詳報 2015年ポール・マッカートニー日本武道館公演 (3)

※2017年4月25日日本武道館公演については→こちら
※レポート各回へのリンク→ 1 2 3 4 5

ポール・マッカートニー日本武道館公演詳細レポート第3弾、中盤のしっとりパートにさしかかりました。カタカナで日本語を表記したMCはポールが発言したそのままです。英語のMCは聴き取れる範囲で意訳しました。


I've Just Seen A Face

すっかりおなじみとなった鉄板フレーズ「チョーサイコー」をここで繰り出した。前半の山場を越えここからが中盤戦。この辺から声の調子が上がってくるのが今回の日本ツアーの特徴だ。
観客も上級者が多いようでこの曲はテンポが速いながらも裏拍の手拍子が表にひっくり返らずついていっている。ドームに比べ音の反射が少ないので惑わされにくいせいもあるだろう。
演奏を終えたポールは手と足を大きく振ってコミカルに踊った。これはこの曲によく見られる行動で、四股というわけではないだろう。
「オーケー、乗ってるかい?」「ノッテルカイ?」「同じ意味かな」個々の歓声に応えて「イェッ!」「アーッ」「アーッ」とシャウトし、再びビートルズ武道館公演の観客の拍手の形態模写を2回。今日はドーム公演より進行がのんびりしている。

Another Day

今ツアーは一貫してこの曲の歌の出来が良い。中盤のハイライトと言えるかもしれない。
ライブ演奏のための編曲には時間がかかっただろう。本来キーボード担当のポール・ウィッケンスがアコースティックギターで活躍しており、特定のフレーズでは必ずスクリーンに大写しになる。今日も小型スクリーンに映されたかは未確認。
これまでの公演ではラスティ・アンダーソンがこの曲のトリッキーなエレキギターのフレーズを持て余している様子があったが今日はのびのびと演奏していた。
「アリガトー」
演奏後小ぶりな楽器を抱えてステージ中央に戻ってきた。ここでウクレレか?
「オーケー、今夜はパーティーだからパーティーソングをやるよ」

Dance Tonight ※日本初披露

抱えていたのはウクレレではなくマンドリンだった。
イントロが始まった瞬間大きな歓声とバスドラムに合わせた手拍子に会場が包まれる。多くの人がこの曲を知っているようだった。実際、New以前の直近の曲としては日本で最も有名だろう。当時iTunesのCMが印象的だった。
何故ここでこの曲だったのか想像するに、ジョージ・ハリスントリビュートとしてのSomethingを今日は演奏しないことは決めていたものの、セットリストの流れ上ウクレレか何かの飛び道具で雰囲気を変えたい気持ちは残り、この曲が思い浮かんだのだと思う。
2000年代に作られた曲だけあって今のポールの声によく合う。ポールはビートルズ時代から現代に至るまで声が変わり続けているがその時々の自分の声が最も映える曲作りをしているように思う。Out There ツアーでは最新アルバム「New」収録曲の歌が最も安定していると感じる人も多いだろう。
 この曲の歌詞に内容はほとんど無く、お気に入りの「You can do anything you want to do」フレーズを使いまわしているがなんとも多幸感に溢れている。ポールの生口笛を聴けることに感激した観客も多そうだ。
曲終了後に「オーケー、良かった?(This is good?)」と珍しくリサーチしていた。演奏前にわざわざ必然性を説明していたのも「たまにはこんな曲なんてどう?」と客を試しているようだった。
結果はポールの予想を上回る好反応だったに違いない。「ヤー、ヤー、トーキョウ、ブドーカン、ヤー」と満足そうにうなづきながら話した。「観客は常に有名ビートルズナンバーを求めている」という先入観をポールが持っているとしたらこれを機に認識を改めて欲しいものだ。
アコースティックギターをアドリブで爪弾くポール。今回の日本ツアーではこの行為(演奏前後に楽器を爪弾く)が多いように思う。

We Can Work It Out

ポールの歌は伸びやかだった。この曲の観客にとっての醍醐味といえば、サビでジョン・レノンのパートを歌って、というかジョンになりきって、ポールとハモることだろう。
どの国でもそうだろうから、一度バンドメンバーはハモるのやめて観客に任せても良いと思う。
三拍子になるところの手拍子も観客の腕の見せ所。
「ボクノ ニホンゴ ダイジョウブ?」 これに観客はイェーと応えたので大丈夫なのだろう。

And I Love Her

今ツアーではなんとなく通り過ぎてしまうが、なんとなく印象に残る一曲。間奏で後ろを向いてのポールのダンスは前回の来日時よりしなやかになっている気がする。
「サンキュー、アンド・アイ・ラブ・ハー」
演奏後バンドメンバーがステージを去って一人になるポール。
「ちょっと待って。周りを見てみたい。」
ゆっくりと八角形の会場全体を見渡すポール。ポールの視線の動きに合わせて観客の歓声が上がる位置も動く。この瞬間は会場の多くの人がポールと一対一で心を通わせたと感じたと思う。
ポールは感慨深そうに微笑んで「絶景」とつぶやくと演奏を始めた。

