬時に盛り上がった。この曲を選んだのはポールが今日のショーを仰々しくしたくないという思いの表れのように感じた。

ポールの第一声は「コンバンハ、トーキョー」「ブドーカンヘヨウコソ」「今夜は楽しもうぜ」
「ブドーカンヘヨウコソ」 という言葉を聞いて、多くの人は以下のいずれかを感じたと思う。
  • 「ブドーカン」のイントネーションが改善している
  • ポールが自宅に招いてくれたような温かい気持ちになる
  • 「ようこそ」と言うべきは自分たちの方だ。よくぞ来てくれた
  • 「ライブハウス武道館へようこそ」という言葉を思い出した
 最後はまさにそうで、過度な演出や装飾が無くむき出しの演奏に会場全体が接し、その反応をポールも直に感じとっているだろう様子がライブハウスのようだと思った。
今日はどんな奇想天外なセットリストになるだとうとワクワクしているところに始まった2曲目は・・・。

Save Us

Out Thereツアーの2曲目と言えばこの曲。この時点で少しがっかりした人も多いだろう。やはり今日もツアーの一環なのだと。
 2曲目にはふさわしい小品だと思うが、いかんせんイントロのギターのフレーズがダサい。アルバム「NEW」に収録されている元曲では無機質な感じがしてしっくりくるのだが、ライブでのラスティ・アンダーソンのギターは熱すぎて気恥ずかしくなってしまう。歌い出しのメロディは動きが激しく難しそうで、今日も少し失敗していた。このように問題も多いと感じられる曲だが、テレビ報道では必ずと言っていいほど取り上げられる(ライブの冒頭2曲が報道用に公開される決まりらしい)ので慣れてしまった。
歌い終わって会場を一周見渡すポール。
「サンキュー、アリガト、サンキュー」「ヒサシブ(ル)、ヒサシブリ、ブドーカン」「ここには僕にとっても良い思い出がたくさんあるよ」「今夜ここで楽しいひと時を過ごす準備はいいかい?」(観客「イェー!」)「準備はいいかい?」(観客さらに大きく「イェー!」)「(笑って)いい感じ!」
通常ではこの後Can't Buy Me Loveだが今日はもう演奏してしまった。果たして・・・。

All My Loving

2013年日本公演の3曲目で、今回も東京ドーム2日目で演奏したこの曲。妥当だろう。ステージ床の映像が自分の席からよく見えた。
日本武道館はドームに比べて音の輪郭がはっきり聴こえており、ボーカルのニュアンスやベースの動きがよくわかる。歌はまだエンジンがかかっていないようだが、間奏前には「オーライ」と言うなど気分は乗っているようだ。Get Backが演奏されなくなったことにより、ブライアン・レイがギターソロを弾く数少ない曲の一つとなっている。
 「サンキュー、オーケー、オーケー」「さて、今日は古い曲、新しい曲、中くらいの曲も演奏するよ。次は古い曲、ジョンと一緒に曲作りを始めた頃の曲だ」

One After 909

ビートルズのアルバム「Let It Be」収録バージョンを参考にしているが、テンポは遅く重みが増したアレンジ。ドーム公演では演奏しておらず今日1つめのサプライズ選曲となった。
今日のライブは今年のバレンタインデーにニューヨークで突如行われた小規模ライブ(24曲演奏)が参考になると思っていたのでその時にも演奏していたこの曲が今日演奏されることにさほど驚きは無かった。4月25日東京ドームでのサウンドチェックでも演奏されていたのでなおさらだ。
この箇所は通常ではJetを演奏していた。 それをこの曲に差し替えたのはライブの雰囲気をコンパクトにしたかったのと喉の負担を減らしたかったせいだと想像した。JET!の観客の叫びは盛り上がっただろうからそこは少し残念だったが、これはこれで良いと感じる。
いつも通り4曲目の演奏後にジャケットを脱ぐポール。昼間の夏日のせいだけではないだろう、会場の熱気がすさまじく、ここで自分も上着を脱いだ。レスポールを持つポール。やはり次はあの曲か・・・。
「今夜は素晴らしい観客だ」「準備はいいかい?」(観客「イエー!」)「知ってた」

Let Me Roll It

多くの人の想像通りこの曲を演奏した。決して人気が高い曲では無いのだが1993年にツアーで披露して以降頑なに演奏し続けている。観客も慣れたもので、ここで一息ついて写真を撮り始める人が多かったように思う。
 「ナツカシー」「(歓声に対して応えて)イェー!聞こえてるよ」「オーケー」「ここに戻ってこれて嬉しいよ」「ずいぶん変わったものだ。今の観客は『クレイジ~!』って感じだけど、当時の観客はお行儀よく拍手するだけだった(拍手の形態模写×3)それも素敵だったけどね」
唐突な 「ナツカシー」には観客も一瞬反応が遅れたように思う。ポールがそんなことを言うとは想像していなかった。リップサービスでは無く、ビートルズ武道館公演の事は実際に覚えているのだろう。
今日は大型スクリーンが無い、すなわち日本語翻訳字幕も無いので、ポールも開き直って自由に英語を話しているように見える。これまでのところ英語のMCについてこれていると思ったのかもしれない。進行に足かせが無いのは歓迎すべきことだ。
ここでエピフォン・カジノのギターに持ち替えて・・・