Blackbird

今回のここまでのドーム公演では間違いなのかアレンジなのか判断つきにくい演奏が多かったが今日はどっしりとした演奏。ステージがせり上がるギミックは無いので、リラックスして内省的に演奏していた印象だ。スキャットも多めで気持ちよさそうだった。原曲の鳥のさえずりを真似た口笛が客席のそこかしこから聞こえた。
演奏後マジック・ピアノに移動したポール。この様子だとジョン・レノンへのトリビュートとなるHere Todayは演奏しないのだろう。ジョージのトリビュート曲も演奏しないだろうからあまりしんみりとした雰囲気にしたくないのだろうと思った。今夜はパーティーなのだ。
椅子に座ったポールはBlackbirdの歌詞をそのまま引用して観客を煽った。「この瞬間をずっと待ってたんだろう?」「自由になるときを!」「立ち上がるときを!」「レッツゴー!」  最後の「レッツゴー」は収集つかなくなって取ってつけた感があった・・・。
「オーケー、最新アルバムからの曲"NEW"です。」

New

2013年以降頻繁に耳にして正直食傷気味だがやはり佳曲。安心して聞いていたが終盤でポールがミスをしたことに気づいた。最後の繰り返しに入る前だけ「Then we were new.」を歌うタイミングをずらすべきところを通常通り歌ってしまったのだ。曲の構成上同じ箇所も登場するごとにアレンジを加えるのはポールの常套手段だが、自分がしかけたトラップに自らハマったかっこうだ。
そのまま演奏は終わったが、終わるや否やたたみかけるようにポールが話しだした。
「サンキュー、ちょっといい?最後の一節だけやり直させて。失敗しちゃったんだ。(バンドメンバーに向かって)用意はいいかい?」(用意がいい観客:「イェー!」) 「"Don't look at me"からやるよ。ア、1,2,3,4」
先ほど間違えた箇所を噛みしめるように確実に歌い、2回めの演奏終了。ポールは恥ずかしそうに「オーケー」といい、マジック・ピアノに肘をついてしばしポーズ。その後は観客に対して拍手をしてそそくさと定位置に戻った。「うまくいったね」「オーケー、みんなありがとう」照れくさくて早く次へ進みたがっているように見えた。
今日の様子は後日放送されることをポールも事前に把握していて、何事も無かったかのように1曲に編集されることを期待してのやりなおしだろう。 ここは放送時の注目ポイントとなる。
「オーケー、これは1960年代の曲です。たぶん君たちも覚えていると思う。」
ということは「New」とセットで演奏されていた2013年の曲「Queenie Eye」がカットされた。コンサートでの演奏が定着してきたところだったので少々残念な気がする。今日の観客であれば「OUT!」の掛け声は勢いがあっただ ろう。この時点で最新曲「Hope for the Future」も今日は演奏されなかったことに気づいた。プロモーションや新奇性より今やりたい曲を優先したと言ったところだろうか。「Hope for the Future」は壮大過ぎるのもカットされた原因かもしれない。

Lady Madonna


もはやビートルズというよりポールの曲となっている。ウイングス時代も演奏していたのでビートルズ色の薄い、自分の代名詞のような曲だと感じているのではないか。ビートルズ時代から歌詞やメロディも少し変化している。
得意な曲を無事に演奏し終わって満足しているように見えた。
「サンキュー、アリガトー」

コメントを投稿

7 コメント

  1. Dance Tonightは、エイブのダンスが見られなかったのが、ね…
    韓国ではノリノリで、別の曲で踊ってましたけど。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。

      Dance Tonightの過去の映像見ましたがエイブが立ち上がって踊るんですね。
      あの状態でバスドラムを足で演奏しているんでしょうか。武道館では体や手を揺らしていましたが立ち上がっていなかったと思います。スクリーンが無かったから(踊り甲斐が無いから)ですかね。

      削除
  2. こんばんわ。私は20代でビートルズ世代ではないのですが一昨年ヤフードームで初めてライブに行ってファンになり今回東京ドーム、武道館と行きましたが武道館は最高でした。レポート非常に楽しく読ませていただいており、武道館の楽しかった記憶がよみがえります。
    ドームとは違う中規模会場でのライブに感動を覚えて7月のストックホルムの会場が18000人とあったので武道館ほどではなくとも似たような感覚が味わえるのではと行こうかと思っております。本当は日本でまたこの規模の会場でやってくれるといいのですが・・。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。

      今度来日するときはドームより小さい会場で複数回やって欲しいですね。公演時間を短くしてもいいと思っています。
      ストックホルム公演参加が実現しましたら是非様子を教えてください。

      削除
  3. ここまで詳細をUPしていただくと、武道館の感動が蘇ります!ところで教えて欲しいのですが、2013年東京ドームの公演で、会場に向かいながら「うりうりうりうり うりあって!」と即興っぽく歌っていたあれは、何かの楽曲なのでしょうか?それとも即興なのでしょうか?ずーーっと気になってます。。。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。

      その曲はおそらく即興で、正式に発表されたことは無いと思います。

      削除
    2. コメントありがとうございます。即興の可能性大なのですね!ポールはやはり凄いです。また、ブログ楽しみにしています!

      削除