Paperback Writer

ビートルズ日本公演でも演奏した曲。その点について言及は無かった。「今日はマイクスタンドの調子がいいね」とでも言えばサイコーに盛り上がったと思うがポールはそもそも当時のセットリストを認識しているだろうか。いつものお約束の「このギターはこの曲のレコーディングに使用した」というMCも無かった。今日はバンドメンバーのコーラスが良く聞こえる。最後はいつも通りわざとギターをアンプに向けてフィードバック音を発生させていた。
グランドピアノに移動したポール。
 「オーベイベー」「ブドーカン!」「ツギノウタハ オクサン ナンシー ノ タメデス」「今夜この歌を君に捧ぐよナンシー」

My Valentine

ドーム公演では定番のトイレタイムだが、今回はあまり席を立つ観客はいなかったように思う。この曲に理解を示している人が多かっただろうし、高いチケット代の元を取るべく一瞬たりとも見逃さないと考えた人もいるだろう。武道館のスタンドは急斜面で席も狭く、移動するのがはばかられただけかもしれないが。
イントロでは気持ちよさそうに「イェイェイェ」アウトロではしみじみと「マイ バレンタイン」とつぶやくポール。今日はこのようなアドリブが多い。気持ちが乗っている証拠だろう。
2011年作なので現在のポールに見合った曲として安心して聞けた。スクリーンが無いのでジョニー・デップとナタリー・ポートマンの豪華な映像が流れることも無く、会場全体が歌に集中していた。
「サンキュー オーケー」「次はウイングスファンのための曲です」

Nineteen Hundred and Eighty-Five

Out Thereツアーで再評価された1曲。少なくとも自分にとってはそうだ。作曲当時10年以上未来だった1985年の事を歌っていて、それが既に現在から30年前の過去というややこしい構図だが、古さを感じさせない曲でメンバー全員が演奏に興奮している様子が伝わってくる。とくに終盤のギターソロが圧巻で、ギターが火を吹くとはこのようなことを言うのだろう。
「サンキュー、サンキュー、サンキュー」 「次の曲はリンダのために書きました」
普段ならここでThe Long and Winding Roadのはずだがカットされようとしている。この時点で今日は今年のバレンタインデーのライブのように短縮セットリストになることを確信した。その時もThe Long and Winding Roadは演奏されなかった。

Maybe I'm Amazed

もはやポールにとっては行(ぎょう)、観客にとってはポールの声の調子をはかる試金石となっている曲だと思う。この曲を歌い続けることでポールは死別した妻リンダを忘れないことの証としているのか、リンダの供養になると考えているのであろうか。それほどの悲壮感と使命感を感じさせる。そんな曲を歌うことを許している現在の妻ナンシーの懐の深さに敬服するが、My Valentineとセットで演奏することが条件になっているのか?などとうがった見方をしてしまったりもする。ポールが自主的にそう考えていてもおかしくない。
稀代の名曲であることは間違いなく、メンバーはセットリストの中で最も演奏に情熱を注いでいるように感じるが、いかんせんポールが上手く歌いこなせなくなっている。とくに歌い出し。今のポールは男性にとって高いと感じ始めるあたりの音を叫ばずにいきなり出すのが難しくなっているようだ。それより上に行って張りあげる分には安定するし、メロディの流れで下からせりあがって行けば問題無いのだが。The Long and Winding Roadもそうで、それが今日のセットリストから外れた一つの理由かもしれないと思った。
今回の日本ツアーでは4月23日東京ドーム初日での歌い出し最初の2秒は素晴らしかった。今日は鬼気迫る歌でねじ伏せて全般的には良かったと思う。いつもにも増して感動的だった。2回目のギターソロ前のサビの高い裏声のフレーズが好きだ。その後のギターソロ前のタメ(イントロのようにピアノがゆっくりせり上がる)はウイングス時代くらいたっぷり時間をかける方が好きだが。
もしポールにとってこの曲が本当に前述のような行(ぎょう)と化しているのなら、是非自分を解放して楽になって欲しい。リンダがポールの夢枕に立って「もういいんだよ」と言ってくれたらいいのにと思ってしまう。

※第3弾へ続く→こちら




11 件のコメント:

  1. いつも、レポを楽しみにしています。
    ギターのことは、全くわからないので、その辺のレポはいつも凄いな~と感心しています。
    東京ドームでも1階席を経験し、日本武道館も1階席でした。東京ドームの1階席は席を立つ人が多くて、集中できませんでしたが、日本武道館はほとんどいませんでした。
    オーディエンスが皆、ステージに集中している感じがしました。
    1曲目は、今まで演奏されていたとはいえ、ビートルズの初期の曲がいきなりだと、盛り上がりますね。
    「Nineteen Hundred and Eighty-Five」は、「Band On The Run」で一番好きな曲だったので、「OUT THERE TOUR」にこの曲が入り、私的にはすごく嬉しかったです。
    曲の最後に、「Band On The Run」とかすかに歌ってくれると完璧ですが、フェードアウトするので、無理ですね(笑)。
    「One After 909」は、私も予想していましたが、この曲を聞くと、屋上ライブをのシーンを思い出してしまいます。
    ヒット曲集にないような曲を演奏しても盛り上がるのは、コアなファンが集まっているからでしょうね。
    何曲か、通常のセットリストがはずれたのと、日本武道館が昔から10時閉門ということを考えると、演奏時間が短縮されると途中で感じました。
    続きのレポも楽しみにしています。

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    1. コメントありがとうございます。

      武道館1階席も席を立って動き回る人はいませんでしたか。スクリーンが無くてみなポールに集中しやすかったせいもあると思います。

      「Nineteen Hundred and Eighty-Five」の後には自主的に「Band On The Run」と歌っている観客がいたようです。

      ポールはOne After 909あたりは観客の反応を探っている様子も感じられましたがどんなマイナーな曲も観客は好意的だったのでポールも気を良くしていたと思います。

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  2. 初めまして。昨年の来日時から拝見させていただいております。
    チケット購入に際しては大変参考になりました。

    詳細なレポートを読んでいると当日の興奮がよみがえってきました。
    高額なチケット故に武道館は諦めていたのですが、ドーム公演の後に気持ちを抑えきれず、参加席発売にかけて休暇をとってしまいました。
    家族には内緒でいつもどおりに出勤し(笑)、11時には当日券発売の列に加わり無事に参加席チケットを購入することができました。
    予想以上の良い席に事前にチケットを購入されていた方に申し訳ないと思いつつも、ドームとは違った武道館ならではの一体感を楽しむことができました。ただし、参加席にはLEDが用意されておらず、あの時だけは疎外感を感じてしまいましたが(笑
    参加席のチケットは手書きで席番が記入されていました。半券をキョードー東京に送ると席番を印刷したチケットを送ってもらえるのですが、手書きのチケットもそれはそれで良いと思い、どうしようか悩んでいます。

    続きのレポートも楽しみにしています。

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    1. 参加席について貴重な情報ありがとうございます。

      参加席は当日になって限界まで設置した様子が伝わってきます。
      手書きのチケットも生々してくて良いですね。

      アリーナ前方でなければ参加席の方が良かったんじゃないかと今となっては思います。

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  3. こんにちは。
    ポールが恋しいとき、時々お邪魔させていただいています。いつもビートルズやポール情報を いち早く、しかもわかりやすく伝えていただき本当にありがとうございます。
    現在、私は完全にポールロス状態です。なので、このレポートを涙涙で読ませていただいています。武道館の英語のMCはほとんど聞き取れなかったのでとてもありがたいです。
    アップされている写真をみると私が座っていた席ととっても近かったのでは?と思います。会場全体がよく見えて、意外といい席でしたね。ライトアップもきれいに見えたし、日の丸とユニオンジャックも全体を撮ることができました。
    これからもガチのレポートを楽しみにしています。

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    1. 追伸
      Maybe I'm Amazed はずっとリンダへのトリビュートとして演奏されていますが、リンダへの曲は他にもたくさんありますよね。私は My LoveやI Willが好きですが・・・。

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    2. コメントありがとうございます。

      I Willいいですね!
      体力的にも楽そうですし、ほのぼのとしんみりできそうです。

      続きのレポートもガチで行きますのでご期待ください。

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  4. 「空気を読まない(読む気が無い?)ポールのこと」
    「ドーム公演では定番のトイレタイム」
    「高いチケット代の元を取るべく一瞬たりとも見逃さないと考えた人も」
    には、何度も吹き出しました。
    熱いファンでありながらも、微妙な距離感、ホントに好きです。

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    1. コメントありがとうございます。

      いつかポールファンに叱られるのではないかとヒヤヒヤしております。

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  5. ビートルズ解散後の曲に対する自己評価が異常と言ってもいいくらい低いポールにとって、Maybe~は、他のミュージシャン仲間からの評価が高いこともあり、数少ない自信作。なので本人的には外せないのでは、と思います。個人的にはセットでついてくるMy Valentineは、嫌いではないけど他の曲にならないかと思ってしまいます。気が早いですが、次のツアーでは、ナンシーのために別のラブソングを作曲してそれを演奏してほしいです。

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    1. コメントありがとうございます。

      なるほど、Maybe I'm Amazedを事あるごとに取り上げるのはそんな理由もあるんですね。
      My Valentineは恋愛時の切なさを歌っているように思うので、結婚後の幸せを歌った新曲を期待したいです。

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